1月のテーマは「懐かしの映画・ドラマで放たれた、登場人物の決め台詞」、80年代。あのエイリアンに、青年時代といえばのあの映画から、名台詞が飛び出す…!今回も、じっくりと解剖(オマケつき)。
1、「Now.Swear it.(いいかい、誓ってほしいんだ) 」
—誰もがあの指に触れたかった? 心がぽかぽかする異星人と少年の物語『E.T.』
世界中で愛されている“異星人”といったら、ネッシーにツチノコに、そしてE.T. だろう。大きな青い目にシワシワの体の、得体のしれない異星人だ。見れば見るほど味の出てくる、愛嬌のある顔をしている。
映画『E.T.(イー・ティー、82年)』は、地球に取り残されてしまったE.T.と、彼と友情を結んだ地球人のエリオット少年の話。地球にひとりぼっちの異星人を助けてあげようと、エリオットはE.T.をかくまう。そしてエリオット少年はお兄ちゃんにE.T.を紹介するため、目を閉じさせこう言うのだ。
「Now. Swear it. The most excellent promise you can make. Swear as my only brother on our lives.(いいかい、誓ってほしいんだ。絶対にこの約束は守って。たった一人の兄弟として誓ってよ)」。
目を開けたお兄ちゃん、絶句。たまたま来た妹、絶叫。こうしてエリオット兄弟たちとE.T.の交流ははじまった。
「Swear it(スウェア・イット)」は「誓うよ」の意味。「Really(本当)?」「I swear it. (間違いない、誓うよ)」。こんな感じで使うのが常だ。
2、「My mother has got the hots for me?(母さんが僕に恋心をもっているって)? 」
—社会現象も巻き起こした、ドクとマーティの時空紀行『バック・トゥ・ザ・フューチャー』
主人公マーティが、親友で科学者のドクが考案したタイムマシン「デロリアン」に乗って、1955年にまでタイムトラベルするというストーリー。過去に戻ったマーティは、若きころの自分の母親に出会い、あろうことか彼女に恋心を持たれてしまう。
「Whoa. Wait a minute, Doc. Are you trying to tell me that my mother has got the hots for me?(ちょっと待ってよ、ドク。母さんが僕に恋心をもっているって?)」。
「get the hots for(ゲット・ザ・ホッツ・フォー)」で「〜に恋心をもっている、〜に熱をあげている」。過去の母親に好かれたマーティー、どうにかして母親に自分の父親を好きになってもらわないと、自分が生まれてこない! と躍起になるのだが…。ちなみに『バック・トゥ・ザ・フューチャー』は、年代ごとの米国のユースカルチャーが垣間見える映画。50年代の車に、80年代のジーパンにダウンベストなど、これまたいいんだな。
3、「You four-eyed pile of shit!(このクソメガネ野郎が!) 」
—少年はいつから“大人”になるのだろう。4人の少年の青春映画『スタンド・バイ・ミー』
ホラー作家スティーヴン・キングの原作を映画化したもので、オレゴン州の田舎町キャッスルロックに住む4人の少年たちが主人公。噂に聞いた“死体”を探そうと、線路づたいに旅に出るのだが、そりゃ思春期の少年4人が集まれば、喧嘩はするわ、友情は深まるわ、軽口を叩き合うわ。リーダー格のクリスがメガネっ子テディにこう暴言を吐く。
「You four-eyed pile of shit!(このクソメガネ野郎が!)」。
「four-eyed(フォー・アイド)」で「メガネをしている」の意味。2つの目にメガネの2つのレンズが加わり、目が4つということから流行った言葉だ。木の上に組み立てた秘密小屋、タバコ、夏の探検、不良グループに入っている兄。『スタンド・バイ・ミー』は、8月の終わりに感じるような妙な焦燥感と切なさにおぼれさせてくれる。
4、「Lesson number two: Don’t get high on your own supply.(教訓その二:自分の売り物でハイになるな)」
—ラッパーも大好き、“F**K”が182回登場したギャング映画『スカーフェイス』
トニー・モンタナが恋に落ちるのがギャングボスの情婦エルヴィラ・ハンコックだ。ドレスをまとった艶かしいフェムファタールのような彼女だが、名ゼリフは
「Lesson number two: Don’t get high on your own supply.(教訓その二:自分の売り物でハイになるな)」。
「Your own supply(ユア・オウン・サプライ)」、ここでは「自分の売っているドラッグ」。ボスの女の言うことは、やはり違うぞ。
5、「Mouth-Breather(アホ、まぬけ)」
—中毒者続出。80年代の架空の町が舞台のSFホラードラマ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』
舞台は80年代の静かな田舎町。ある少年の失踪、超能力をもつ謎の少女など、不可解な出来事を中心に展開するSFホラーだ。その謎の少女イレブンにメインキャラクターの少年マイクが「 『マウスブリーザー』に足を引っ掛けられて怪我をした」と説明するシーンがある。イレブンとマイクのこのやり取りが続く。
「Mouth-Breather?(マウスブリーザーって?)」「Yeah, dumb person, knucklehead(うん、アホなやつ、まぬけ)」。
「Mouth-Breather(マウスブリーザー)」は「アホ、まぬけなやつ」。語源は、口で息をする=ぽかんと口を開けている人、だといわれている(けっこうヒドい言い方)。
同ドラマ、現在シーズン3のリリース日は未定で、世界中のファンが首を長くして待ちぼうけの状態だ。
「Pardon my French(汚い言葉を使ってごめんなさい)」
日本だとあまり知られていないが米国では根強い人気を誇る青春映画『フェリスはある朝突然に(Ferris Bueller’s Day Off、86年)』から、ポロリとこぼれるボキャブは、「Pardon my French(パードン・マイ・フレンチ)」。
“Pardon my French, but you’re an asshole!(汚い言葉を使ってごめんなさい、でも君は下衆野郎だ)”のように、汚い言葉を使う前か後にこぼすとスマートな大人の対応に(?)。
「out of style(時代遅れ)」
問題児たちが伝説の海賊の宝を探しに出かける冒険映画の代表作『グーニーズ(The Goonies、85年)』。劇中、怒りを抑えきれない少年ブランドンが「I’m gonna hit you so hard that, when you wake up your clothes are gonna be out of style!」と吐き捨てる。目覚めたころには、いまお前が着ている服が時代遅れになるほど長く眠りにつかせてやるからな! という斬新な脅し文句だ。
「Burner(マリファナ常習者)」
アメリカのスクールカーストは、この映画を観て学びました。 『ブレックファストクラブ(The Breakfast Club、85年)』。青春映画を撮らせたら右に出る者がいないジョン・ヒューズ監督の代表作で、優等生のクレアは不良のジョンにピシッと「Only burners like you get high」。あなたみたいな麻薬常習者しかハイにならないよ、という意味。薬物中毒者というよりかは、いまでいう「ストーナー」のニュアンスで、マリファナをよく吸うような子を指した。
そして『ファイトクラブ』の謎発言、
「I am profoundly vanilla. (俺は大いに“バニラ”である)」ってどういう意味?
おたのしみに!
▶︎「うげぇ、超サイテー」!—90年代癖あり名映画の名台詞を解剖。“90s米ギャル捨て台詞”まで。AZボキャブラリーズ
▼前回のHEAPS A-Zボキャブ
俺の仲間たちよ—『時計仕掛けのオレンジ』『タクシードライバー』主人公らの名台詞(英語)を解剖。AZボキャブラリーズ
—————
Illustration by Kana Motojima
Text by Risa Akita, Editorial Assistant: Kana Motojima
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine