人生の3分の1を占めるといわれる睡眠。ヒト一人の人生を仮に80年とすれば、その3分の1、つまりは27年間もの月日を「寝床」で費やす計算になる。そんなに長い時間を過ごす寝床には、当然さまざまなストーリーや、忘れられない思い出、淡い感情や苦い想いなど、100のベッドがあったら100通りの話があるだろう。
寝ているときに人間は一番無防備になるというから(ゴルゴ13はのぞいてね)、寝室は間違いなく“最も私的な空間”といえる。勝手に足を踏み入れるのをためらうほど、「その人」がつまった小さなスペース、寝床の写真を集めたのがフォト&エッセイジン『Bedspread(ベッドスプレッド)』だ。
作者は、イギリス在住のフォトグラファー、ジェニファー・ロー(Jennifer Lo)。世界中のコントリビューターから、ベッドの写真とベッドにまつわるストーリーを集め、一冊に綴じた。
「フォトグラファーもそうでない人からも『ベッド』の写真を集めたわ。写真一枚一枚の裏側にあるストーリーってとても興味深いじゃない?」とジェニファー。
ベッド写真に添えられるのは、恋人との思い出を語るものから、ベッドに寝たきりになった父との思い出話など、普段は垣間見ることのできない寝室に広がるパーソナルなストーリーだ。
清らかで穏やかな写真たちがシンプルな装丁で綴じられた美しいジン。ページをめくっていくほど、今朝離れたばかりの寝床が恋しくなってくる。就寝前のひとときに『ベッドスプレッド』を。今夜は良い眠りにつけそうだ。
—————
All images via Bedspread zine
Text by Shimpei Nakagawa
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine