長髪男子クラブ「ザ・ロングヘアーズ」ご飯や目に入ったりするけどやっぱ好き。男のロン毛ケア結び方髪ゴムetc

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突然だが、髪の長い男の人は好きですか。

ヘヴィメタル系お兄さん、サーファー、イエス・キリスト、アーティスト、相撲レスラー、落ち武者、ターザン、みうらじゅん。髪の長い男たちはいつの時代も一定数存在してきたが、やはり男のマジョリティといったら短髪だ。我々の知らないところで、彼ら男のロン毛(すでに死語かもしれないがあえて使おう)たちはさまざまな悩みを抱えているらしい。その“ヘアマイノリティ”ともいうべき男たちに手を差し伸べたふたりのロン毛がいる。

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どのロン毛にも悩みがあった

 女性用のヘアケア商品が立ち並ぶ棚の前で、恥ずかしそうに女物のシャンプーを選ぶロン毛。母さんから「あんた、髪切りなさいよ。鬱陶しいわね!」と叱咤され、縮みあがるロン毛。「今度こそもっと髪を伸ばしてやるぜ!」と決心するも、上司の目が気になり決意も半ば床屋に足が向かうロン毛。

 どのロン毛にもロン毛なりの悩みがあり、社会から押された「ロン毛=ヒッピー、世捨て人、プロフェッショナルじゃない」の烙印に肩身が狭い。女性や短髪の男性が考えてもみなかった彼らの思いに対し、「ロン毛を擁護(advocate)し、教育(educate)し、祝福(celebrate)しよう」をミッションに掲げるのが「ザ・ロングヘアーズ(The Longhairs)」。2014年に、カリフォルニアに住むブロンドのロン毛とブルネットのロン毛が結成したロン毛コミュニティだ。彼らは、いままでになかったロン毛男専用のヘアプロダクトを開発、「ロン毛の結び方」「髪ゴムに関する質問」「ロン毛のための朝のルーティン」などをビデオやブログポストで共有。自分の長髪をどうケアしたらいいかわからない世のロン毛たちにアドバイスや自信をあたえてきた。

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ザ・ロングヘアーズ。

 そんなロン毛のエキスパートたちに聞きたい、男のロン毛ライフってどうなの? ヘアケアって具体的になにをする? ロン毛のメリットってなに? ブルネットの方(リンゼイ)が、ザ・カリフォルニアの陽気な兄ちゃんのテンションで答えてくれた。

HEAPS(以下、H):見事に綺麗な髪の毛してますね。どれくらい伸ばしているの?

Lindsay(以下、L):7年くらいだよ。何度か肩のところまで切って、また伸ばすの繰り返し。見て、もう胸の下まであるね。

H:なんで伸ばそうと? 

L:うーん、ただ髪を伸ばしていただけだよ。ビジネスパートナー(ブロンドの方)もロン毛だったし、ロン毛の友だちも周りにいた。ミュージシャンやスポーツガイ、サーファーとかね。20代後半とか30代前半から伸ばしはじめる人が多いんだよね。ずっと長髪にしたかったけど、まわりからの反対や仕事の関係でダメ、とか。で、人生もだいぶ落ち着いてきて「さて、伸ばすかー」って感じ。

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取材に応じてくれたリンゼイ(ブルネットの方)。

H:確かにロン毛にまつわるステレオタイプって強いらしいね。怠け者、ヒッピー、変人、世捨て人、フェミニン、無職とか…。

L:そうそうそう!!ロン毛あるある「母ちゃんやじいちゃんから投げかけられる『いつ髪を切るんだい?』」。家族からのプレッシャーって結構大きいかな。

それに「就職しなよ?」とかね。いつからか、髪が長い=アンプロフェッショナルって思われるようになったよね。でも昔を振り返ってみるとさ、どの国にもどの歴史上のお話にもロン毛っていたじゃん?で、たいてい激イカしたヒーローっていう。

H:ロングヘアーズのウェブサイトにも書いてあるね。チンギス・ハンにルイ14世、ウィリアム・ウォレス(映画『ブレイブハート』の主人公でスコットランドの騎士)、スティーブン・セガール…。

L:ジョージ・ワシントンにジーザス…。ホワイトカラーの大企業文化が「プロはクリーンカットでシャープな見た目に」を持ち込んだんだよね

でも最近は、ちょっとずつ変わってきていると思う。みんなシェアオフィスとか自宅で遠隔で仕事をするようになったじゃん? だから前みたく「お前の髪はなんだ、切れ! 剃れ!」なんて怒鳴るボスとも顔を合わせなくてもいい。「髪が長くたって、社会人としてまっとうでイケてる仕事できますよ」、一見するとポットヘッド(マリファナ常用者)と思われちゃうかもしれないけど「ぼくはこんな人間でこんな能力があるんです」って言える時代。決して髪に自分のイメージをコントロールされるなよって。

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H:働き方も選べる現代はロン毛全盛期ともいえるかも。ところで、ロン毛男に対する女の子からの評価ってどんな感じ?

L:だいたいポジティブな意見ばっかりだよ。よくあるコメントは「髪、すごいきれいだね!」(笑)。俺たちはドライヤーで乾かさないし、ヘアアイロンも使わないし、染めもしない。なにもしていないから髪が健康なんだ。

H:そんな自慢の髪ですが、男のロングヘアケアは大変だと。

L:うん。たとえばさ、ロングヘアーズをはじめる前、髪の結び方がわからないときユーチューブで「ロン毛男のための髪の結び方」って検索しても、変な動画しかなかったりで。

またあるときヘアプロダクトを買いに行っても、女性コーナーでバツが悪そうに突っ立ってるしかないんだ。どれを選んだらいいかなんて教えてくれるブラザーは残念ながらいない。仕方なく女性もののシャンプーと、黒か茶色しか選択肢のないヘアゴムをカゴに入れるんだ。

H:それで、もっとお洒落なヘアゴムが欲しいぜーって。

L:そう、男のためのヘアゴムないねってなった。「ヘイ、メーン! かっこいいの欲しくない?」って。ロケットとか、かっこいい柄のバンダナとかさ。男のロン毛専用商品のニーズを感じて、ザ・ロングヘアーズでヘアゴムをつくったわけ。

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H:いろいろ種類ある! 女の私でも欲しいくらいだ。このヘヴィメタルのとか。他にもサイケ柄、お魚柄、チェック、迷彩柄、稲妻、炎…見ているだけでたのしい。

L:ゴムの質にもこだわったよ。綿の肌触りで伸縮自在。そして一般的なゴムのような丸い断面ではなくて、フラットな形状。平たいゴムの方が結んだ跡がつきにくいし、髪をほどきやすいんだよね。というのも、ロン毛男の悩みって「ゴムのせいで変な跡がついちゃって帽子をかぶっているみたいになっちまったぜ」とか「櫛でとかすと50本ぐらい髪が抜けるぜ」とかが多いんだ。そこで俺らが「わかったよ、悩みを解決してやるからさ」。髪に超いいアルガン油100パーセントのヘアオイル(男らしい匂いだぜ)もあるし、現在はシャンプーとコンディショナー、櫛を開発中。

H:ココナッツオイルも髪にいいと聞くね。このオイルはどうやって使えばいいの?

L:何滴か手のひらに落としてシャワー後の髪が濡れている状態で髪に馴染ませるんだ。手ぐしで髪にオイルをしみこませたら、櫛でとかす。

H:シャンプーは毎日だよね?

L:いや! 髪は週2回しか洗わなくていい。シャンプーしない日は、てっぺんをちょっと水で濡らして、髪が油っぽくなるのを防ぐ。毎日シャンプーすると髪の毛が乾燥しすぎてしまうから、毎日髪をとかすだけでいいよ。

H:(シャンプー週2って少なくないか?)

L:あとはね、髪が長くなると毛先が乾燥したり結んだときにこんがらがったりして、どうしても枝毛ができるから、半年にいっぺんは毛先を整える。切るっつったって10センチとかじゃないよ? 1センチくらいの話。

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H:これは女の子の髪にもいえることだね。「これはやっちゃいけない」っていう行為は?

L:無茶苦茶に髪をとかすこと! 櫛が通らないからって力任せで引っ張ったらダメ。シャンプーだけでコンディショナーをしないこともよくない。あとはあれ、ずっと髪をしばっていること。頭皮にプレッシャーがかかるし絡まってもくるから、ときどきは髪をおろして息をさせてあげよう。絡まった毛を「なんだこの毛? 引っこ抜いちまえっ」っていうやついるけど、これ一番髪へのダメージになるから禁止行為。髪へのケアは時間をかけてゆっくり、忍耐強くいこうぜ。

H:引っこ抜く(笑)。これだけのロン毛ケアテクニック、どこで教わったの?

L:仲良い友だちにプロのヘアスタイリストがいるからアドバイスもらったりするけど、リサーチや経験からも学んでいるよ。

H:じゃあ、ロン毛初心者のときは髪の毛、引っこ抜いちゃった?(笑)

L:伸ばしはじめのときは、あらゆるクレイジーなことをしたよ(笑)。2週間髪の毛洗わなかったり。1週間を過ぎたら、頭のてっぺんから油がジワーって。あれはもう経験したくないよ。

H:それはイヤだ(笑)。

L:女の人の大半って、3、4歳からお母さんに髪のとかし方、結び方、シャンプーリンスの仕方とかヘアケアのやり方を教えてもらって、10歳になるころには髪の毛のエキスパートになっているじゃん。でも男はもう少しあとから髪を伸ばしはじめるわけで、その前まではリンスインシャンプーに、究極は固形石鹸で髪を洗っていたんだからね(笑)。髪の洗い方、シャンプー&リンスの選び方、結び方、ケアの仕方をまったく知らないから、俺らがエデュケートしてあげている。

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H:ロン毛コミュニティにいる長髪には色々な髪質があると思うんだけど、そこらへんはどうアドバイスしている?

L:いい質問。いままではストレートヘアのためにアドバイスしてきたけど、最近確かにカーリーヘアガイたちが「よぅ、ワッツアップ。カーリーヘアのためのビデオどこだよ?」ってコメントもきているから、そろそろカーリーヘアライフを送ってきたコントリビューターを探さないと。

H:だそうです、カーリーヘアの読者諸君。ロン毛もさまざまだけど、みんなからよくある質問ってなに?

L:一番多い質問は、「髪を早く伸ばすにはどうしたらいいんだ?」。これは早く“気まずい期間(awkward phase)”を抜けだしたいという意味。

H:気まずい期間って…。

L:あぁ、これはね。髪を伸ばして12ヶ月から14ヶ月くらいの時期にロン毛が経験しなければいけない“受難の期間”なんだ。中途半端な長さの髪の毛が耳まわりを邪魔したり、変な毛がチョロンとおでこにかかったり。とにかく髪のせいで間抜けなルックスになっちゃう時期だ。だから、みんなこの時期をはやくぶっ飛ばして、祝ロン毛パーティーを開きたい。

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View More: http://brogenjessup.pass.us/the-longhairs

H:で、髪を早く伸ばす裏技があったりする?

L:栄養に気をつけたりすればちょっとは伸びも早くなるかもしれないけど、朝起きたら「はいロン毛」ってはならないわけで。ちなみに、髪は、体に不調があるとすぐに抜けたりするから健康のバロメーター、コーラみたいな炭酸ばっかりで水を飲まなかったら、髪の毛は抜けるよ。

まあ、髪はすぐに伸びないわけだから、中途半端な髪型の時期の一番手取り早い解決策は、帽子だよ。6ヶ月間ずっと帽子をかぶる。俺たち帽子も売ってるよ。髪の“保育器(インキュベーター)”って呼んでるんだけど(笑)。でも「いや、オフィス勤務とかで帽子を四六時中かぶっているのムリ」って人は、髪型で遊んでみよう。ポマードで撫でつけてもいいし、ジェルを駆使してもいい。まあ結局のところは“忍耐”だね。ロン毛にするって決意を固めたなら、そのゴールに向かって突き進むのみ。髪が肩までついたら、ロン毛クラブへようこそ(笑)。

H:それじゃあ、自分の長い髪への愛情もひとしお。

L:自分のロン毛大好きだよ! そりゃ、食べてるときにご飯のなかに入りこんだり、自転車乗ったときに、風でぶゎって目を覆ってきたりするけどさ。気まずい期間という困難を一緒に乗り越えてきた仲間だからね。

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H:保育器で育てて、苦難も乗り越えて成長させる。もはや自分の子どもみたいな感覚…。ロン毛の美しさってなんだろう?

L:うーん、やっぱり短髪にはできないことができることじゃない? 自分のスタイルを開拓できるというか。コーンローにしてみたり、サムライみたいに上の部分だけとって結んだり。多様性と柔軟性で冒険して、ユニークなアイデンティティをつくりあげれるからさ。それに、長髪をメンテナンスすることで女性へのリスペクトも生まれるというか。ブローに1時間かける労力とかも含めて。

H:ロン毛であることには、想像を超えた苦悩と歓びがありました。

L:どの国に行ったって、どんな言語を喋っていたって、どんなルールが敷かれていたって、そこには必ずロン毛がいる。俺たちは、すべての長髪男子に「ヘイ、ここには君たちの居場所があるよ」って言いたい。道の向こう側からロン毛が来たら「(ロン毛であることの苦悩と喜びが)わかるよ、ブラザー。わかるよ。That’s my guy(俺の仲間だぜ)」って、自然とお互いにうなずく。これが暗黙の了解になっているんだ(笑)。

Interview with Lindsay Barto aka El Moreno of The Longhairs

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All images via The Longhairs
Text by Risa Akita
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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