今回紹介する展覧会の舞台は、一度見たら忘れられないユニークな外観が特徴、スペインの「ビルバオ・グッゲンハイム美術館」。魚のようにしなやかな曲線美を描く金属板が建物を囲い、周囲の海や空の青をキラキラと反射させる。建築家のフランク・Ｏ・ゲーリーが設計を手がけた、既成概念に囚われない自由で斬新なこの美術館で昨年のバレンタインデーから続くのが『OLAFUR ELIASSON: IN REAL LIFE』。「現代アート界のスーパースター」の異名をとるデンマーク生まれのアーティスト、オラファー・エリアソンの、27年のキャリアを振り返る巨大個展だ。2019年にロンドンのテート・モダンにて大きな話題を呼んだ展示が、巡回しスペインにやってきた。

オラファーは巨大な展示空間を使った没入型アートを作ることで有名だ。インスタレーション、彫刻、ドローイング、デザイン、写真、建築など、表現の手法は問わない。自然現象を作品に落とし込み知覚を揺さぶり、鑑賞者を「リアルな世界」に向き合わせる。たとえばロンドンやパリの街中に巨大な氷塊が出現し、話題を呼んだ『アイス・ウォッチ』。グリーンランドから運んだ本物の氷塊を展示することで、地球温暖化が現実（リアル）に進行していることを実感させた。

『OLAFUR ELIASSON: IN REAL LIFE』では光や影、水や霧など自然界の要素を作品に昇華した約30点の作品が展示。カラフルに照らされた人工霧に包まれる『Your atmospheric colour atlas』の展示室に入れば、右も左もわからず方向感覚を失う。他の鑑賞者が霧に吸い込まれていく体験に、普段使わない感覚が研ぎ澄まされる。真っ黄色の部屋『Room for one colour』を出た後は青みがかった残像が見え、いつもの色の感覚が一瞬惑わされる。ミストシャワーでできた水のカーテンにライトを照射し、オーロラのような美しい光が現れる『Beauty』は、位置や角度によって光の変化をたのしめる。会期は、４月４日まで。

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Text by Rin Takagi
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine