「シャキっとしなさい!」一筋縄ではいかない2000sキャラたちのパンチなひとことを吟味しよう。AZボキャブラリーズ

シティの真ん中からこんにちは。ニュース、エンタメ、SNS、行き交う人から漏れるイキな英ボキャを知らせるHEAPS(ヒープス)のAZボキャブラリーズ。
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2月のテーマは引き続き「懐かしの映画・ドラマで放たれた、登場人物の決め台詞」。今回は、意地悪な女の子たちがザクザク登場するあの映画や、独特の世界観でカルト的人気のあるウェス・アンダーソン監督のあの作品から。今回も、じっくりと解剖。

1、「New meat coming through!新入生のお通りだ!)」

ーピンク、ハイスクール、意地悪なクラスメート。学園コメディの金字塔『ミーン・ガールズ』

アメリカのハイスクールはものすごく恐ろしい場所だ、と何千マイルも離れた島国ではじめて思ったのは、『ブレックファストクラブ』でもなく『キャリー』でもなく『ミーン・ガールズ(Mean Girls、2004年)』を観たときだった。ティーン・アイドルのリンジー・ローハンが主演をつとめた学園コメディ映画だ。

親の仕事の関係でアフリカで育った垢抜けない主人公ケイディは、ある高校に転校してくる。そこでは、ハイスクールカーストの頂点に立つ人気女子グループ「プラスチックス」が学校を牛耳っており、ケイディはリーダー格のレジーナに気に入られ…。保護者指導教員であったロザリンド・ワイズマンのノンフィクション『女の子って、どうして傷つけあうの?』が原作だ。

ケイディがレジーナたちに気に入られる前に、はじめてできた友だちのレズビアンのジャニスとゲイの同級生ダミアンの一言。生徒でごった返す廊下を、ダミアンがケイディをかばうようにして、こう叫ぶのだ。

「Watch out please! New meat coming through!(そこのけそこのけ、新入生のお通りだ!)」

ここでいう、「meat(肉)」は、「新入生」のこと。人のことを“肉”と表現するのは、すごくストレートだ…。

2、「pseudo-bohemian losers偽ボヘミアンの負け犬たち)」

—ダメでいいじゃん? サブカルオタク女子2人組の甘酸っぱい『ゴーストワールド』

「ダメに生きる」が、劇場公開時のキャッチコピーだった映画『ゴーストワールド(Ghost World、2001年)』。サブカルを愛する、周りの女の子たちからはちょっと“浮いた”存在のイーニドとレベッカが主人公だ。高校を卒業したあとは、特に進む道もなく、レベッカはコーヒーショップで働きはじめ、ニーイドはぶらぶら生活を…。暇を持て余す二人は、ある日、新聞広告にあった出会い募集で、ブルースミュージックのレコードコレクターのシーモアを呼び出した。おもしろ半分だった二人だが、やがてニーイドとシーモアの距離は近くなり…。

メインストリームカルチャーが大嫌いで、ひねくれ者でハズレ者のイーニドとレベッカ。イーニドはくだらなくてダサいことが大嫌い。とどめの一言がこれ。

「I just hate all these extroverted, obnoxious, pseudo-bohemian losers.(わたし、社交的で感じの悪い、偽ボヘミアンの負け犬たちが大嫌いなわけ)」。ここでいうボヘミアンとは、楽観主義でインテリを装ったヒッピーのような人たちのこと。笑顔を顔に貼りつけ、インテリジェンスに振る舞う見かけだけの輩たちには反吐がでるという、いかにもイーニドらしい発言だ。

3、「Gird your loins!シャキっとしなさい!)」

—鬼編集長に背筋も凍る? ニューヨークの華やかでキビしい業界を描く『プラダを着た悪魔』

クイーン・オブ・ファッションマガジン『ヴォーグ』の女性編集長アシスタントをしていた女性が、実体験をもとに書いた小説がベストセラーに。それをベースにした映画が『プラダを着た悪魔(The Devil Wears Prada、2006年)』だ。世界中の女性の共感を得て大ヒットとなった。

ジャーナリストになる夢を抱いて田舎からNYにやってきた主人公アンディは、人気ファッション誌の“鬼”編集長ミランダのもとでアシスタントをすることに。トゲのあるファッション業界で奮闘しながら成長していく様子が描かれている。

劇中でのあるシーン。朝の9時前には出社しないはずのミランダが、早く到着するとオフィスに連絡が。「やばい、鬼編集長がもうすぐやって来る…」。ミランダの右腕でファッション・ディレクターのナイジェルは、オフィスのみんなにこう叫ぶ。

Gird your loins!(シャキっとしなさい!)

「loin」は腰のこと。腰を引き締めるで、「身を引き締めなさい」「シャキっとしなさい!」という意味だ。

4、「Come on, let’s shag assほら、行くぞ)」

—いつも同じ服、ヘンテコ家族のファミリーストーリー『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』

独特のカメラワークやストーリーなどで独自の世界観を演出する映画監督、ウェス・アンダーソン。好き嫌いがスッパリわかれる監督だといわれている彼の人気作品『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ(The Royal Tenenbaums、2001年)』から。

ホテル暮らしの元有名弁護士ロイヤル・テネンバウムが、妻そして3人の子どもたちが住むニューヨークの自宅に戻り、22年ぶりに一緒に生活するという話。登場人物も12歳でデビューした天才脚本家の長女に、10代で金融業界で大成功した長男、天才的テニスプレーヤーの次男、お母さんの新しい恋人、長男の息子2人(お父さんと同じ天パーヘアに赤いジャージ)などアクの強いキャラばかりだ。

紹介するボキャブは、Come on, let’s shag ass.(ほら、行くぞ)」。ずっと会えなかった孫と存分に遊ぶロイヤルのかわいらしい(?)発言だ。

ちなみにテネンバウム兄弟はいつも同じ服。長男はアディダスの赤いジャージ、長女はラコステのワンピース、次男はフィラのテニスウェア。ウェス・アンダーソン・ワールドは、衣装にも垣間見えている。

5、「You’re inhuman.あなたは冷酷ね)」

—社会に適合できないサイコパス男の衝撃作『アメリカン・サイコ』

最後は、狂気の映画『アメリカン・サイコ(American Psycho、2000年)』。ウォール街にある証券会社のエリートで優雅な生活を送る一方で、快楽殺人を繰り返す殺人鬼パトリックが主人公だ。社会に適合できない彼は、仕事のライバルや娼婦、ホームレス、ガールフレンドなどを次々に殺していく。

サイコパスのパトリックだが、彼には婚約者イヴリンがいた。二人が別れ話をするシーン。冷たく「もう会うのをやめよう」というパトリックにイブリンはYou’re inhuman.(あなたは冷酷ね)」と、一言。冷たくさらっと関係にピリオドを打とうとする男は「inhuman(冷酷、残酷)」だが、殺人鬼のサイコパス・パトリックは別の意味でも「inhuman(非人間的)」だということだ。

次回は、2010年代編。
ライアン・ゴズリング主演のクライムサスペンス『ドライヴ』から物騒なボキャブ、
「I’ll kick your teeth down your throat
俺がお前の歯をへし折ってやる) 」などなど。

おたのしみに!

▶︎「愛だけが、時間も空間も超えられる」2010s映画、歯の浮くセリフに罵り言葉を改めて細かく見てみましょう。AZボキャブラリーズ

▼これまでのHEAPS A-Zボキャブ
「うげぇ、超サイテー」!—90年代癖あり名映画の名台詞を解剖。“90s米ギャル捨て台詞”まで。AZボキャブラリーズ
このクソメガネ野郎が!—『E.T.』『スタンド・バイ・ミー』青春の置き土産、80s名台詞を解剖。AZボキャブラリーズ
俺の仲間たちよ—『時計仕掛けのオレンジ』『タクシードライバー』主人公らの名台詞(英語)を解剖。AZボキャブラリーズ

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Illustration by Kana Motojima
Text by Risa Akita, Editorial Assistant: Kana Motojima
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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