「日給100円」ファッション業界に搾取されるインドを変えたい。ブランドBehno「誰もやらないなら俺がやる」
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扇風機もなければ窓もない。これは灼熱の国インドにある縫製工場の実態だ。世界中のアパレル企業の生産を担うインドでは、6000万以上の人が1日100円以下の賃金でアパレル工場で働いている。それを知ったところで一体何ができる? どうしようもない、というのが大多数だと思うが、ここにも一人いた。「企業も誰もやらないなら俺がやる」

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Shivam Punjya (シヴァン・プンジャ)

ミシンまでは這っていき、窓もない。

 ファッション業界の大企業がこぞって生産現場をないがしろにするなら、自分が変えてやると勢いよく走り出したのは、Shivam Punjya (シヴァン・プンジャ)28歳。彼が2013年に設立したばかりのファッションブランドBehno(ビーノ)は、インドの縫製工場で働く人たち、そしてファッション業界のあり方を大きく変えようとしている。

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 ビーノはニューヨークにデザインオフィスを構え、生産はすべてインドで行う。シヴァンがインドに注目したのは、大学で国際政治経学を専攻し、卒業論文のため女性の健康調査でインドを訪れたことがきっかけだった。

 多くが家族経営のアパレル工場。中には安全とは言い難いものもあるらしく、当時の様子をシヴァンはこう振り返った。
「天井が低くて、地面を這ってミシンまでたどり着かなければならなかったり、いくつかの工場は窓や扇風機がなく、とても暑かったのを覚えています」。そして、窓もなく外界と遮断された工場で働く人のほとんどが女性だった。翌年の2013年、目の当たりにした現状に追い打ちをかけるかのようなバングラデシュのラナ・プラザ崩壊事故。「インドで同じような悲惨な事故を起こさないために」という思いが、一刻でも早くのブランド設立となった。

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デザイナーのーAshley Austin (アシュリー・オースティン)

「ビーノ・スタンダード」というブランドが掲げる独自の基準は、服の生産を支えるインドの人々のために、エシカルな生産環境を目指した。労働者の健康や女性の権利、環境への配慮などの6つの分野からなる。

 たとえば、従業員とその家族が健康に問題があった場合、病院で治療を受けることができる。妊娠検診などのケアや、女性リーダーの育成にも力をいれいている。これは、他の工場では滅多になく珍しいことだ。
 そして、インドでは当たり前になっている性別による賃金の差を無し、最低賃金の2倍を保証する。

 病院を持つ現地のNPO団体とパートナーシップを結ぶことで、この「ビーノ・スタンダード」の管理と実行を実現し、労働環境や働く人々の待遇、権利、健康などの向上に努める。

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インドとニューヨークで一緒に作る服

 ビーノは決してエシカルを謳うだけのファッションブランドではない。ブランドとインドの関係が反映された、ミニマルでモダンなデザインがその成長を支えている。ビーノのデザイナーは「ビーノのコレクションはインドで代々受け継がれてきた手作業で作るテキスタイルや刺繍にインスパイアされています」と話す。服の製作プロセスで、生産現場とのコミュニケーションを大切にする。


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behno Look Book SS2017, Photos by Eric White

「ルックブックを持って、インドの縫製工場に行ったことがあるんです。一緒に座ってそこで働く人と話しをしていると、『これ私が縫った袖だわ』とか『あら、この裏地は私がやったの』なんて話してくれるんです。まるでルックブックに載っているアイテムそれぞれに物語があるみたいでした。彼女たちと実際に話してみて、インドの人たちとの絆や、一緒に服を作っている感覚というのを強く感じました」

 現地の人を大切にするビーノ、今年7月には「ガーメント・ワーカー・プロジェクト」を新たに始動。工場で働く人のポートレイトにライフストリーを載せたフォトプロジェクトだ。これには、インドの縫製工場で働く人たち現状を伝えたいという思いが込められている。

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Garment Worker Project_2_Photo by Dan Smith
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Garment Worker Project, Photos by Dan Smith

 インドの現状の変化を感じているシヴァン。「インドにある工場は少しづつですが変わってきています。特にミレニアル世代が率先してその現状を変えようとしているように感じています。また、最近では『この服はどこで、誰が作ったものか?』といった質問をする人も増えてきましたね」と、消費者が変わりつつあることも明確に語った。

 誰もやらないなら、と立ち上がりただ自分たちに出来る範囲で確実にファッション業界を変えていく。ビーノが紡ぐ想いは、細い糸が服になるように、少しづつ時間をかけながら形になっている。

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Interview photos by Kohei Kawashima
Text by Akihiko Hirata

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