敵ファミリーにも敬意を。警察も近隣住民も総動員「ギャングの葬式文化」について

【連載】米国Gの黒雑学。縦横無尽の斬り口で、亜米利加ギャングの仮面をぺりぺり剥がし痛いところをつんつん突いていく、十二話目。


「友は近くに置け、敵はもっと近くに置け」
(映画『ゴッドファーザー』から)

「友情がすべて」のマフィオーソの道。しかし、
昨晩、盃を交わした友が敵になる。信頼の友の手で葬られる。
“友と敵の境界線は曖昧”でまかり通るワイズガイのしたたかな世界では、
敵を友より近くに置き、敵の弱みを握り、自分の利益にするのが賢い。

ジェットブラックのようにドス黒く、朱肉のように真っ赤なギャングスターの世界。
呂律のまわらないゴッドファーザーのドン・コルレオーネ、
マシンガンぶっ放つパチーノのトニー・モンタナ、
ギャング・オブ・ニューヨークのディカプリオ。
映画に登場する不埒な罪人たちに血を騒がせるのもいいが、
暗黒街を闊歩し殺し殺されたギャングたちの飯、身なり、女、表向きの仕事…
本物のギャングの雑学、知りたくないか?

重要参考人は、アメリカン・ギャングスター・ミュージアムの館長。
縦横無尽の斬り口で亜米利加ギャングの仮面をぺりぺり剥がす連載、十二話目。

***

前回は「ギャングとヘア」について、ギャングスタンダードな“ビジネスマン風オールバック”や、禁酒法時代にギャングの経営するバーに出入りしていた“ボブカットの女たち”のことを紹介した。今回のお題は「ギャングの葬式」。1万人以上の一般弔問客が押し寄せたフランキー・イェールの豪華絢爛葬儀や、ギャングの葬儀にもれなく出席したあるユダヤ系ギャングの話などをしていこう。

▶︎1話目から読む

#012「250台の車に100人の警察官、1万人の弔問客、100万円の棺。町をあげて弔うギャングスターの葬式事情」

町中が喪に服した大物ギャングの葬儀(二人の“正妻”が現れ揉める)

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 数年前、台湾マフィアのボスの葬式が盛大に行われ、およそ2万人の黒スーツの男たちがぞろぞろと参列している圧巻の写真がネットに出回った。台湾という国の葬式は独特で、なんとストリッパーが登場し弔問客の目の前でクネクネ踊り出すこともあるらしい。派手に故人を弔うことで魂を鎮めるのが目的だという。裸のお姐さん見たさに弔問客も増え、みんなでたのしく死者をお見送りできるなら、これもありかと思う。また、アイルランドの葬式では、みんな酒でべろんべろんに酔っ払うのが慣習となっているらしい(ギャングスターミュージアム館長談)。ローマで執り行われたマフィアボスの葬式は、棺を担ぎこんだ馬車に車が連なり(無断で道路遮断)、空からはヘリコプターでバラの花びらが撒かれ、ゴッドファーザーのテーマ曲が流れるというカーニバル状態だったという。

 ギャングの豪華絢爛・荘厳美麗な葬式の原点を辿ると、アル・カポネを見出したことでも知られるニューヨークの大物ギャング、フランキー・イェールがいる。短気でガンファイトを繰り広げることでも悪名高かったイェールだが、1928年車を走行中に狙撃され、わずか35年の生涯を閉じた。生前は表向きのビジネスとして皮肉にも葬儀屋を営んでいたという彼の葬式は、ニューヨークマフィアいちの大掛かりな葬式となった。花を積んだ車だけで2、30台、送葬者の車が250台、教会から墓地までの8キロの道のりに配備された100人の警察官、銅と銀でできた12,000ドル(約132万円)の棺。近所の顔役として親しまれていたイェールの最期を見届けようと、近隣住民を含む約1万5,000人の弔問客が教会を囲み、近隣の店はその日は休業し半旗を掲揚したという。さらに、イェールの正妻を主張する二人の女性が、彼の棺を取り合ったというソープオペラのようなオチつきだ。

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実際のアル・カポネの棺。
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20世紀初頭を代表するニューヨークのギャング、モンク・イーストマンの葬儀。

「ギャングのお葬式に一般の弔問客も多くつめかけた理由の一つに、『ギャングがセレブリティ化した』ことがあります。ジョン・デリンジャー(FBIから“社会の敵ナンバーワン”と呼ばれたギャング)の葬式には『ギャングを見に行こうぜ』と気軽に参列した一般人がつめかけました。また、多くのギャングがコミュニティに大きく貢献していたのも理由にあるでしょう。たとえば、失業者に炊き出しをしたアル・カポネ。ユダヤ人ギャングのマイヤー・ランスキーに関しては『親戚の手術費用をまかなってもらった』との話を聞いたこともあります。コミュニティの一員でもあったギャングたちは、住民からも親しまれていたのでしょう。ただ、次第にギャングに対する公の態度は厳しくなっていきましたが」

あらゆるギャングの葬式に通った謎の男

 ギャングの葬式には、必ず“彼”の姿があったという。ギャングに殺された者たちの霊ではない。遺産を分取ろうとする「誰だっけ?」の親戚でもない。アブナー・ツヴィルマンという男である。彼は葬式マニアでもなければ葬儀人でもなく、故人を弔うためギャングの葬式には毎度顔を出していたユダヤ系ギャングだ。ツヴィルマンは“ニュージャージーのアル・カポネ”とも呼ばれており、コーエン(司祭)の家系であった。自身の家系のしきたりから墓場に入ることはできなかったため、墓場の正門から葬儀を眺めていたらしい。この不可解な行動に、弔問客からは「故人を殺したのは彼で、罪悪感から葬儀には来たものの墓場に足を踏み入れられないのだろう」と憶測されては怪しまれていたのだとか。

ギャングは他のファミリーの葬式にも出席し、敬意を示します。さらにこの敬意は違うファミリー間だけのものでなく、違う人種間でも払われます。アル・カポネの弟(イタリア系)の葬儀には、敵ギャングのダイオン・オバニオン(アイルランド系)が大量の花を贈りました

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 ニューヨーク五大マフィア・ガンビーノ一家のボスに君臨したポール・カステラーノの暗殺現場となったマンハッタンのスパークス・ステーキ・ハウスやスタテン島にある映画『ゴッド・ファーザー』のお屋敷ロケ地など、ニューヨークにはギャング好きなら是非訪れてみたいギャングゆかりの地があるが、個人的にはクイーンズにあるセント・ジョンズ・セメタリーをお薦めしたい。ラッキー・ルチアーノやジョゼフ・プロファチ、ヴィト・ジェノヴェーゼ 、カルロ・ガンビーノ、ジョン・ゴッティなど、なぜか世紀のイタリア系ギャングたちばかりが永眠しているマフィア墓地なのだ…。

 次回は、マフィアの相談役「コンシリエーリ」という役職について。仕事内容やラッキー・ルチアーノのコンシリエーリを務めたギャングなどを紹介、謎のポジションを探ってみる。

▶︎▶︎#013「武闘派ファミリーを支える、頭脳派の直近アドバイザー〈コンシリエーリ〉の品位」

Interview with Lorcan Otway

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重要参考人
ローカン・オトウェイ/Lorcan Otway

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1955年ニューヨーク生まれ。アイルランド系クエーカー教徒の家庭で育つ。劇作家で俳優だった父が購入した劇場とパブの経営を引き継ぎ、2010年に現アメリカン・ギャングスター・ミュージアム(Museum of the American Gangster)を開館。写真家でもあるほか、船の模型を自作したり、歴史を語り出すと止まらない(特に禁酒法時代の話)博学者でもある。いつもシャツにベストのダンディルックな男。

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Text by Risa Akita
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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