自身のデビューアルバムも展示(インスタレーションとして)。Wolfgang Tillmans、目に見えるものを超えた知覚

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オーストリア、ウィーン。中世ヨーロッパの面影が残る気品ある街並みに、突如として現れるダークグレーのブロックのような建物は、近代美術館の「Museum moderner Kunst Stiftung Ludwig Wien(mumok)」。この無機質な直方体のなかでは、クラシックモダニズムやポップアートから、現代映画やメディアアートまでの数々にフォーカスした作品コレクションが鮮やかに展開されている。今回は、ドイツ出身のアーティストWolfgang Tillmans(ヴォルフガング・ティルマンス)による現在開催中の個展『Sound is Liquid』をのぞいてみよう。

ティルマンスは1990年代初頭からスタートしたアーティストとしてのキャリアを通して、私たちが世界といま生きる社会をどのように見ているのかを探究してきた。これらの問いの答えを探すようにカメラを向けてきたのは、人物や人の体、風景、建築物や移りかわる空の様子などさまざま。写真にとどまらず、インスタレーションや映像作品、音楽など多彩なアウトプットを試みることで、「目に見えるもの」のさらに先を行く知覚の可能性を切りひらいてきた。作品には、他者と触れあい、コミュニティをつくり、自分の内面と対峙することで、凝りかたまったこの社会をしなやかなものにしていこうという意志が表れている。

今回の展示では、1990年代のポップカルチャー界隈で制作された初期の写真作品に加え、21世紀初頭のグローバル化・デジタル化した時代を映しだした作品や、パンデミックさなかに撮影された写真作品などが並ぶ。また、5大陸37の国々の建築物をモチーフにしたビデオインスタレーション『Book for Architects』や、近年の音楽録音作品や映像、実験的なエレクトロニックサウンドが響くティルマンスのデビューアルバム『Moon in Earthlight』も、サウンドと映像を掛けあわせたインスタレーションとして展示される。

2020年、パンデミックがアーティスト業界に大きな打撃をもたらした際には、世界各国のアーティスト50人がデザインしたポスターを通して、独立系施設やアート団体を支援するプロジェクト2020Solidarityを主導したティルマンス。1990年代、2000年、2010年、そして2020年代と10年ごとに目が回るほどのスピードで変化する社会、そしてもっとすぐ目の前で起こる日々の事象をじつに繊細な感覚でもって観察し、その知覚を作品として自在に再創造・昇華させてきた。これらの作品はきっと、私たち人間の根底に眠る認知や知覚の意識に揺さぶりをかける。会期は8/28まで。


Wolfgang Tillmans
end of winter (a), 2005
Courtesy of Galerie Buchholz, Maureen Paley, London, David Zwirner, New York


Wolfgang Tillmans
suit, 1997
Courtesy of Galerie Buchholz, Maureen Paley, London, David Zwirner, New York


Wolfgang Tillmans
corridor – after party, 1992
Courtesy of Galerie Buchholz, Maureen Paley, London, David Zwirner, New York


Wolfgang Tillmans
Omen, 1991
Courtesy of Galerie Buchholz, Maureen Paley, London, David Zwirner, New York


Ausstellungsansichten / Exhibition views
Wolfgang Tillmans
Schall ist flüssig / Sound is Liquid
2021-2022
Photo: Georg Petermichl, © mumok
Courtesy of Galerie Buchholz, Maureen Paley, London, David Zwirner, New York


Ausstellungsansichten / Exhibition views
Wolfgang Tillmans
Schall ist flüssig / Sound is Liquid
2021-2022
Photo: Georg Petermichl, © mumok
Courtesy of Galerie Buchholz, Maureen Paley, London, David Zwirner, New York


Ausstellungsansichten / Exhibition views
Wolfgang Tillmans
Schall ist flüssig / Sound is Liquid
2021-2022
Photo: Georg Petermichl, © mumok
Courtesy of Galerie Buchholz, Maureen Paley, London, David Zwirner, New York


Ausstellungsansichten / Exhibition views
Wolfgang Tillmans
Schall ist flüssig / Sound is Liquid
2021-2022
Photo: Georg Petermichl, © mumok
Courtesy of Galerie Buchholz, Maureen Paley, London, David Zwirner, New York


Ausstellungsansichten / Exhibition views
Wolfgang Tillmans
Schall ist flüssig / Sound is Liquid
2021-2022
Photo: Georg Petermichl, © mumok
Courtesy of Galerie Buchholz, Maureen Paley, London, David Zwirner, New York


ヴォルフガング・ティルマンス本人。
Porträt / Portrait: Wolfgang Tillmans in der Ausstellung / at the exhibition
Schall ist flüssig / Sound is Liquid
Photo: Georg Petermichl, © mumok
Courtesy of Galerie Buchholz, Maureen Paley, London, David Zwirner, New York

—————
Text by Iori Inohara
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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