大股で歩く癖がある。だからか、ほとんどの靴底は外側がすり減っている。新調すれば平行になるよう心がけるも数ヶ月すれば性懲りもなく斜めになった底ができあがってしまう。まあこれも個性と思いこむことにして今日も斜めに削っていたが、こうやって自分色に染めあげた(てしまった)靴をもっと長く、大切に履く手助けをしてくれる“遠隔”サービスがある。しかも、スマホで簡単に預けるだけで靴修理職人がわざわざお手入れをしてくれるというのだ。
スマホで靴の預かり・出し入れ、メンテナンスをしてくれる“クラウドシューズボックス”「Shpree(シュプリ)」。靴修理歴・半世紀の職人をきっかけに誕生した、靴の保管&修理専門のコンシェルジュサービスだ。起源は小さな町(鳥取県倉吉市)の代々続く靴屋で、3代目・岸田将志さんがお客さんの「ブーツを履こうと思ったら、カビが生えていて捨ててしまった。せっかくのお気に入りの1足だったのに」「オシャレが好きだったおじいちゃんの大切な形見の靴。この靴を修理して履けるようになりませんか」という靴への感情をすくい上げた。
〈靴箱を手のひらに〉がコンセプトのシュプリ、仕組みを説明しよう。
1、スマホから申し込み。預かって(修理して)ほしい靴をダンボール箱などに入れ、指定した日時と場所に集荷に来たクロネコヤマトに渡す。
2、湿度・温度を調整した保管庫にて、無制限でコンシェルジュが靴を保管(1足2,980円)。預かり時に靴職人によるベーシッククリーニング(シューシャイン+撥水・ 防カビ・防汚加工など、1足6,980円)のオプションもつけることができる。また修理のみのサービスも提供している(1足4,980円)。
3、パソコンやスマホの「マイページ」で、預けた靴の状況をチェック。「この靴、近々必要になるかも」という場合には返却を注文。最短3日ほどで自宅に戻ってくる(預け入れ時送料・受け取り時送料は無料。再度預ける際には別途料金がかかる)。引き取り忘れ防止のため、預かりから1年ごとにメールで靴の最新状況を教えてくれると細やかな気遣いもうれしい。
クラウドシューズボックス「靴修理職人の技術継承」も目的
靴箱に靴が収まりきれない整理下手にも、思い入れのある一足を長く履きたいモノ持ち派にも響くシュプリだが、この誕生の裏にいたのが“靴修理の匠”と呼ばれる職人・小澤力さん。半世紀近く靴修理に徹する職人だ。「お客様の修理への要望に“No”と言わない」を信条に、他の修理屋で断られた靴でも出来る限りを尽くすという人情派でもある。
小澤力さん。
高齢化により引退する職人が増加し、靴修理職人は後継者不足問題を抱えている。小澤師匠も数年前までは「靴を大切にする人が減ってしまった」と引退を考えていたという。一方で、町の小さな靴屋として岸田さんは、「『履いた時間、歩いた距離、行った場所』その靴と過ごしたことに思い入れのある方がこんなにいらっしゃるのかと、靴屋でありながら見落としそうなことを教えられ、その想いを、願いを叶えたいと鳥取県内で靴の修理をお願いできる職人さんを探しまわっていました」。そしてようやく出会うことができたのが小澤師匠。彼の工房に赴き、彼が磨きあげてきた半世紀の修理技術を習得した。小沢師匠の靴修理技術を継承したい、1足の靴を長く履いてもらいたい、という想いでシュプリができたということだ。
靴修理に半生を費やしてきた職人の本物の技術で、腐れ縁の1足をクラウド管理。筆者の靴箱にちょうどある(そして正直、保管場所に困っていた)、それなりの思い出のある履き潰したブーツの行き先が決まったようだ。
詳しくは、コチラから。
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Text by Risa Akita
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine