カフェ・レストラン・バーが軒を連ねるニューヨークでは、どのシーンにおいてもお店探しに困ることはないが、静かなお店となると話は別だ。隣の席から流れてくる絶え間ない会話の声が自分の席に侵入し(一概にアメリカ人の声はこれでもかとデカい)、バックグラウンドにとどまってはいない大音量のBGMに負けずと耳元で叫ぶ。静かなお店を探すのが一番大変だと言っても過言ではないとなれば、静かに落ち着いて会話ができるお店にたどり着けない迷子たちを救おうと気の利いたアプリが登場。店の騒音レベルを測定&静かなレストランを検索できるアプリ「サウンドプリント」だ。以前紹介した、ヘルシーなレストランを検索できるアプリが“ダイエット版食べログ”だとしたら、サウンドプリントは“騒音版食べログ”といったところだろう。
Photo by Nick Hillier
「ネットやイェルプ(米・食べログ)のレビューで 『静かなお店』といわれていても、実際に出掛けてみるとすごくうるさいことが多々あったんです」と話すのは、同アプリ開発者のスコット氏。左耳は完全に聞こえず、右耳もかすかな音しか聞こえない耳の不自由な彼は、長年、うるさいお店での友人とのコミュニケーションに苦労していた。興味本位で騒音レベルを測ってみると、「デシベルメーターには予想よりかなり高い値が出ていたので驚きました」。こうした経緯で発案されたサウンドプリント、2つの使い方がある。
①自分がいるお店の騒音レベルを把握してみる
アプリを無料ダウンロードし*、アプリ内のデシベルメーターでお店(レストラン、バー、カフェ等)の騒音レベルを測定してみる。
70デシベル以下は「Quiet(静か)」
71〜75デシベルは「Moderate(適度な)」
76〜80デシベルは「Loud(賑やか)」
81デシベル以上は「Very Loud(非常にうるさい)」
お店のロケーション情報とともに結果をアプリのデータベースに送信。ユーザーから収集した騒音レベルデータが蓄積される。
*現在はiOSのみ対応、日本版はまだない。
②静かな(あるいは賑やかな)レストランを検索する
アプリのデータベースにあるレストランリストを閲覧し騒音レベルを確認する、あるいは検索フィルター「現在地からの距離」「騒音レベル(静か、適度、賑やか)」で店をしぼることも可能だ。“食べログ”を謳うくらいなので、お店のタイプ(レストラン、バー、カフェ)や料理カテゴリー別(イタリアン、ジャパニーズなど)で検索もできる。静かなところを選びながらも、食べたい気分のものにたどり着けそうだ。
現在、ユーザーからの提出データは2万5000件を超え(そのほとんどは3回以上計測されているので信憑性も高い)、ニューヨークを中心に米国7都市での利用が増えている。
ところで、重宝しているのは店を選ぶ側のお客だけではない。同アプリにて騒音レベルが「Very Loud(非常にうるさい)」と評価されたマンハッタンの某イタリア料理店は、これを機に防音性の高い壁材に変えたところ、「店のムードもよくなり、お客が増加した」らしい。「このアプリをきっかけに、レストラン側にも『店内を静かにするだけでもっと集客が見込める』ということを知ってほしいですね」
米国国立聴覚・伝達障害研究所によれば、18歳以上の成人約15%にあたる3,750万人に何らかの聴力障害があることが報告されている。スコット氏も「長時間にわたり騒音にさらされると、たとえ若くても難聴を発症することがあります」。レストランのうるささの話で難聴だなんて大袈裟な話だなあとこぼさず、静かにサウンドプリントを利用してほしい(日本版はまだ)。
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All images via SoundPrint
Eye catch image via Dogancan Ozturan
Text by Yu Takamichi
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine