「信頼とか理解とか、比較とか嫉妬とか」人間関係で最も複雑な“歳の近い姉妹”。同じ世代、近すぎる二人

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「歳の近い二人姉妹の関係って、人間関係のなかで一番複雑だと思うんです」。友だちより気心が知れているからなんでも話しちゃう! 買い物も旅行も常に一緒! ツラいときは真っ先に悩みを聞いてあげたい! 同じ血の通う仲良し姉妹の絆は、とにかく強い。でも…
レンズを通して見つめた80組の姉妹。一番の理解者であり、一番の比較対象。親み、羨望、嫉妬。感情と想いがからまる、その複雑な関係。

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ジョージア(16)の部屋からよく勝手に洋服を持ち出すフレイヤ(11)
ジョージア「ずっと妹が欲しかったから、ママにお願いしたの。もう1人欲しいって」

姉妹の“本音”を切り取ったフォトブック

「SISTERS(シスターズ)」。ロンドンのフォトグラファー、ソフィー・ハリス・テイラー(Sophie Harris-Taylor)が昨年出版したフォトブックのタイトルだ。その名の通り、紙面を飾るのは人種も年齢も育ってきた環境もバラバラな姉妹たち。彼女が2年間で80組にシャッターを切ったのは「私自身、年子の姉との関係に悩んでいたから」。
 幼少期は喧嘩もしたけど、いつも一緒に遊んでいた。なのに思春期ごろから意見の違いが増え、会話が減り、距離ができた。「似たような経験を持つ姉妹はたくさんいるはず」と、多種多様な姉妹を撮影し、それぞれのストーリーを発信することにした。

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『SISTERS』—Sophie Harris-Taylor

 友だちへの声掛けとSNSで募集したモデルたち。「インスタ用のつくり笑顔じゃなく、クリスマスカード用のぎこちない家族写真でもない。彼女たちの本音が伝わるビジュアルに仕上げたかった」と話す作品は、各自宅での撮影とあってか、どれも自然体の表情をみせる。「姉妹によっては撮影中にハグしたり、思い出に感極まって涙したり、かと思えば離れて座って淡々と質問に答えたり」。レンズ越しに見る姉妹の距離感は、想像通り十人十色だった。

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10代の頃、4年間2人暮らしをしていたフロー(21)とリジー(26)。
フロー「リジーと一緒だと居心地が良くて、他の誰といるよりしあわせ」

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両親の離婚で、しばらく離れて暮らしていたローチェル(25)とサブリナ(27)。
「毎週月曜は必ず会ってキャッチアップ。一週間分の話をして、いろんなことについての意見を交わす。一週間分の姉妹関係を満喫するの」

姉妹というミステリアスは複雑にからまる

 ソフィーが歳の近い2人姉妹を複雑と言い切るのには理由がある。「女性は男性よりもオープンで感情的。人間関係においても、自らプレッシャーをかけがちです」。
 同じ家で、同じ性に生まれ、同じ時間を共有する。常に近い存在ゆえ、親からのちょっとした扱いの差にも「なんで私ばっかり!」と敏感になる。目のかたち、足の長さに輪郭など見た目における相違が気になり、持ち物に(名前なんかにも)嫉妬して、成績や収入の差に(結婚相手なんかにも)劣等感を抱えてしまうのは、自然なことだと。

「年上なんだから!」と理不尽な理由で言いくるめられ、妹を泣かせたことを腑に落ちないまま叱られる姉。お下がりの洋服にうんざりし、こっそり姉の新品を拝借するもバレて親にチクられる妹。なんてのはよく聞く姉妹あるあるだが、これ以外にもソフィーが撮った姉妹のあるあるが興味深い。

撮影では、仲良し姉妹に限って性格、趣味、スタイルが真逆なんてことはよくあったわ。一方はシャイで内向的、もう一方は自信家で外向的とかね。でも、どんな姉妹にも共通していたのは、彼女らが持つユーモアや価値観は結構似てて、相手の方が自分のことをより理解しているってこと」。
 タイプが真逆でも、そこは同じ屋根の下で育った二人。考え方の根本が似ていて、お互いの日々のルーティーンを把握しているから、思考回路もお見通し。相手のことをよく観察しているからこそ、相手が知らない彼女自身のことを知っている。

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ケンカも多いけど大の仲良し、ミミ(4)とココ(9)。
ココ「ミミはいつだって私と同じがいいの」
ミミ「ときどき、ココのことをミミって呼んじゃうの」

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同じ星座で同じPR関係の仕事をしているビッキー(45)とサム(46)。
ビッキー「引っ越しの話があるんだけど、サムと離れて住むのって変な感じで…」
サム「将来は、同じ老人ホームに入る予定よ」

 そして、だからこそ複雑なわけで。お見通しなぶん、お互いの行動にさらに敏感になる。「ささいなことだけど、ピアスを開けたり、門限に遅れたり。自分より先に何でも許されてしまう姉にライバル心を抱いてしまう妹は多い」。逆に、大体いつも先にルールを破る姉は、自分のときほど厳しく叱らない親と(自分の件で免疫がついてるからなんだけど)、世渡り上手にみえる妹にいい気はしない。そんな彼女たちにとって、両親との関係は重要だ。というのも、意識的か無意識か、両親は二人を永遠に比較しがち。対応の仕方によっては、性格形成にも影響を及ぼしかねない。「姉妹は扱われの差と同時に、平等に接しようしてる親の姿もちゃんと覚えてるものなのよ

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同じマレーシアで育つも、中国式の教育を受けたメン(61)と英国式の教育を受けたアン(62)。
メン「アンのことがいつもうらやましかったわ」
アン「メンをうらやましく思ったことなんて一度もなかったわ」

3

障害を持ち7歳から施設で育ったクレア(55)とジュリエット(60)。
クレア「ジュリエットはいつだって支えてくれるしとてもやさしい」
ジュリエット「醜いババァって言うかと思った」
クレア「うるさい」

「良くも悪くも、二人の関係は変化し続ける」

「すべての人間関係が歳を重ねるに連れ変化するのと同じで、姉妹の関係だって変化し続けるわ」。ソフィーは最近、姉と連絡を取ることが増えたという。
 昔は全然話さなかったけどいまでは仲良しだったり、その逆も然り。姉妹の関係は、何てことないキッカケで、良くも悪くもなる。「とくに、どちらかが子を持ち母になったとき、姉妹の距離は縮まりやすい。じゃあケンカが減るかといわれると、それは別の話」。

 ソフィは続ける。「本を手に取った人が共感してくれたらうれしい。仲良し姉妹の間にも欠点があること、仲良くない姉妹の間にも信頼があることを知ってもらえたら、それは本望よ」。歳が近いから競争するけど、共有し合える。同性だから嫉妬するけど、理解し合える。兄弟より親密で、友だちよりありのままで気が許せ、恋人とはまた違う一体感を持った愛がある。そんな歳の近い2人姉妹。彼女たちは絆が強いからこそ複雑で、複雑だからこそスルリと解けて居なくなることもまた難しいのだ。

Interviw with Sophie Harris-Taylor

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Photos by Sophie Harris-Taylor
Text by Yu Takamichi
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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