「スロット捨ててクラフトビール充実させたよ!」カジノ業界“+α大作戦”、若者ギャンブル離れから起死回生?

Share
Tweet

ラスベガスといったら、一にカジノ、二にカジノ、三四がなくて五にカジノ。騒がしいスロットマシンの音にルーレットがまわり続ける。でもどうやら最近、ギラついたラスベガスにちょっとした“異変”が起こっているらしい。「一緒に来た親はカジノに行くだろうけど、私はパス」「スロットマシン? 別にやらなくていいんじゃない?」。そんな若者らにならばとカジノ業界側も思い切った改革はじめました。「もう、スロットマシンは捨てよ、クラフトビール充実させよ」

taylor-davidson-24494
Image via Taylor Davidson

「ベガスは好き、でもカジノは別に」

「最近の若者はギャンブルをしない」と苦しむ日本のパチンコ業界と一緒で、カジノの街、ベガスも頭を抱えている。
 しかも、おもしろいことにベガス含め、カジノリゾートに訪れる若者の割合は増えているにも関わらず、「カジノはしない」のだ。カジノリゾートからすれば「あんたら、何しに来てるの?」というところだろう。
 アトランティック・シティ(東海岸最大級のカジノリゾート)を訪れたミレニアルズがギャンブルにつぎ込むお金は旅の予算のうちわずか8.5パーセントで、非ミレニアルズ世代の23.5パーセントと比べると「ギャンブル、興味ないし」は一目瞭然。旅の目的もスロットマシン、ではなくナイトクラブやバーらしい(ラスベガスだったら、ショーに買い物、食べ放題、プールパーティーもあるぞ)。

「カジノリゾートに来てはくれるがギャンブルはしない」。カジノ側からすればありがた迷惑もいいところだが、そこはさすがエンタメ業界、切り替えも早いしうまい。扱いづらい消費者にたっぷり楽しんで(お金を落として)もらおうと、彼らの好物を使って動きはじめた。それは「+α」作戦、である。

mike-boening-116749
Image via Mike Boening

タトゥーパーラーに、クラフトビール。カジノ「+α」に注力

 なんと、カジノに不可欠なスロットマシンをごそっと取っ払って若い世代の誘致を狙うロードアイランドにあるカジノリゾート。彼らが着目したのが「実はミレニアルズ、スロットマシンが苦手」。タッチパネル世代、常日頃から刺激的なスマホゲームをしている彼らにとって、777が出るまでひたすらレバーを引くのはなんだか物足りない。さらに、大人数でソーシャライズするのが好きな彼らにとって一人で黙々と同じ動作を続けるなど退屈極まりないだろう。

 ということで、そのスロットマシンに潔くお別れを告げ、その代わりミレニアルズにも好まれるポーカーなどのテーブルゲームを拡張。また「カジノというよりは“パーティー会場”」というコネチカットのカジノはなんとタトゥーパーラーを併設。カジノのナイトクラブには毎週末ビックネームDJをラインナップする至れり尽くせりぶり。ロサンゼルスのカジノもスパやサウナ、そして28種のクラフトビールを常時完備など、あざといくらいの戦略を打ってきた。

matty-adame-200085
Image via Matty Adame

 カジノ+タトゥーパーラーカジノ+パーティー会場カジノ+クラフトビール、と主役を「カジノ」から「+α」にシフト。ギャンブルしないミレニアルズにどうギャンブルをさせるか、ではなく、ギャンブルでない部分でいかに惹きつけ自然にカジノに招き入れるか。もはやエンターテイメント複合施設カジノつき”というイメージに刷新するかのような企みだ。

デジタルネイティブがハマる新たなギャンブル

 ここまで散々ミレニアルズはギャンブルをしない人種だ…といってきたが、彼らにも例外はあった。たびたび高額な(ときには数億円!)賞金がかけられる新たなギャンブル「イー・スポーツ(e-sports)」だ。コンピューターゲームやビデオゲームを使った対戦型スポーツ競技で、エレクトロニック・スポーツの略。複数のチームやプレーヤーが一堂に会し数千数万もの観衆が見守るなか格闘ゲームやスポーツゲーム、シューティングゲームなどを競い合う。大会の模様はストリーミング放送されて…、とかなり大規模なイベントで、日本での浸透率は低いものの世界でいま急成長中のビジネス。ちなみに年収1億円を超えるプロゲーマーもいるという。

 幼い頃にテレビゲーム、大人になってから携帯ゲームに慣れ親しんできた世代。イー・スポーツならギャンブルという先入観なくお金を賭けることができる。2019年にはイー・スポーツは1.23億ドル(日本円で約1375億円)を超える巨額ビジネスになると予測され、まだまだ若者に参加してもらいたいカジノ業界からの期待は高まるばかりだ。

maxime-rossignol-266383
Image via Maxime Rossignol

 このギャンブルという先入観なく、というのが肝なのかも。実際に入り口をパーティーにしておけば結果的にカジノ体験は消費されつつある。お金お金と追い求める年配のギャンブル世代と比べると、ケチではないが自分が一体なににお金をかけるのかに少し慎重ということだ。「+α」や「デジタル」でより一夜の体験へシフトできるギャンブルは、モノより経験にお金を払っても構わない世代との親和性は案外よいのかも? 

—————
Text by Shimpei Nakagawa
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

Share
Tweet
default
 
 
 
 
 

Latest

All articles loaded
No more articles to load