アメリカの女性と家事。エプロン、家事ゲーム etc “家の仕事”と女性の関わりを、歴史や製品、娯楽からのぞく

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米国の首都ワシントンD.C.にある、19の博物館から成るスミソニアン博物館群。およそ1億4,000点ものコレクションを収蔵する、世界最大規模の博物館群だ。そのなかのひとつが国立アメリカ歴史博物館。以前紹介した、米国の政治やコミュニティ形成にいかに女性が貢献し影響をあたえたかを問う展覧会『Girlhood (It’s complicated)』が開催された場所である。今回紹介する『“All Work, No Pay”』もまた、米国の女性の歴史に注目したもの。テーマは賃金が支払われることのない仕事「家事」について。“女性の仕事”の300年間を振り返る。

米国が独立を宣言してから250年にも満たないが、女性が家庭に従事し働く様子は植民地時代の1700年代から記録されている。展示品はエプロンやハウスドレスに始まり、電気アイロンや家事を風刺するコミックまで。パッチワークの腰巻きエプロンは「ポケット」と呼ばれ、ハサミや小さなナイフ、裁縫用の指ぬきを入れておけると、1700年代に重宝された。1969年に作られた「マザーズ・ヘルパー」は、5歳から10歳向けのすごろくに似たゲーム。「バスタブを綺麗にする」「郵便受けから手紙を取ってくる」「芝生に水をやる」など、カードに書かれた家事をこなしながらコマを進めていく。キュートなイラストでポップに表現されているが、実際にやってみることで家事の多さや大変さが伝わる。

「アメリカの女性たちは常に家庭で働いてきたにも関わらず、家事に対価が払われることはなく、見過ごされてきました。そしてそれは、いまも“女性の仕事”として捉われることが多いです」。同展では、この数百年間ずっと「女性が家事をする」という暗黙の了解が世間に蔓延していることを明らかにする。

展示ショーケースは最後にこう問いかる。「Where are we now?(いまはどんな状況だろう?)」。ネット社会の発達、共働きの増加、家族形態の多様化により、着実に変化している家庭のあり方。家事の大変さや重要さ、誰がどれを担当するかを再考するきっかけとして、まずは過去に学んでみるのもいいだろう。

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Photos via National Museum of American History
Text by Rin Takagi
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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