「Sushi」に「Ramen」に「Tempra」。「世界中で起こる空前の日本食ブーム!」なんてのはもう耳ダコだ。
日本食が浸透しようが、「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されようが、拭い去ることができない「Sushi」が持つ絶対的権力。未だに我々日本人の朝昼晩は「Sushi」だと思っている人もいる。そりゃそうだ。日本人が思うアメリカンフードといえば、ハンバーガーにピザだもん。
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「私の家族も、日本人は四六時中スシを食べていると思っていたわ」。そう回想するアメリカ人のPia Peterson(ピア・ピーターソン)が作ったのが、『one japanese kitchen(ワン・ジャパニーズ・キッチン)』。1年間山形県に住んでいた彼女が現地で食べたもの・作ったものをまとめた日本食レシピジンだ。
気になるのはそのレシピの顔ぶれ。外国人も大好きな「Tempra」も並んでいれば、日本人の食卓でも登場頻度が低い「ニシンそば」、“これぞ日本の朝ごはん”を象徴するご飯に焼き鮭、味噌汁、漬物なども。我々にとって当たり前の家庭料理も「Sushi」しか知らない外国人にとっては驚きだろう。
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しかもここに並ぶレシピは、実際に彼女が台所で調理したもののみ。友人やご近所さんが彼女の台所に駆けつけ、和食の作り方を教えてくれたのだそう。その賜物だろうか、「干し柿」のレシピも載っているらしい。
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1年の日本滞在で、ピアは何もただ日本文化や和食に触れていたのではない。リアルな食卓を通じて「異国の暮らしに溶け込んだ」ということだ。その経験は、高級寿司を食べることよりも、「プライスレス」なのは言うまでもない。
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All images via Pia Peterson
Text by Shimpei Nakagawa