その根は途方もないほどに深い。未だなおアメリカにはびこり、終わることのない有色人種への差別問題。
中でも有色人種に対するアメリカ警官の暴力はとどまるところを知らず、今年だけでも123人の黒人が警官に射殺、全米各地で起きる抗議デモ「Black Lives Matter(ブラック・ライブズ・マター:黒人の命も大事)」が社会現象となり、依然として人種間の緊張がやむことはない。
『DON’T LOOK AWAY – Portraits of Victims of Police Murder(ドント・ルック・アウェイ- ポートレイツ・オブ・ヴィクティムズ・オブ・ポリス・マーダー)』と名付けられたこのジンは、これまで警官の不当な処罰によって犠牲となった者のイラストポートレイトとストーリーを集めたもの。
作者は、イラストレーターのSeth Goodkind(セス・グッドカインド)。彼は、肌の白い白人だ。
「その昔、奴隷制度が敷かれていた過去を持つアメリカ。しかし、これまでその歴史や人種差別問題は公で誠実に討論されることはなかった。このジンを通して、アメリカに存在する謂れなき人種差別に向き合ってもらうのと同時に、議論の場を作りたかったんだ」と語る。
ジンを作るきっかけとなったのは、昨年テキサス州で起きた黒人女性Sandra Bland(サンドラ・ブランド)の事件。彼女は白人警官による過剰取り締まりを受けた後、留置場で謎の死を遂げた。
「この事件を知って、怒りを覚えたよ。その怒りを表現するには彼女の似顔絵を書くしか思いつかなくて。白人として、この人種問題に声をあげなければと思ったんだ」
たった一つのジンでは何も変わらないかもしれない。しかし人種問題に対し、全人種各々が自覚を持ち向き合うことなしには、この根源にはびこる権力と差別は何も変わらないままなのだ。「DON’T LOOK AWAY(目を背けるな)」
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All images via Seth Goodkind
Text by Shimpei Nakagawa