住みやすい、というよりは、生きやすい家。
インテリア雑誌を手本にするのではなく、その人のルールで成り立つような家をたくさんみてみたい…
とはじめたシリーズ(001はこちらから)…
すすめていくうちにこれも気になりました。
生まれ育った家、幼少期を過ごした家、両親の家————
実家で、大人になっても、大人になってもう一度そこで暮らす。
その暮らしの選択をする人がパンデミック以降に増えているそうで。
理由はさまざまあるでしょうが、そこには一人で新たにつくっていくのとはまた違ったいい暮らしがあるようです。
家で過ごす時間が増えているいま、いろんな人の、いい家を探っていくシリーーズ、
そこから(早くも)派生してこれもはじめます、世界あちこちの、大人になって実家で暮らすシリーーーズ。.
「親は『こうしなさい』『それは、やめなさい』とかって口うるさいけれど、おばあちゃんはいつも私を甘やかしてくれるんだ」「『いつもいい子だね』、『あんたが一番』って言ってくれる」
おばあちゃんとの暮らしだからこそ得られる幸福感
ロサンゼルス在住のピクシー(Pyxie)、25歳(取材当時の2022年)。現在も実家で両親、姉妹、95歳(取材当時の2023年。2025年の3月、98歳の誕生日を迎えた)のメリーおばあちゃんと生活している。生まれたときからおばあちゃんと同じ家に住んでいたこともあり、小さい頃はおばあちゃんがよくピクシーのお世話をしてくれたそうだ。まさに、共働きの両親を持つ家庭によくあるパターン。そんな、2人の関係性は少しずつ歳を重ねるごとに変化しつつある。いまでは大人になったピクシーが、95歳になったおばあちゃんのお世話をするようになったようだ。
ピクシーとおばあちゃんが世間から注目されるようになったのは2020年夏のこと。ピクシーが何気なく投稿したおばあちゃんの動画がバズったのがきっかけ。おばあちゃんの愛くるしい笑顔、ピクシーとおばあちゃんの愛と思いやり溢れる会話など、彼女たちの日々の些細なことを収めた動画は多くの人の癒しになっている。
ピクシーとおばあちゃんの何気ない会話。メリーおばあちゃん、相変わらずピクシーにメロメロ。
「今日のプランは?」といつものように、ピクシーに尋ねているメリーおばあちゃん。
とっても仲良し。「最近はよく、おばあちゃんとよくファストフードを食べに行く。おばあちゃんはフライドポテトやチーズバーガー、チキンナゲットが大好きなんだよね。ファストフード店でドライブスルーをして、どこか楽しいところに行ったり、アイスクリームを食べに行ったり」。そんなピクシーは、2020年から本格的にシンガーソングライターとして活動を開始させ。ミュージシャンといえば刺激的な毎日を送っているようなイメージがあるが、ピクシーとおばあちゃんの生活は、平和でのーんびり。
「一度、実家を出て、大学の寮に住んだこともあった。でも、私にはいろいろ合わなくって、1週間ぐらいで実家に帰ってきた。やっぱり、生まれ育った実家が恋しくて」。実家と家族が大好きな。そんな、ピクシーとおばあちゃんの日常生活、TikTokの裏側、ピクシーの実家での音楽活動など、諸々聞いていこう。


HEAPS(以下、HEAPS):では、まず自己紹介をお願いします。
P:ピクシー(Pyxie)、25歳。ロサンゼルスに住んでいます。シンガーソングライターとして活動中。
H:InstagramやTikTokでおばあちゃんとの何気ない日常生活を配信中。いつ頃からSNS上でおばあちゃんとの生活を投稿しはじめたの?
P:Instagramのストーリーで、フォロワー向けにいつもおばあちゃんとの日常生活を投稿していたんだよね。2021年の9月頃にTikTokに載せてみたらなぜか超バズってた。
H:突然の。
P:朝起きてバズってたときはもう唖然としたよね(笑)「これからどうなるのかな」とか「2・3本動画を投稿したら世間からやっぱり飽きられるんだろうな」とか思った。
H:おばあちゃんの動画を観たTikTok民からはどんなコメントがあった?
P:「おばあちゃんをもっと見たい!」っていうコメントがすごく多かった! それがきっかけで、おばあちゃんの日常生活を継続的に投稿するようになったんだ。動画を投稿するごとに、どんどんフォロワーが増加。いまは私たちの動画を楽しみにしてくれているファンまでいるよ。
H:どれもおばあちゃんとピクシーの自然体なのがいい
P:もちろん、あれは私たちの自然体!おばあちゃんはずっと携帯電話を持ったことなかったし、インターネットやSNSとは無縁でこれまで生きていたでしょ。で、おばあちゃんは私が携帯で動画を撮っていることすら気づいていないことが多い。そのおかげでいつも自然体のおばあちゃんをカメラにおさめられてる。
@itspyxie I’m gonna go get it grandma! #securethebag #grandma #grandmasoftiktok #foryoupage ♬ original sound – PYXIE
朝起きて一番最初の2人の会話。
H:ちなみに、おばあちゃんは自分がSNS上で有名人なことに関してどう思っているのかもすごい気になる。
P:私がおばあちゃんに、SNSのページを見せて「おばあちゃんは有名人なんだよ」って言っても信じてくれないんだよ(笑)。いまではファンがおばあちゃんにプレゼントを送ってくれたりするんだけれど、それでも彼女には信じがたいみたい。
H:ピクシーはおばあちゃんと二人暮らしなの?
P:あ、それね。いつも勘違いされる(笑)。実際は、実家でおばあちゃん、お父さん、お母さん、姉妹、犬と一緒に生活してる。昔はおじいちゃんとも一緒に暮らしていたけど、おじいちゃんはもういまは天国にいる。大家族みたいな感じ。
私とおばあちゃん以外の家族は仕事に出かける。だから、いつも家にいるのは私とおばあちゃんの2人きり。
H:生まれたときも、おばあちゃんと一緒に暮らしてた?。
P:うん。うちはおばあちゃんが育児に結構貢献してくれているかな。両親は共働き。当時はおばあちゃんもテレワークで働いていたけれど、学校の迎えや、ご飯を食べさせてくれたり。一緒にたくさんの時間を過ごした。
H:ピクシーが生まれてから25年間、ずっとおばあちゃんと暮らしてきたんだよね。2人の関係性に変化はあったり?
P:昔はおばあちゃんが私のお世話をしてくれたけど、いまは私がおばあちゃんのお世話をする番になったこと。彼女が行きたい場所に私が車で連れて行ってあげたり、彼女のためにご飯を作ってあげたり。
H:最近の2人の日常生活はどんな感じか教えて。
P:おばあちゃんはいつも朝の5時半くらいに起きて、コーヒーを淹れて、ニュースを観たりして過ごしてる。私は8時くらいに起きて、おばあちゃんに朝ごはんを作って。私が仕事をしているあいだ、おばあちゃんは犬と遊んだりして。少し時間が経ったら、2人で休憩しながらおやつを食べて、ちょっとドライブに行ったり。帰ったら私はまた仕事を再開。おばあちゃんはそのあいだ、クロスワードをして時間を潰しているよ。おばあちゃんはいつもね、すごく早い時間に寝るんだ。大体午後7時にはベッドの中。
H:さすがおばあちゃん、早寝早起き。なんだか平和な生活だね。たまに動画で、おばあちゃんが家事をしているところなんかも観る。
P:おばあちゃんはいつも家事をやりたがるんだけれど、家族みんなに「大丈夫だよ」「ゆっくりしてて」って言われてる。だから、たまにお皿洗いとか、アイロンがけとか、シンプルな家事をやってもらったりすると嬉しそうなんだ。家族の役に立っていると思えることが、気分をよくするんだろうね。
H:うん。ピクシーが思う、親との生活とおばあちゃんとの生活はどのように違う?
P:なんていうか、おばあちゃんはいつも愛情で溢れているって感じ。なにがあっても見方でいてくれる。両親はやっぱりどうしても「こうしなさい」「それはやっちゃダメ」とか、口うるさくなってしまう部分があるでしょ。もちろんおばあちゃんも両親も同じように私を愛してくれているんだけれど、おばあちゃんはやっぱり私を甘やかしてくれる。
P:おばあちゃんはいつも「いい子だね」「あなたが一番だよ」「あなたと出会えて本当によかった」とかって、私に言ってくれる。
H:あーーー。親子の距離感だと、ちょっと気恥ずかしいやつだ。それがおばあちゃんだと、自然に言えるし受け取れるんだ
P:そういうこと言ってもらえると、彼女が私を特別扱いしてくれている気がして嬉しくなるの。
H:毎日一緒に生活していて、ケンカしたり、お互いに腹が立ったりすることは?
P:おばあちゃんが怒ったところを見たことがない気がする。ず〜っと一緒に生活してるけれど、おばあちゃんに苛立つことなんて本当にないんだよ。あ、でもおばあちゃんの耳の遠さには苛立つというか、苦労するけどね。電話でおばあちゃんと話すことはほぼ不可能(笑)
H:腹が立つことがないってすごいね。
P:あ、ちょっと待って。そういえば昔に一度だけケンカしたことがあるかも。昔、おばあちゃんがおばあちゃんの姉を家に連れてきたことがあって。おばあちゃんの姉はうちの犬が大好き。すごく可愛がってくれてさ。でも、たまに人間の食べ物を犬に与えようとするんだよね。
犬の健康上、良くないじゃない。だから部屋に犬をこっそり連れて行ったら、おばあちゃんが追いかけてきて「犬を渡して?」って聞いてきた。「人間の食べ物を与えるなら、渡せない」って言ったら「いますぐ渡して!」っておばあちゃんが私に強めに言ってきたんだ。いや〜、あのときのおばあちゃんは珍しく怒ってたな。
H:おばあちゃんのお姉ちゃんのためにお怒り。唯一のエピソードもかわいらしい。現在、シンガーソングライターとして活動しているピクシーですが、実家暮らしで音楽活動に取り組むってどんな感じ?
P:私的には実家での音楽活動に全然満足してるよ。お父さんも昔はバンドやってたし、お兄ちゃんはピアノが演奏できるし、お姉ちゃんはダンサー。みんな私の音楽活動もサポートしてくれてる。
おばあちゃんもいつも応援してくれているよ。私の曲にFワードが入っていたりするんだけど、そうするとファンから「おばあちゃんにはあなたの曲を聞かせないでね!」とかコメントをもらったり。でも、おばあちゃんに「私が楽曲にFワードを取り入れていることについてどう思う?」って聞いたら、彼女は「そのほうがいい感じになるんだったら、まあいいんじゃないかな」って言ってくれた(笑)
H:おばあちゃんとの生活って、刺激的な毎日というよりかは、平和でほのぼのした毎日って感じだよね。そんな日々も音楽のインスピレーションになったり?
P:日々の生活からインスピレーションが湧いたりするよ。楽曲『Thesis』は、おばあちゃんからインスピレーションを受けて、できあがった楽曲。歌詞でこういうフレーズがあるの。「93歳のおばあちゃんはいつもクロスワードをしている。でも、私は価値がないような言葉を探している(My grandma 93, she’s doing own word searches. I’m here searching for words that don’t sound worthless)」。
H:いいね。
P:まだリリースされていない楽曲があって、そのミュージックビデオに、実はおばあちゃんを登場させようかななんて考えているんだ。
H:リリースされるのが楽しみ

Interview with Pyxie
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Images via Pyxie
Text by Ayano Mori
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine