韓国ソウルで遂行中。世界初「ロボットがつくるロボット博物館」設計〜建設をお任せ。建設現場の“ロボット作業員”たち

韓国にて遂行中のプロジェクト “ロボットがつくるロボット科学博物館”。「現場で建設作業をするロボットたちの姿が、博物館の最初の展示となります」。
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2020年、韓国はソウルにて、ロボット科学博物館が着工されるという。また新たな名所ができるか、くらいに思って素通りしてはいけない。なんせ、この博物館の建設作業員は「ロボット」なのだから。

ドローンが「安全確保」。世界初、ロボットが博物館をつくる?

 サンフランシスコ発の全自動でハンバーガーを作ってくれるロボットに、フランス発の人肌にタトゥーを掘るロボット。近年、「そんなことまでしてくれるんか」と耳を疑ってしまうほど、ロボットの日常での活躍が目覚ましい。そんな渦中にまたまた出ましたよ、とんでもないやつが。2020年には韓国ソウルに、世界初のロボット科学博物館とやらが登場するらしい。さらにその科学博物館、ロボットによって建てられる。“博物館を建てるロボット”による“ロボット科学博物館”のお出ましだ。建設は部分的に、3Dプリンターやドローンなどのハイテク機器を駆使し、設計から製造、建設、館内サービスまでをロボットが担当するという。

 デザイン・開発をするのは、トルコ拠点の国際的な建築事務所「ミライク・アルティニシック・アーキテクト(以下MAA)」だ。科学技術への関心を高めることを目的としたソウル市のコンペで見事優勝(ちなみに彼らの最新作は、トルコ・イスタンブールにそびえる369メートルの近未来的なテレビ塔)。
 ロボットが作り上げる博物館の完成予想図がこれだ。見た目は、滑らかな卵型で角がなく、いまどきのモダンミュージアムっぽい。地下1階、地上4階建てで、館内では人工知能にバーチャル・リアリティ、拡張現実やホログラフィー技術をテーマにした展覧会が開催される予定だ。


 気になるロボットの作業工程だが、彼らは3D印刷でパーツを作り、組み立てや溶接、研磨などを担う。ほかにもドローンがパトロールや安全確保、データのマッピングや現場での車両管理などの連携を取って、建設をサポートするのだとか。「つまり、このロボット科学博物館の“最初の展示”が、“現場で建設作業をするロボット”ということになります」とMAA。2022年に公式オープンを予定している。

建築ロボット、「建設現場の高齢化」に一役買う?

「世界初ロボットが建設するロボットミュージアム」というキャッチーさが先行しがちだが、建設にロボットを活用するというアイデアは決して新しいものではない。昨年、業界大手の清水建設は10億円超を投じ、資材搬送を行う「Robo-Carrier(ロボ・キャリア)」、鉄骨柱を溶接する「Robo-Welder(ロボ・ウェルダー)」、天井ボード貼りや床材を施工する「Robo-Buddy(ロボ・バディー)」のロボット3種類を発表。大成建設も千葉工業大学と共同で、自動で鉄筋を結束する「T-iROBO Revar(T-iロボ・リバー)」を開発。鉄筋工事のうち、2割を占める鉄筋結束作業を自動化できるという。

 建設作業を担うロボットが次々と出現している背景にあるのは、作業の効率化にくわえて、深刻化する「建設業界の人手不足」だろう。特に若年層には敬遠されがちで、日本建設業連合会によれば「55歳以上の割合は約3分の1を占める一方、10代から20代の割合は約1割」。理由は、キツい・汚い・危険の3Kの印象が強く、休日が少ないこと。また長時間労働の割に低賃金である場合や残業体質な労働環境があげられ、離職率も高い。熟練職人の高齢化も進み、ますます建設業界には若手の力が必要になる。
 さらに、建設ラッシュのアラブ首長国連邦などの国では、労働力をアウトソーシングするケースが多く、多くの外国人労働者の劣悪な労働環境や搾取などの問題も浮き彫りとなっている。


 建設の自動化が進んだとしても職人にしかできない匠の技など、もちろん人間が担う作業もなくならない。しかし、高齢化が進む現場、不当な労働力が搾取される現場で配属されるロボット建設作業員の役割は大きい。危険な作業や単調で時間のかかる厄介な作業をロボットがやってくれるとしたら、現場の負担を軽減でき、職人たちには彼らにしかできない仕事に集中してもらえる。それに、テクノロジーに強い若者がロボットやドローンを扱うエンジニアとして建築業で活躍できるのではないか。

 人間の代わりに建設の“めんどう”や“危険”を買って出てくれるロボット建築作業員は、3年後、韓国にて一足先に実現しそうだ。近い未来、建設現場の朝礼でラジオ体操をするのは、人間だけではないかもしれない。

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All images via MELIKE ALTINISIK ARCHITECTS
Text by Yu Takamichi
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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