編集部が選ぶ今月のZINE3冊。テーマは〈スモークライフ〉。ウィードのデタラメ都市伝説、ニコチンと脳の関係、私的なタバコ回想

「私はよく煙に手招きされる夢を見たな。神秘的で、なんだか心地良くってさ」
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この前、香水の雑誌をみていてふと思った。フランス発の香水専門誌『NEZ(ネイ:フランスで鼻の意)』で、世界で人気の定番品からニッチなレアものまで、香りについてを紹介している。誌面から感じ取ることができない香りを、写真と文章で伝えるって、大変。世界一敷居の低い文芸で、ルールが存在しない世界一自由な文芸「ジン(ZINE)」。

今月紹介するのは「一服」がテーマの3冊。ウィードのデタラメ都市伝説、ニコチンと脳の関係について、18歳からのタバコ回想。身体に悪いのは充分承知。でも渋い大人が煙草をふかしているのを見ると、格好いいなぁと思ってしまう。

***

「りんごを使って吸うと、よりハイになる」?
友人に聞いたウィードのデタラメ都市伝説集『Weed Lies

作った人:Michael Elizabeth Johnson(マイケル・エリザベス・ジョンソン)


Image via Michael Elizabeth Johnson

初めて吸ったのは大学時代で、それ以来、友人たちからウィードにまつわるありとあらゆる話を聞いてきたという。『Weed Lies(ウィード・ライズ)』はその名の通り、これまで彼が耳にしたウィードのデタラメ都市伝説をまとめたジン。デタラメかどうかは吸った人のみぞ知る? 信じるか信じないかは、あなた次第ってやつですね。

———ウィードにまつわるデタラメ都市伝説。たとえばどんなものがあるでしょう。

・「気に入らなかったらいつでもハイから抜け出せるよ。だから両親が部屋に入って来ても平然を装うことができる」

・「睡眠に効く。毎晩4時間しか寝てないけど、ウィードのおかげで8時間寝た気になれる」

・これは彼女が聞いた説。「りんごを使ってウィードを吸う。そしてそのりんごを食べるとよりハイになれる」。

———りんごの件、ちょっと気になる。ハイになって空腹も満たすとは。

僕も気になったから試してみたかったんだけど、彼女に止められたよ(笑)

———あら(笑)

長年吸ってきたいまだと「これデタラメじゃん」って思えるけど、それまでは疑うことなく信じてからウケるよね。だって、確かにウィードは健康に無害だけど、いつでもハイから抜け出すなんて、無理だし。それに人によっては睡眠に効くけど、だからといって睡眠時間を削っていいなわけがない。

———もっと教えてください、デタラメ都市伝説(興味津々)。

これは全部彼女に聞いた話なんだけど…

・「泥酔しているときに吸うと酔いが覚める」。大嘘ね。さらに酔いが回るから。

・「ウィードを捻り潰さずに塊のまま吸うとよりハイになる」。これ、ただのウィードの無駄遣い。

・「ボング(水を使って煙をろ過し、有害物質を除去する道具)には、水の代わりにゲータレード(米国発、着色力がっつりのスポーツ飲料水)を使う方が健康的」。普通に気持ち悪いし、ベタベタすると思う(笑)。僕だったら、お金を積まれても断る。

———いろんなデタラメがあるんだね。さて、ここまで話してきてなんだけど、マイケルの住むネブラスカはウィードは合法なの?

ネブラスカは医療用さえもまだ非合法。でも僕を含め、たくさんの人がカジュアルに吸っているよ。実は大学時代に警察に捕まったことがあって。以来、怖くて吸うのは家のみ。二日酔いや飲みすぎて死に至ることがないのに、なぜ酒が合法でマリファナが違法なんだって思うよ。

———日本もまだまだ「ダメ。ゼッタイ。」です。

何かがタブーとされるとき、真実の見分けが難しくなって都市伝説が湧き始めるんだと思うんだ。日本のウィードのデタラメ都市伝説はどんなのか気になるね。

「やめろとは言いません。でも、知っておいてくださいね」。
Nicotine Zine

作った人:Christine Liu(クリスティーン・リウ)

Image via Christine Liu

ニコチンは脳と体にどういった影響をもたらすのか。カリフォルニア大学バークレー校の研究所で、5年間ニコチン研究を行う学生が制作したのが『Nicotine Zine(ニコチン・ジン)』。タバコの発祥、ニコチンが体にいきわたる仕組み、副流煙が体に及ぼす悪影響などが、イラストとともに詳しく記されている。

———ニコチンについての知識が、1冊にわかりやすくまとめてある。

タバコの植物としての歴史、ニコチンが脳にどう影響するかの洞察、電子タバコの中毒性を探究する内容になっています。タバコに関する疾患研究プログラムから資金を得てのジン制作です。そして全国の科学教育者のもとへと発送しました。ジンは科学の発表の場において、優秀なんです。

———ジンだと論文よりずっと読みやすいだろうし、多くの人の手に渡りそうだもんね。そもそもなんだけど、ニコチンとはどういったもの?

ニコチンとは、植物が虫を追い払うために進化した分子。人間の神経系にある重要な分子、アセチルコリンに似た形をしています。ニコチンはアセチルコリンと同様、気分が良くなったり悪くなったりと脳と体に影響する。ニコチンには強い中毒性があるので、予防可能にもかかわらず死の原因になっています。

———タバコは吸わない?

日常的ではないけど私もタバコを吸うことはあります。実はニコチンには認知機能を高める効果があるという結果もあるんです。

———へえー。

しかし、その中毒性から良い面よりも悪い面の方が際立ちます。それにニコチンには、ヘロイン・コカイン・覚醒剤などの他の中毒性のある薬物と違い、不快感が存在します。初めてタバコを吸った多くの人が、吐き気や嫌悪感を引き起こす、あの不快感のことです。

———ジン読者には、禁煙と喫煙のどちらをすすめる?

このジンは禁煙、もしくは喫煙を促すものではありません。ジンを読んで正しい情報を知ったうえで、自分がいいと思う決断をしてほしい。適度に吸えば、ニコチンは安全ですから。

18歳、初めて火をつけた。
私のタバコ回想記『Smoking Dream

作った人:Hannah Wiilliams(ハンナ・ウィリアムズ)

Image via Hannah Wiilliam

愛煙家が作った『Smoking Dreams(スモーキング・ドリームズ)』。初めてタバコを吸ったときのこと、喫煙の虜になった経緯、タバコに対する彼女の思いや考えが、10ページに渡ってつらつら綴られているジン。

———タバコ回想記ですか。

そう、私のタバコに対する思いや考えを綴ったもの。なぜタバコに惹かれるのか、タバコにまつわる記憶、タバコによる影響とか。いろいろ頭の中を整理したいなと思って。世の中には、個人的なことをユニークに綴った魅力的なジンがたくさんあるから、私も自分の感じることを共有してみたくって。

———初めてタバコを吸ったのはいつ?

18歳。当時はタバコを吸うのに憧れていて、ずっと吸ってみたかった。25歳になったいまも時々吸う。やめるつもりはないかな。

———紙面にはパイプタバコをくわえている子どもの写真があるね。

あれは父の写真。もちろん小さい頃から吸ってたわけじゃないよ(笑)でも70年代といえば、みんな当たり前のようにタバコをふかしていた時代。

———70年代の映画では、みんながタバコをふかしているもんね。ああいうのを見て、タバコに憧れることもある。

タバコを吸ったことがなかったり、吸いはじめの頃は特にね。私はよく煙に手招きされる夢を見たな。神秘的で、なんだか心地良くってさ。

———その夢、ユニーク(笑)。タバコのどんなところが好き?

吸っていることで会話の話題に繋がったり、友だちの輪が広がったりするのが好き。あとね、みんなそれぞれのタバコの扱い方があるでしょ? 聞いた話によると、新しいタバコの箱を開けたあと1本だけタバコを逆さに入れておくと、幸運がやってくるらしいよ。

———へえ。なんだか試してみたくなるね。

Eye Catch Image via Christine Liu
Text by Ayano Mori
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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