弁護士よりアプリ?“離婚が高い国”で生まれた〈離婚アプリ〉。デジタル化する離婚相談サービス

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「離婚したいのに離婚できない」。こんな苦しい悩みを抱えながら、無理して結婚生活を続けているカップルたちがいる。特に多い理由は「離婚するお金を払えないから」。離婚弁護士費用に離婚カウンセラー費
基本的に離婚届けを出せば離婚できる日本と違い、離婚裁判が一般的な欧米での離婚はとにかく手間もお金もかかる。それをいま、スマホ上で解決しようという。離婚費用の高いイギリスにて誕生したのは、「離婚アプリ」だ。

離婚問題、弁護士に駆け込む前にスマホの「アプリ」で

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「訴訟がからむ離婚の平均費用は、4万ポンド(約600万円)です」

 これはイギリスにおいても高額なロンドンの場合だ。イギリスでの離婚は基本的に裁判を起こして離婚を申し立てるため、弁護士費用などの出費がかさむ*。英国国家統計局の最新データによれば、同国の離婚率は2003〜04年のピーク時から大幅に下がっているものの、離婚件数は15年から16年にかけて5.8パーセント増加。日本でも「3組に1組のカップルが離婚」、アメリカでは「2組に1組が離婚」と、離婚がもはや珍しいことでもなくなった現代社会。どこの国でも、離婚となれば金銭面の負担以外にも、想像以上の時間を費やすなど精神的なストレスも大きくなる。

*財産や生活補助を求めない場合に限り弁護士なしでの離婚が認められることがあるが、現実には弁護士に依頼し手続きをする場合が多い。

 そこで誕生したのが、円満離婚を望むカップルをサポートするアプリ「アミカブル(amicable)」、イギリス発。離婚についての疑問をまずはアプリを通し“離婚コーチ”に相談、それぞれのケースに最良なサポートを提供してくれるサービスだ。考案者は、自身もトラウマ的な高額離婚を経験した家族問題カウンセラーのケイト・デーリーとIT起業家のピップ・ウィルソン 。「イギリスでは離婚成立のため、最終的には弁護士が必要です。ですが、弁護士に大金を払う前に自分たちでできることを済ませておけば、費用の大半を節約できます」。離婚プロセスのガイダンスから、裁判に必要となる各種書類の作成、財産分与のアドバイス、離婚後の生活や子どもの育て方への同意など、離婚の下準備をサポートしてくれる。

 さて、難解な離婚問題をアプリはどう解決してくれるのか。

1、無料アプリをダウンロード。家族の情報、養育計画、理想の財産分与などを入力し個人プロフィールを作成。パートナーをインバイトし、アプリ上でコミュニケーションが取れる。

2、情報を元に、担当の“離婚コーチ”と離婚相談。

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3、さらなるサポートが必要な場合は、3種類の月額プランから自分たちにあうものを購入。

・親権や財産分与を必要としない離婚の場合:3ヶ月/月額100ポンド(約1万5千円)
・親権や財産分与が必要な場合(ただし、夫婦間の合意済):3ヶ月/月額200ポンド(約3万円)
・親権や財産分与の決着がついていない場合:3ヶ月/月額475ポンド(約7万円)

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 アミカブルは法律事務所ではなく、あくまで円満離婚をスムーズに導くためのサービス*。複雑なプロセスを経て高額を請求する法律事務所と違い、家族へのサポートを第一に考え低額で円満離婚までのステップを提案する。最初から弁護士に頼むケースに比べて、費用は5分の1まで抑えられるという。現在52ヶ国でアプリユーザーは1,000人以上。約300人が月額プランを利用中とのことだ。

*提携している法律事務所の紹介も可能。

離婚手続き中のメンタル面は、ボットでサポート

「私がこれまで離婚希望の夫婦を見てきて学んだ真の教訓は、『離婚は法的な問題として提示されるが、その実、法が絡んだ“感情的な問題”だ』ということです」

 感情がこじれたなかでの裁判は、決着がつきにくく費用がかさみ精神も消耗してしまう。「離婚を告げられる方は、告げる方に比べショックが大きく、怒りを感じ、否定したがるかもしれません。この場合は、圧力をかけずにパートナーに理解するための十分な時間をあたえることが大切です」
 アミカブルではサービス開始前に、ボットとチャットできる機能を設ける。ユーザーは離婚に関する質問や相談ができ、ボットは24時間いつでも答えてくれる。精神的にも不安定な時期には、ボットであっても何かはけ口があることは重要そうだ。アプリという身近なツールを通して物理的にも精神的にも離婚カップルの支えになろうと目指すアミカブルはこう言う。「私たちは離婚を防ぐことはできません。でも、離婚は今後の人生をよりよく過ごすための通過点だと考えています」。

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All images via Amicable
Text by Yu Takamichi
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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