編集部が選ぶ今月のZINE3冊。テーマは〈キライ〉電話、レーズン、ビキニ…。みんなが好きでも、わたしはキライ!

うっかり菓子パンに入っているのを口にしてしまったことがある。そんときはホラー映画の恐怖シーンみたいな衝撃が走った。レーズン。
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昨年公開された青春スケート映画『Mid90s(ミッドナインティーズ)』。初監督を務めた俳優のジョナ・ヒルは、公開に合わせ最強インディーズ映画会社「A24」とタッグを組み、ジン『インナー・チルドレン』を出版。プロスケートボーダーやラッパーなど親交の深い12人が経験した、10代ならではの甘酸っぱい青春期を綴った。セレブだって好んで作るジン。世界一敷居の低い文芸で、ルールが存在しない世界一自由な文芸。今月紹介するのは、各々のキライなものについてを綴じた3冊。3人の作り手とも、ジンを作ったこと、込めた想いとか日々の気持ちとか、そんなことをちょっとだけ話しつつ。

***

「話すネタ尽きたらどうするの」
電話が大キライ。『Making Phone Calls

Kate


Image via Kate McDonough

かけるのも、かかってくるのも苦手な人は少なくないんじゃかいかな。電話。家族への電話も緊張するという、極度の“電話恐怖症女子”がつくったジンが『Making Phone Calls(メイキング・フォーンコールズ)』。電話に対する彼女の「キライ」を正直に綴るイラストと手書きの言葉が続いていく。「電話するなら、何を言いたいかをまず書いて用意して、練習しなくちゃ」って。

———おばあちゃんに「誕生日おめでとう」って伝えるだけでも、なかなか発信ボタンを押せないんだってね。

私にとっては一大事。パッとボタンを押してササっと話せるもんじゃない。家族や友人に電話するときだってそう。みんな、そんな私にイライラしてると思う。

———そうなんだ。それを数ページのイラストに綴ったんだね。

そう、なんで電話をかけることがそんなに難しいのかをみんなに知ってもらうために、このジンを作ったの。私が電話かけなくても、怒らないでね、って。

———電話をかけることの、何がそんなに怖いの?

バカなこと言っちゃわないかとか、話のネタが尽きたらどうしようとか。考えただけで心臓バクバク、手汗ビチャビチャ、ついでに頭クラクラ。緊張で息もうまくできない。相手の表情が見えないから、切るタイミングだってわからないし。



———電話をかけるまでの順序を教えて。

まず電話するかどうかよく考えて、心を決める。で、決心がついたらまず紙に話す内容を書き出し、ひたすら声に出して練習。たまにひと休憩入れて「自分はできる」と自己催眠をかけてみたり。

———それ、毎回?

そう。うまくいけば電話できるけど、調子が悪ければ翌日に持ち越し。

———そっか。ケイトに用事があるときは、メールが一番手っ取り早そうだね。



悪魔の豆、レーズン。
憎しみを丁寧に込めて綴る『I HATE RAISINS

Mnstark


Image via Mnstark

味? 見た目? それとも触感? 好き嫌いがハッキリ別れる食材、レーズン。「レーズン 嫌い」でググれば、嫌われ意見がわんさかヒット。これは「レーズンは悪魔だ」と罵る男が、嫌いな理由をイラストとともに20ページに渡ってこれでもかという想いを込めて綴っている。ホラー調のイラストに並々ならぬ想いが滲みますね…タイトルも豪速球を直球に『I HATE RAISINS(アイ・ヘイト・レーズン)』。

———瀕死状態のゾンビが新鮮なぶどうを抱えていたり、悪魔みたいな顔のレーズンが悶えていたり。なんか、デスボイスが聞こえてきそうなジンですね…。

レーズンが憎くて仕方ないんだ。ガキの頃からずっと嫌い。レーズンを食べるくらいなら、死んだほうがマシ。

———なんでレーズンを悪魔と呼ぶの?

もし地獄ってのが本当にあるんなら、その道はレーズンで舗装されているに違いないからな。

———皮肉にも、レーズンの主産地カリフォルニアが出身ですね。うっかり食べちゃったこと、あります?

ずっと避けて生きてきたけど、うっかり菓子パンに入っているのを口にしてしまったことがある。ホラー映画の恐怖シーンみたいな衝撃が走ったよ。


———ジンに出てくる「I Hate Raisins movement(レーズン嫌いだ運動)」って何?

レーズンへの嫌悪感を示したアート作品を世に発信すること。全世界のレーズン嫌いや自分の子どもたちが、ビビることなくパンや焼き菓子を食べられるよう、平和な世界を作るための運動だ。

———ジンの表紙がプリントされたTシャツも作ったんですね!もしもレーズンを食べなければならない状況になったらどうします?

もしどうしても食わせたいなら、俺の口に無理やりぶち込むことだね。そうでもしねぇと絶対に食わない。


キャンプ、ビキニのパンツ、ジョン・レノン
みんなが好きでもわたしは嫌い『I Hate Fun

Norma


Images by Norma Krautmeyer

みんなが好きでもわたしはダメ! 恐怖症とまではいかないけど「私はキライ、苦手、無理」を言葉にしたのが『I Hate Fun Zine(アイ・ヘイト・ファン)』。「これ好きなんだよね」って言われて「いや、私はキライだね、むしろ大キライだわ」とはなかなか言わないけど、数ページに込めるのは自由だよね。それにしても、この作者がキライなものって一般的には好まれそうなものばっかり。

———何でわざわざ苦手なものを集めたジンを?

文句を言いたいんじゃなくて、別の視点もあるんだよってことを知って欲しくて。

———一般的に好まれているけどどうしても好きになれないもの。3つ教えて。

1、キャンプ。外でトイレしないといけないし、キャンプ飯も何だか汚いし。
2、ビキニ。お尻に食い込むから。
3、歯磨き粉。うがいしにくい。おかげで19歳まで歯磨き粉を使わなかったから、いま銀歯だらけ。

———キャンプとパンツは何となくわかる。他には?

4、英国バンド、ザ・キュアーのロバート・スミスの声。まわりにもファン多いけど、私はダメ。
5、ジェットコースター。吐いちゃう。
6、ジョン・レノン。オノ・ヨーコに暴力を振るっていたって聞いたから。大ファンだったわけじゃないけど、それを知ってから彼の歌を聞けない。

———じゃあ逆に、ノーマさんが好きなものは?

コーヒーではなくお茶派、パンクロックミュージシャンのビリー・アイドル、本や文房具と一緒に寝ること。苦手とされがちだけど私は好き、ってものをまとめた続編『You Like What(ユー・ライク・ワット)』も作ったよ。

———みんなが楽しんでいるものを嫌うって、どんな感じ?

好きなことが違うって当然だし、私には合わないってだけ、かな。



Eye Catch Image via Mnstark
Text by HEAPS, editorial assistant: Ayano Mori
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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