50万人。これはアメリカで生きる路上生活者の数字だ。職どころか食にもありつくのもやっとなホームレスたちは、年々増加の一途。その社会問題を「キャップ」で解決しようと、面白い取り組みをしているファッションブランドがあるので紹介したい。ホームレスがその取り組みを通して、アパレル業界にも貢献しているから、さらに面白い。
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アパレル企業のMitscoots (ミットスクーツ)、拠点はテキサス州のオースティン。彼らがスタートしたプロジェクト「The Cause Cap(ザ・コーズ・キャップ)」は、自社で生産・販売するベースボールキャップで、衣類に困るホームレス、社会復帰を目指すホームレスに救いの手を差し伸べるという。
「食料や水と同じくらい、靴下や帽子などの衣類が必要」。それが8年間のホームレス支援活動を通してミットスクーツが実感したことだった。
そこで、販売するキャップを一つ買えば提携している慈善団体を通してホームレスたちに帽子が一つ寄付される、という仕組みを考案。
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実際、ホームレスにとって食料や水、衣類などの物資不足は問題の一部にしかすぎない。根本からの解決を考えれば、彼らが自分で生活必需品を買えるようにならなくては永遠に対症療法的な解決が続くだけ。
ミットスクーツもそれは重々承知で、物資を与えるだけでなく「雇用」も創出する。今回のプロジェクトでは帽子の梱包作業をホームレスに任せ、社会復帰を促している。
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社会貢献はもちろんだが、ブランドとしてミットスクーツが誇るのは「Made in the USA」の質。毎日でも被れるシンプルなベースボールキャップには耐摩耗性の糸を使用、丈夫なものづくりを実践している。万が一糸がほつれたり生地が裂けたりした場合も、5年間の保証で無料で修理に対応してくれるそう。
アメリカのアパレルプロダクトが近年、輸入プロダクトに頼っている中で、輸入品ではなくアメリカ製品の質を実践しようとするミットスクーツ。キャップをもってそれを証明する今回の取り組みに、ホームレスが一役を担っている。
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両極にいる二者が繋がり、貢献し合った今回のプロジェクト。一見ありふれたシンプルなベースボールキャップで、というのがまたいい。大げさなものではなく誰にでも加担できることなのだと示してくれた、ファッションブランドならではの取り組みだ。
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All images via Mitscoots
Text by Akihiko Hirata and HEAPS