「つけて」から「つける」「つけよう」へ。二人同じだけの意思とフラットな主体性、世界初のユニセックスコンドームがもたらすもの

スタートアップの活動や新しいプロジェクトから読みとく、バラエティにとんだいま。HEAPSの(だいたい)週1レポート
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新しいプロジェクトからは、バラエティにとんだいまが見えてくる。ふつふつと醸成されはじめたニーズへの迅速な一手、世界各地の独自のやり方が光る課題へのアプローチ、表立って見えていない社会の隙間にある暮らしへの応え、時代の感性をありのままに表現しようとする振る舞いから生まれるものたち。
投資額や売り上げの数字ではなく、時代と社会とその文化への接続を尺度に。新しいプロジェクトとその背景と考察を通していまをのぞこう、HEAPSの(だいたい)週1のスタートアップ記事をどうぞ。

ベッドルームに浮上する、コンドーム を「つける・つけない」問題。くわえて「『つけて』と言える・言えない」問題。それらは、基本的にはその行為が、片方に委ねられるものだったから。コンドームがユニセックスだとしたら、どう変わっていくだろう。昨年12月、世界で初めてのユニセックスコンドームが登場した。

性別にかかわらず「コンドームは自分のもの」へ

「女性用コンドーム」という存在を知らない人も多くいるほど、コンドームといったら「男性のもの」という認識が一般的だと思う(ちなみに女性用コンドームは、膣内に装着し、精子の侵入を防ぐ仕組み)。それを裏づけるように、1000人を対象にしたある日本の調査では、男性用コンドームの使用経験がある人は全体の98パーセントであるのに対し、女性用コンドームはわずか0.4パーセントと、圧倒的な少なさ(株式会社PLAN-B、2021年)。
 男性用コンドームが浸透しているからといって、それを着けるかどうかはまた別の話。「ラテックス素材にアレルギーがある」という物理的な理由や「コンドームをつけると感じにくくなる」など快楽を優先する場合などさまざまな要因で「つけない」「つけたくない」という意見もある。男性側がつけたくない場合、ほとんどのカップルがコンドームなしでセックスに臨む、という専門家の指摘もある。

「つける?」「つけて」でもなく「つけよう」へ。そして「つけるね」の選択を、いずれにも同じだけの主体性をもたせてくれるのではないか。そう期待できるのが、ユニセックスコンドームの普及だ。昨年12月に、世界で初めて「Wondaleaf Unisex Condom(ワンダリーフ・ユニセックス・コンドーム)」が誕生した。マレーシア発。婦人科医のジョン・タン・イン・チン氏が、長いキャリアを通じて中絶の困難さや性感染症の蔓延を痛感し、開発にいたった。名前の通り性別を問わず使用できるというコンドーム、パッケージのなかにはコンドーム、ローション、コットンがそれぞれ二つずつ入っている。どうやって使うの?



医療現場で傷口をおおうために使用される薄くてやわらかいポリウレタン製で、その薄さはわずか約0.03mm。
2014年に完成し、21年12月より発売開始。

男性器の場合


1、パッケージを開封し、コンドームを広げる。
2、外側についているフィルムをめくり、コンドームの袋部分に二本の指をつっこみ、袋部分を裏返す。
3、ローションをコンドームにぬり、ペニスや睾丸をおおうように装着する。外の保護フィルムと水色の保護具をはがす。
4、必要であれば、挿入前にコンドームの外側にローションを塗る。
女性器の場合


1、パッケージを開封し、コンドームを広げる。
2、コンドームの袋部分に付属のコットンを入れ、フィルムをめくる。
3、ローションを外陰部とヴァギナの内部にぬる。
4、コンドームに二本の指を入れ、ヴァギナに挿入する。指を入れたまま、外側のフィルムをはがす。指を抜いて、水色の保護具をはがす。
5、挿入前に、コンドームのペニスの挿入部にローションを塗る。

 片面が粘着質になっているため、裏表を返すことで男女どちらの性器にもあうように作られている。「あらゆる性別、性的指向の人が使用することができます」と開発者のタン氏。袋のような形状をしているためサイズに迷う必要もない。特徴的な形状から皮膚と皮膚の接触を防ぎ、丈夫で防水性も高いため、性病の原因となる体液に触れる面積も減る。

 一つ気になるのは、同性カップルにおいて挿入を受ける男性もこのコンドームを同じだけの安全性のもと、装着し使用できるのかということ。「性別、性的指向に関わらず『つける』は自分のもの」であり、自身のセクシャルヘルスを守るためのアイテムとしてこの点は重要であるため、質問する(1/22時点で情報はなし)。先方から回答があれば追記する。

【追記(2/5)】 先方から回答が来た。現時点では、男性同士の性交や、アナル部分にワンダリーフ・ユニセックス・コンドームをつけての臨床実験はまだおこなわれていないため、「同性カップルにおいて挿入を受ける男性も同コンドームを使用できる」とはいえないそう。ただ、近い将来、この研究も進めていくとのことだ。


通常のコンドームは、性病に感染しやすい腹部までを保護できていないものが多いが、
ワンダリーフ・ユニセックス・コンドームはその形状から、
性病への感染リスクや精液の漏れの心配も減らしてくれる。

パートナーとの立場も責任もフラットに

 昨年10月、米カリフォルニア州では、性行為中に相手の同意を得ないままコンドームを外す行為「ステルシング」を性的暴行として全米で初めて違法とするなど、コンドームにまつわる「責任」の話は、パーソナルな領域を飛び越え、社会全体で見直されるトピックとして広がっていくだろう。

 ワンダリーフ・ユニセックス・コンドームは「今夜、コンドームをつけるのは誰? どちらでもいいんですよ!」と呼びかける。コンドームをユニセックスにすることで、つける意思も決定権も、イーブンに。どちらかが用意して、どちらが装着を切り出すか、ではなく、「つけよう」というアイテムに変わっていくのではないか。
 コンドームはユニセックス、どちらも持っていてどちらが用意しても当たり前のもの。今後、そういうものに変わっていけば「つける」の選択肢は誰にとっても主体的なものになっていく。セックスにおいての立場や責任も関係性も、二人のあいだにあるコンドームによってもよりフラットになっていくのかもしれない。

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All Images via Wondaleaf Unisex Condom
Text by Ayumi Sugiura
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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