「最近の若いのは…」これ、いわれ続けて数千年。歴史をたどれば古代エジプトにまで遡るらしい。
みんな、元「最近の若者は……」だったわけで。誰もが一度は通る、青二才。
現在、青二才真っ只中なのは、世間から何かと揶揄される「ゆとり・さとり」。
米国では「ミレニアルズ」と称される世代の一端だが、彼らもンまあパンチ、効いてます。
というわけで、ゆとり世代ど真ん中でスクスク育った日本産の青二才が、夏の冷やし中華はじめましたくらいの感じではじめます。
お悩み、失敗談、お仕事の話から恋愛事情まで、プライベートに突っ込んで世界各地の青二才たちにいろいろ訊くシリーズ。
十人目「自分がいいと思うミュージシャンとオンラインで繋がって。実際に会わなくても、メールでやり取りしてミュージックビデオを作ってます」
青二才連載、ついに3年目を迎えます。あれ、3年目で十人? 人気連載なのになんでこんなに不定期なんでしょうね…。令和になって初の春だもの、この十人目を皮切りに、来週から青二才3連発行きますよ。ちょっとだけ不安なのは、“十一人目”から人数が見づらいこと。どうして漢字にしたんだろう。
記念すべき十人目は、ペンナッキー(Pennacky)22歳。十人目だから記念すべきというかね、ハイ、日本から初の青二才なんです。
ライブハウスでライブ映像を撮りはじめたのは19歳。いまでは「きのこ帝国」「YeYe」「V6」などのミュージックビデオを製作しつつ、インドネシアや韓国のインディーバンドのミュージックビデオも手掛ける。言葉通り、ジャンルも海も越える幅で映像製作をこなすペンナッキーくん、今年4月に大学を卒業したばかりのフリーランスほやほや…ではないか。大学1年生からフリーでの仕事をスタートしています。最近は「学校がなくなって楽になった」と言っていました。ではそろそろいきましょう、「青二才・映像作家、ペンナッキーのあれこれ」。
ペンナッキーくん、仕事の一コマ。
HEAPS(以下、H):今日は自宅にお招きいただきありがとうございます。
Pennacky(以下、P):はい。
H:じゃあ、はじめまーす。
P:はい。
H:あれ、なんか照れ臭そうですね。私たち実は、普段は仲良い友人同士なんでね、照れますよね。さて、今日はペンナッキーくんの仕事のことで質問します。
P:はい。
H:はいばっかり(笑)。えっと、いまやミュージックビデオとか映像をバンバン撮っているペンナッキーくんですが、映像は独学? 誰かに教わったんですか?
P:えーっと、実際に映像をはじめたのは中学校の頃だから…中学校から高校にかけては独学です。
H:早いですね。大学では映像を学んでいる?
P:大学が、えーっと、映画の大学に行き、撮影を勉強をしたので…はい、3月に卒業するまでは大学で映像の勉強をしていました。
H:大学生を卒業したんですね、おめでとうございます。最近だと「V6」、「きのこ帝国」、それに「前野健太」なんかも撮ってる。幅が広い。自分の映像を手がけるまでの流れっていうのは、どういったものだったんでしょう。
P:どんな流れ、ですか? えっ。もう、長くなりますよ。
H:いいですよ、長くて(笑)
P:中学の時に映画を作りたくて、友だちと自主映画を作ってました。
H:ほうほう。
P:もともと、ゴジラが好きで。ゴジラって映画が好きっていうか、ゴジラが好きで。映画のクオリティーは、ハリウッドとかの方がすごいんですよ。日本のゴジラ映画、見たことあります?
H:ありますよ。モスラの歌はいまだに口ずさめます。
P:わかりやすいんですよ、日本のゴジラ映画って。子どもが見ても、なんとなくどう撮っているかわかるんです。で、メイキングみると、「あーやっぱり」みたいな。メイキングが答え合わせというか。小さい時ながら「これこう撮ってるのかな」「ああ撮ってるのかな」って。
H:映像に興味を持った見方。
P そう、興味持って。なんでそういうのに目覚めたのはわからないけど。実際に、ゴジラなんていないから、勝手に「どう撮ってるのかな」って考えに行き着くんだよね。ゴジラはこの世に存在しません。なんの話だっけ…。
H:そうですね、ゴジラはいないですよ。それは、みんなわかっているので、ペンナッキーくんが、自分で映像を作るようになった流れを聞きたいです。
P:あ、そうそう、でさ、わかってるでしょ「ゴジラいない」って。それ、子どももわかるじゃん。それなのに迫力あるから、「へっ、なんで?」というハテナが浮かぶ。
H:で、どう撮ってるんだろうと気になる、と。
P:そう。勝手に考察します、メイキング見ます、あっ、やっぱこう撮ってたんだ、おもしろいな、自分もやってみたいな、って、カメラでミニチュアとかを撮りはじめる。人形とかミニカーとか集めて、ミニカー手前においてゴジラ奥において、「巨大感!」みたいな。
H: すでに巨大感を意識。
P:おもしろくて、みんなと一緒にやりたいなあって。中学のときに、ゾンビ映画を撮って。ゾンビも好きだったんで。それが映像をやりはじめる話です。ゾンビ映画では、友だちが出てくれて、ドンキで買った変なマスクを被った友だちに、友だちが追いかけられるのを撮りました。
H:ちなみに、映像は何で撮ってたんだろう?
P:それは、お母さんの、ソニーの…、HDDのビデオカメラで。テープじゃなくて、普通にデジタルのビデオカメラ、フルHDで撮れる。で、編集はアイムービー(imovie)。BRING ME THE HORIZONをかけて…
〜ここでしばし「BRING ME THE HORIZONの真似」〜
あっ、待って違う。よく思い出すと、アイムービーで編集してない。最初の最初は、ビデオカメラをテレビに繋げるじゃないですか。PSPも持っていたんですよ、PSPには音楽が入れられて。で、それもテレビに繋げる。つまり、音の端子はPSPからとって、映像の端子はビデオカメラからとって。自分がとった映像と、自分の好きな音楽を同時再生する。それで、おおおっ!できてる!みたいな。
H:わー、DIY。それを自分でみてたのしむんですね。
P:そう!見る!自分でたのしむ! それで、ああめっちゃおもしろいじゃん…ってなってたけど、アイムービーっていうのを知って。それでまたどんどんたのしくなってって。あの、それでこの時、音楽にのめり込んじゃって。
H:お、ミュージックビデオの製作に繋がる話が見えた気がします。ここまでも中学生ですよね?
P:そうです。それで同じ頃、中学の美術の先生が「トマト」という映像チームのことを教えてくれて。イギリスのエレクトロのバンド「アンダーワールド」とかのミュージックビデオをやっていたとこで。で、見たの。すっごい簡単なわけ。簡単ていうか、なんかこう、変な単純さ? で、「あっ、これなら俺にもできそう」って。それで、そういう簡単なことからはじめていって、でもその簡単なことだけだと満足いかなくなって、もっといろんなことしたいなみたいなと。
H:その先生、ペンナッキー君にとって大きな存在ですね。そういった、撮りはじめにミュージックビデオを見よう見まねでやってみた…ってのが、いま多くを手掛けているのに繋がっているんですかね。あらゆる映像製作がある中で、ミュージックビデオ製作を好んでいるのはなんでなんでしょう。
P:いやあ、もう本当は映画を撮りたいです、ぼくは。
H:あれ。
P:本当は映画を撮りたいんだけど、さっき言ったように音楽にのめり込んで、音楽が本当に好きで。ミュージックビデオからすっごいインスピレーションも受けているし…。最初は、なんていうかただ、映像の被写体が欲しい、だけだったんですよね。自分が何を撮りたいかまだわかんなくて、撮るものもないし、撮りたいものもないし、でも呆然と映画を撮りたい、映像やりたいって。それで、なんなんだこの衝動、ってもやもやしていて。それで、ハードコアが好きだったから、東京のハードコアのライブに行って、「otus(オータス)」ていうバンドを見つけた。高校のときから彼らのことを知ってて、かっこいいなと思ってたの、もともと。
H:ここでペンナッキーくん、大学生?
P:そう、大学一年生、4年前ですね。大学で東京に上京して、「ミュージックビデオ、やりたいです」って直接声かけた。ってか、先に勝手に秘密で撮っててたんだけど。それを見せたら「いいねえ、撮ってよ」って。そんな感じで最初はライブハウスで、ライブ撮影からスタート。俺はぶっちゃけ、被写体が欲しかったから、もうそれでいいや、って。
実際に使っている機材。
H:それで、いまもミュージックビデオをやっている。自分から持ちかけるのが多いんですか?
P:いもづる式に、うちのバンドも撮って、うちのバンドも撮って、みたいな感じですかね。それで、さらにバンドの友だちが増えていって。
H:きのこ帝国やYeYe(ィエィエ)のミュージックビデオも手がけていますよね。SNSで発見しました。こういった仕事も、いもづる?
P:そうですね、それの延長。レーベルの人と知り合って。
H:仕事していったら、自然に出会ってしまう。
P:そう、そうやって仕事の中で知り合う人脈から、直接仕事をもらう。映像やってる人探してるからどうこうとかもあれば、たとえばきのこ帝国は、プロダクションのプロデューサーから仕事がきたり。
H:なるほど。となると、やっぱり大きい仕事も増えますよね?
P:そうですね、責任もあるので、“仕事として映像をやる”というのも出てきていますね。
H:そのあたりで、“仕事”って部分と“自分の納得”みたいなバランスは?
P:うーん、最初からバランスを決めるというよりは、作っている過程で持っていき方が決まるというか。「わり切る」って持っていき方もできますし、ここは絶対捨てたくないというときもありますね。それは最初からそうなのではなくて、ミュージックビデオは自分だけの作品じゃないから相談しながら進めています。
H:わりと自分流に進められたなーというミュージックビデオは?
P:オメガサピエンの『Rich & Clear』というミュージックビデオはわりとうまくいきました。それに、お互いリスペクトがあったから、いろいろできたかなと思います。俺もオメサピの音楽に対する考え方も作る音楽もいいと思うし、向こうも俺にリスペクトを持ってくれている。
H:オメガサピエンは、韓国人のアーティストですよね。やっぱり、自分から動いて作るミュージックビデオも、映像製作を仕事としていくなかで重要?
P:そうですね、自分のしたいこと、ちゃんとしなきゃ、と思って。音楽の感性が、自分が作る映像と共通点があるミュージシャンを探そうと。いろいろインターネットをディグってたら、オメガサピエンくんに行き着いて。一本ミュージックビデオを撮ったんですけど、それが今度は海を超えて韓国の子たちとミュージックビデオを作ることになった。国を超えて、こう音楽で繋がる。まさにこれだな、と。
H:ペンナッキーくんの求めていたミュージックビデオ製作。やっぱり好きじゃないですかミュージックビデオ製作。
P:最近だと、日本とかじゃなくて、アジアとか、世界にまで広げてます。音楽がよければ、なんつうんだろう、音楽がいいというのが重要だから…自分がいいと思ったミュージシャンとオンラインで繋がって、実際に会わなくてもメールでやりとりできるから、それでミュージックビデオを作ってます。海外のアーティストと。
H:やり取りを遠隔でおこなうというより、会わないでミュージックビデオを作っちゃう、ということ?
P:「Gizpel(ギスペル)」というインドネシアのバンドのミュージックビデオは、日本をロケーションにして、キャストも日本にいるまわりの友だちで作ったりもしましたね。
H:メールのやり取りはどうしているんですか? こだわり強いバンドとかのときに困りそうですね。
P:一応自分でやり取りを試みて、難しいときは友だちに頼んだりもします。
H:いまは他にどんな海外のアーティストの映像を?
P:シンガポールのバンドと、インドネシアのバンドをやりました。次またシンガポールのバンドとやりますし、韓国とも。国がどうこうという話じゃないんですけど、なんかこう、音楽には、壁はないなあと。
H:言語には壁はあるけど、音楽には壁はない。
P:そうそうそう。そういうのを実感してます。
H:オメガサピエンの撮影では何がおもしろかったでしょうか?
P:撮影でおもしろかったことは、あまりないですね。
H:(笑)
P:考えたアイデアをかたちにすることだけの行為なので、撮影は。オメガサピエン本人はおもしろいですよ、彼はユーモア溢れる子です。
H:なんだかいろんな国のバンドのミュージックビデオを製作しているペンナッキーくんですが、さっき言ってた自分流とか、自分の製作プロセスってのはなんでしょう。
P ペンナッキーらしさとは、えーっと、もう自分そのもの(笑)。生きてて、わりと多いんですよ、これクソだなとかを感じること。そういうのを単純に、次、世の中こうだから次はこういうことしよう、みたいな感じで撮っているというか。
H:世の中こうだから、ってのは、みんなと一緒はイヤだと?
P:別にみんなと違うのがいいとかじゃなくて…世間的にはみんなと一緒がいいんですよ。服とかも派手なの着ないし。そういうのはみんなと同じがいい。なんか「まわりがこうだからこう」とかじゃなくて、自分自身がどう思っているか、どういう考えを持っているか、が大事だと思います。マジョリティーの意見に流されるんじゃなくて、自分が好きだなと思ったことをやる。うーん、難しいな…。
靴はこれしか履かないらしい。
H:直感っぽいけど、しっかり考えて作っていますよね。
P:そうですね、直感とか本能だけど、しっかり考えてます。コンセプトとか、わりといっぱい。自分らしさは、断捨離してって「これは俺イヤだ」「これは俺いい」って、自分の基準さえしっかり持っていればいいのかなって思います。たとえば、バンって渡されたときに、いい!悪い!って判断できないと流されちゃう。これいいですよ、って見せられて、あっいいんだ、じゃあ、っていうの嫌じゃん。
H:好き嫌いをはっきりする。
P:うん、そうだね。
ロケ地。
H:せっかくなんで…プライベートの話もしましょう。仕事以外では何が好き?
P:仕事以外では…音楽を聴くのが好きです。
H:仕事と近い。
P:映画を見るのが好きです。
H:これまた仕事と近い。一番好きな映画は?
P 一番好きな映画? あああー、むずいですね。SF映画が好きです、もともとゴジラが好きなので、非現実的なやつが。影響されたのもSFです。
H:最近見て、エモいと思った映画は?
P:ボヘミアンラプソディー。本当に、いいと思いました。
H:ゴジラは全部見たらしいですが、その中ではどれが一番好きですか?
P:ゴジラの作品で一番好きなのは、『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』ですね。
H:(? 早くて聞き取れない)もう一度お願いします。
P:『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』です。ぼくの原点ですね。本当にゴジラが好きなんですよ。声を聞いただけでなんの作品かわかる。
H:へえー。ゴジラ、声違うんだ。じゃあ、音楽は?
P:エモですね、エモが好きです。レディオヘッドはエモじゃないですけど、レディオヘッド好きです。アメリカンフットボールとか。あとシューゲイザーも好き。マイブラッディバレンタイン、最近だとヨ・ラ・テンゴ。あと。ハードコア好きです。
H:ミュージックビデオの原点もハードコアからですもんね。ハードコアだと、誰が一番好きですか?
P:…最近だとコードオレンジという米国のペンシルベニアのバンドですかね。
H:プライベートで、よくハードコア見に行ってるんですよね?
P:そうですね、見てます。ハードコアショーに行くことが趣味ですから。
H:モッシュとかします?
P:モッシュは、しようと思えば全然できますね。
H:最後に、好きな食べ物。
P:ハンバーガー。
H:食べ方にこだわりは?
P:潰して食います。
H:その方が高密度で口にたくさん入りますもんね。これからもペンナッキーくんの映像、たのしみにしています。ミュージックビデオやりつつ、いずれはやっぱり映画を?
P:音楽が好きだから、「こういうの撮りたいな」とか、「この状況こうだな」とか、そういう映像のインスピレーションは音楽からくるんです。たとえば、学校帰りに自分の好きなミュージシャン聴きながら放課後歩いてるときにインスピレーションが生まれやすい。それは、映画だと脚本にあたるかもしれないけど、曲を聴くと、ストーリーまではいかなくても情景が浮かぶというか。この曲を聞くとこういう情景が浮かぶ、で、それを見てみたいから、映像化してみている。だけど、最近は次に挑戦してみたいことがあって。なんかこう、オリジナリティー強いものというか、曲に引っ張られて浮かぶアイディアじゃなくて、自分の潜在意識を反映した純度100パーセントの作品を作りたい感じです。
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Aonisai 010: Pennacky
ペンナッキー(Pennacky)
1996年生まれ。映像作家。
「きのこ帝国」「YeYe」「V6」などのミュージックビデオを製作しつつ、
シンガポール、インドネシアや韓国など
海を越えてミュージシャンの映像作品を手掛ける。
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Photos & Interview by Kana Motojima
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine