自分の本棚を地域の人へシェア。いま、日本中で静かに広がりを見せるのが、誰もがどこでも気軽にはじめられる「マイクロ・ライブラリー(個人運営の小さな図書館)」だ。読書を促進するだけでなく、本をきっかけに地域コミュニティの活性化にも一役買うと期待されている。
自宅やオフィス、カフェ、ショップ、お寺にも開設、さらに移動型もあるなど自由度の高さが何より面白いのだが、和歌山県にも一軒、また新しいアイデアの図書館があった。
同県新宮市の古民家を改築して建てられた「Youth Library (ユース・ライブラリー)えんがわ(以下、えんがわ)」は、日本でも数少ない“泊まれる”図書館なのだ。
「子どもや若者が、自分のやってみようと思ったことができる、大人から何か言われずに自由でいられる“秘密基地”を作りたい」と語るのは、弱冠24歳の館長・宮川裕大(ゆうだい)さん。
地域の子どもや若者たちにとって「憩いの場・さまざまな人との交流の場」となるような図書館を開放するほか、宿泊施設としても、1日1組限定で海外の観光客や日本一周をしている大学生をホスト。しかも若者なら一泊ワンコイン(500円)という破格の宿泊料金が、お金のない若者にやさしい。
「Youth(子ども・若者)を全力で応援する」がミッションのえんがわは、小中学生にプログラミングを教えるイベント「CoderDojo(コーダー・ドウジョウ)」も不定期に開催。現在は、地元高校生の「落ち着いて勉強できる空間が欲しい」という要望に応え、新たに自習室を作ろうと計画している。
若き館長が、若者、大人、そして外国人観光客も巻き込んで作り上げる空間えんがわ、捧げるのはユースの将来だ。一人のミレニアルによる次世代ミレニアルズに向けた、新たなマイクロ・ライブラリーの形が一つ育まれそうだ。
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Text by Shimpei Nakagawa