編集部が選ぶ今月の1冊。日々を重ねれば増えていく「私が君(愛猫)を呼ぶ名前」

13個にまで増えて、もう原型(本名)はとどめていない。
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私の部屋にはジンがあちこちにあります。散らばっているというより、散りばめました。

思いきってお気に入りの1ページをちぎって(覚悟が必要)、ポスターみたいに部屋の壁にペタペタ。「好きなものをランダムに」なので、ダンスフロアで踊る人の写真の横に歯ブラシの切り抜き広告があったり、壁一面はカオス。私流、ジンの愛しかた。

HEAPSでは毎月、2冊のインディペンデントな出版物を取りあげています。1冊は雑誌から、1冊はジンから。いずれも個人たちの独立した精神でつくられる出版物だが、特にジンからの一冊は、時代性、社会性、必要性などの存在意義も問わずに、世界一敷居の低い文芸・ルールが存在しない世界一自由な文芸「ジン(ZINE)」のおもしろさを探っていきます。

さて、今月の一冊は、飼い主が愛猫の数あるあだ名をキュートな写真とともにまとめたジン。猫を飼ってる人は、共感できることが多いんじゃないかな。

***

愛猫の呼び名と写真をつめこんだ
飼い主の完全自己満足なジン
Names I Call My Cat (that are not her name) Zine

作った人:Pippy(ピッピー)

今年の2月は「スーパー猫の日」がありましたね。そう、2(ニャン)が6つも並ぶ特別な日、2022年2月22日。今回紹介するのは、飼い猫のいろんな呼び名をまとめたジン。愛するあまり、いろんなあだ名が生まれ、増えていく。ニヤニヤをこらえきれない筆者は筋金入りの猫好き。猫好きによる猫好きのためのジンです。さあ、猫を飼っている人はお膝にのせて、どうぞ。

———三毛猫ちゃんですね。かわいい!

そう。英国のマンチェスターで、この三毛猫とパートナーと一緒に暮らしてるんだ。

———愛猫が愛おしすぎて、ジンを作っちゃった感じですか?

友だちからジンフェスに参加しないかと誘われて、テーマを考えたときに「もちろんこの子(猫)でしょ」って。カメラロールにはこの子のおかしな写真がたんまりあったし。

———いまとなってはたくさんある猫ちゃんのあだ名をリストアップして、写真とともに盛りこんだわけですね。ところで猫ちゃんの本名は?

アン・ボニー。有名な女海賊にちなんで。

———18世紀、カリブ海を荒し回った女海賊ですね。

実は、ジンではこの本名は晒してないんだ。あだ名は13個も紹介しているっていうのに。だから(ヒープス読者以外の)読者には、探偵気分で推測してもらいたい(笑)

———あだ名、13個もあるんですか。でも愛おしすぎるあまり呼び名がたくさん生まれてしまうの、激しく共感。これもまた一つの親バカ…

猫の飼い主さんはみんな、同じく共感してくれるんだ(笑)。ジンをつくる前からそうだろうとは思っていたけど、まさかこんなにもたくさんの人が飼い猫を本名ではなくあだ名で呼んでいるとは。

———やっぱりみんなそうなんだ。

ジンフェスで出会った人やジンを購入してくれた人は、み~んな自分の猫のあだ名を教えてくれるんだ。私より、もっとひねった呼び名をつけている人もたくさんいるし。

———ジンのなかで紹介しているアン・ボニーの呼び名の数々、教えてください。

「BonnyBum(ボニー・バム)」みたいに、本名に近い呼び名が多い。でも「SkitterScat(スキッターズ・キャット)」や「Skits(スキッツ)」とか、本名とかけ離れているものもある。

———なかでも一番気に入っているのは?

「Little Bit(リル・ビット)」かな。「Bonny Butt(ボニー・バット)」「Bonny Bot(ボニー・ボット)」「Bot(ボット)」ときて、「Bit(ビット)」に変わり、最後に「Little Bit(リル・ビット)」になったっていうぐあい。

———だんだん原型をとどめなくなっていくのもわかります。うちの猫は「アンチョビ」「チョビ」「チョビ太」ときて、「ビ太郎」になりました。

そんなふうにみんな教えてくれるんだ(笑)。ちょうど、みんなの飼い猫の写真と呼び名を詰めこんだコラボジンをつくってみるの、おもしろそうだなって考えていたところ。

———それ、参加したい(切実)。自分の呼び名だけで1冊のジンができちゃったなんて、猫もびっくり。

来客があると隠れてしまうようなシャイな猫だから、有名になってもあんまり感動しないかも。でも、ジンが1冊売れるごとに猫用おやつを1袋買ってあげるのは気に入っているみたい。ドリーミーズ(猫用おやつブランド)のおやつをどっさり買いこんでるんだ。

———本人(この場合は本猫か?)にとっては、ラッキーな話!

Eye Catch Image via Names I Call My Cat (that are not her name) Zine
Text by Iori Inohara
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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