編集部が選ぶ今月のZINE4冊。テーマは〈日本スペシャル〉自販機のCCレモン、ガチャポン、銭湯のマナー、ホテルでかくポストカード

自動販売機で買う缶ジュースってなんであんなにいいんだろう。今月はイレギュラーに4冊です。
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2年前、新宿に「世界一分厚い雑誌」が現れた。コロコロコミックなんて比じゃないぞ、なんてったってその厚さ5メートル以上。正体は、ドコモの雑誌配信アプリ「dマガジン」が作った、アプリ内で読める雑誌をすべて横一列に並べたインスタレーションだった。このインスタレーションは規格外に分厚いが、ジンは薄っぺらくたっていい。世界一敷居の低い文芸で、ルールが存在しない世界一自由な文芸「ジン(ZINE)」。

今月紹介するのは「日本の思い出」がテーマの4冊。はい、いつもは3冊なんですが、記事ができあがった頃にもう1冊のジン作者から連絡があって、「ぜひとも入れてちょうだいね」。ということで、今月は4冊にしました。さて、みんなが旅で見つけた日本って、どんなもの? 

***

「ドン・キホーテでお買い物、CCレモン、プリント倶楽部」
10日間の滞在記『Lost in Japan travel zine


作った人:Laura(ローラ)

Image via Laura

2018年に日本を訪れた作者のローラと彼氏のトム。当時の旅の思ひ出を綴ったのが『Lost in Japan travel zine(ロスト・イン・ジャパン・トラベル・ジン)』。ドンキで爆買いしたり、プリクラではしゃいだり、立ち寄ったバーでビートルズに浸ったり。キュートな2人の写真とコミカルなイラストにほっこりする旅行日記だ。

———旅行の思い出をジンにするっていいね。しかも、ジンの前半はローラが書いたポラロイド付きの日記で、後半はトムが描いたコミック。こうして一緒に思ひ出をジンに綴じるって、素敵だわ〜。

いままでも旅行のたびに思い出をジンに綴じてきたんだけど、日本は絶対おもしろい内容になると思ったんだ〜。多くの人が一度は訪れたい国だと思うし、このジンでまわりの人たちに少しでも日本のことを知ってもらえたらなって。

———10日間の日本滞在で、お気に入りのスポットは?

まず、京都。あの趣きのある街並みと紅葉は息をのむ美しさ! 他には、ロフトとドン・キホーテと東急ハンズ。文房具やキッチン用品好きな私には、天国みたいな場所だった。おかげでお土産買いすぎちゃったし。

———ドン・キはいつ行っても買いすぎちゃいます。そしてププリント倶楽部。プリクラどうだった?

私も女友だちもプリクラ機の中ではしゃいで楽しんでたんだけど、男友だちは「顔が変わりすぎて怖い」って(笑)。私たちが住む英国にはプリクラなんてないから、いいお土産になったよ。あとは自動販売機にも興奮した!ちなみにトムはポカリスエットとCCレモンがお気に入り。

———1番思い出深いことは?

地元の人たちと仲良くなったこと。「グラス・オニオン」というお店に行ったんだけど…

———あ、知ってる。三軒茶屋にある、ビートルズが絶えず流れるオムライスの名店だ。

そこはバーでもあるらしく、ビートルズの曲を演奏していたミュージシャンたちと仲良くなったんだ。演奏中に参加したりもして。盛り上がっちゃった。

———地元の人と仲良くなるのって、旅の醍醐味だもんね。タイトルが「Lost in Japan(日本で迷子になった)」だけど、ほんとに迷子になった?

最初は電車の乗り方がわからなくって戸惑った!東京駅の標識には英語表記があったから、次第に乗りこなせるようになった。でも大阪のカップヌードルミュージアムへ行くための切符を買うときは困ったな。まわりの人が気遣って声をかけてくれたから助かったけど。日本にいる人はすごく親切だよね。英国、特にロンドンではそんなこと滅多にないもん。

***

秋葉原のガチャポン、嵐山の自動販売機。
写真で撮った日本の夏をイラストに
Japan: Summer 2017 Zine

作った人:Irene(アイリーン)


Image via Irene

各国旅行中に撮影した写真を、そのままイラストにするジン。秋葉原のゲーセンにあるガチャポンや嵐山の民家の前にある自動販売機、上野のアメ横の看板、などなど。淡いレトロな色合いでとじこめた日本の夏『Japan: Summer 2017 Zine(ジャパン:サマー・2017・ジン)』。

———イラストはどれも色合いがいいね。日本での旅はどんなもんでした?

日本には1ヶ月間滞在。大阪の道頓堀、奈良の鹿公園、東京の秋葉原にあるゲームセンターなど、東京から長崎までいろんな場所を巡った。どの町も違う魅力があったし、いろんな食文化にも触れた。とか言いつつ、コンビニでの買い食いも多かったけどね(笑)。

———日本のコンビニフードのクオリティは、かなり高めですもんね。なぜ旅のジンを作ろうと?

旅の話って、誰とでも盛り上がれる。同じ場所を訪れたことがあるってだけで、他人とだって親近感が沸く気がするんだよね。

———確かに。このジンでは、カメラで撮影した写真をイラストに。

写真をベースにフォトショップを使って描いたんだ。現地でその場で描いてもよかったんだけど、旅行だから観光や食事を優先させたくって。

———そりゃそうだ。ちなみにお気に入りイラストはどれ?

京都の嵐山。このイラストはかなり細部までこだわった。それに、日本の伝統的な古民家の前にモダンな自動販売機があるところがお気に入り。嵐山は都会と違って、混雑していなかったからのびのびとした時間が過ごせた。

ポートランドで見つけた日本をたのしむ栞ジン。
スラングから銭湯でのマナーまで
Japanese People ABC(日本人のいろは)Japan guide

***

作った人:bonchikyoto(ボンチキョウト、萩永麻由加)

Image via bonchikyoto

日本旅行を計画している人に推したい『Japanese People ABC(日本人のいろは)Japan guide(ジャパニーズ・ピープル・ABC・ジャパン・ガイド)』。作者は、京都で20年以上続く地元情報月刊誌の元・編集部員。「すみません」や「はじめまして」などの基本フレーズに日本の若者言葉、銭湯のマナーに英語が話せそうな日本人の見分け方、喫茶店のたのしみ方といった知っておけば格段に日本を楽しめる情報が詰まっている。

———なんでまた日本を楽しむためのハウツー・ジンを作ろうと?

5年程前から、私の住む京都に外国からくる観光客の数が増えてきたんです。彼らに向けたビジネスをはじめたいと思ったのですが、当時の私は英語が話せず。まずは英語を学ぶためにポートランドの友人宅に1ヶ月間ホームステイさせてもらうことにしました。語学学校に通っていたわけではないので勉強法を模索していたら思いついたんです、ジンを作って地元の本屋で売ってもらうのはどうかな、って。

———英語の勉強を兼ねて、ジンを作ったわけですね。それにしても現地の本屋さんに置いてもらおうなんて、なかなかの度胸。

本屋やジン専門店にお願いしたところ、7軒で取り扱ってもらえました。

———おぉ、7件も!すごいです。

ポートランド滞在中、知らない人に話しかけられることが多々ありました。聞いてもないのに、おすすめのビールの醸造所やコーヒーショップを教えてくれたり(笑)。そんなことを、私も京都でしたいと思いました。日本、特に京都の人はシャイで英語に自信がない人が多いですが、みんな親切。だからそんな日本人のこと知ったうえで旅行に来てもらえれば、仲良くなれるのでは、と。旅行者が日本を好きになる、たのしい時間を過ごす、その手助けが少しでもできれば、と思います。

———かなり細かくまとまっていて、丁寧な栞(しおり)のよう。特定のシーンのことも書いてあったり。

たとえば、銭湯でのマナーですね。これは、実際に銭湯で困っている外国人の方がいたので、話しかけたことがきっかけなんです。
他にも日本人の行動や言動、好きなものや感覚、習性などのあるあるネタを入れました。日本の日常に潜んでいる文化を知ってもらいたい。

———ジンのなかには「ヤバい」や「ウケる」などの日本のスラング紹介も。2020年のベスト・オブ・スラングを決めるとしたら?

難しいですねぇ。「匂わせ」とかですか? 4月からレジ袋有料になった店が多いので「袋いいです」も覚えてもらったら便利かと思います。また、いいの思い付いたら連絡しますね。

***

深夜、ホテルのベッドでグリグリ。
母との二人旅をコミックにした
Travel Zine Tokyo Japan Comics


作った人:Lady Beaver(レディー・ビーバー)


Image via Lady Beaver

2018年の夏、母とともに約2週間の日本旅行。東京、白川郷、松本、高山、金沢 、京都、大阪。訪れた各地でポストカードを購入し、裏面にその日の思い出をコミックとして記録。『Travel Zine Tokyo Japan Comics(トラベル・ジン・トウキョウ・ジャパン・コミック)』は、アングラ感漂うシュールなタッチのイラストと、吹き出しいっぱいの台詞で仕上げた旅ジン。

———なんでまたポストカード裏にコミックを描いたんでしょう。

ママがこのアイデアを提案してくれたんだ。毎晩ホテルの部屋で、グリグリと描いてた。まずは、その日に撮った写真を見ながら、スケッチブックに1日の出来事を書き出す。で、まとまったらポストカードに下書きして、ペン入れ。コミックを描きながら、こんなことやあんなことがあったねってママと話すんだけど、ママったらいつも先に寝ちゃて。

———旅先ではいつもポストカード買う派?

旅先や美術館でポストカードを見かけたら、基本買う! ポストカードを見ると、訪れた先での記憶が蘇ってくるじゃない? その裏面にその土地での出来事をコミックとして残すことで、より強く記憶に刻まれる。コミックを描くことで、そのときの出来事だけじゃなく、どんな感情を抱いていたかも鮮明に思い出せるしね。

———なかでも思い出深いポストカードコミックはどれかな?

6月15日に行った高山市で描いたコミック。木版画のポストカードに、飛騨高山レトロミュージアムで古いおもちゃを見つけたことを描いたんだ。

———イラストの表情がシュール。アングラコミック感満載のタッチで、すごくいい。日本の漫画も好きでしょ?

漫画は大学生のときから大好きで、特に手塚治虫の作品のストーリー性には惚れ込んだ。伊藤潤二の『ギョ』や『うずまき』、大友克洋の『AKIRA』、梅津かずおの『漂流教室』とか、ホラー漫画をよく読むんだ。あとね…(まだまだ続く)

———日本は満喫できた?

東京には度肝を抜かれた。いろんなアートやカルチャーが詰まってる! ハリネズミカフェもあるし、各企業に可愛らしいマスコットキャラクターが存在する。お寺にまでいたし!ビジネスの場にああいったマスコットキャラクターがあるのは癒しだから、ぜひ全世界で取り入れてもらいたい。

———(お寺のマスコットキャラクターとは、せんとくんか?)

Eye Catch Image via Irene
Text by Ayano Mori
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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