今週のSUNDAY ART SCROLLはドイツから。首都・ベルリンがアンダーグラウンドシーンにおけるテクノ音楽の聖地として崇められているのはいわずと知れた話だが、西の街、ドルトムントにはテクノロジーやAIに関連する展示を数多く開催しているアートセンター「HMKV(Hartware MedienKunstVerein)」がある。今回は、同館で開催中の『Technoshamanism』を紹介。シャーマニズム×テクノロジーという、一見結びつかない要素同士が、みごとに融合するアプローチが見ものの展示だ。
「テクノシャーマニズム」の下敷きにあるのは、ブラジルで生まれた「tecnoxamanismo(テクノシャーマニズモ)」というムーブメント。2000年以降にフリーのソフトウェアやDIY文化が興隆したなかで生まれ、先住民族の活動家や科学者、パーマカルチャー(サステナブルな農業をもとにサステナブルな文化を築くデザイン科学概念)の支援者などに支持された。シャーマニズム*こそが、祖先から伝わる自然界の物質的・非物質的本質に関する深遠な知識から、浄化・リサイクル・修復・癒しのプロセスにいたるまで、その複雑な宇宙世界を貫く技術の集積である、という考えだ。電気技術などはエクスタシー体験の一手法であると同時に、シャーマニズムを別の言語、別の次元へとさらに拡張させうるともいう。
*シャーマニズム:神や霊魂と交流・意思疎通することができ、それをもとに託宣や予言、病気の治癒などをおこなう宗教的職能者(=シャーマン)を中心とした信仰のこと。
ベルリン在住のアーティスト、マリーチェン・ダンツ(Mariechen Danz)はインスタレーション作品で、電源ケーブルなどのデバイスを使用している。現代の情報化社会を反映したもので、回路基板に刻まれているのは異なる時代の各世界の天気など、“現在”を超越したもの。これらのデジタルデータを人間に“転送”し、人体の器官と小宇宙をつなぐことで、肉体をその「世界観」に再統合するというメッセージが込められている。また、インド人アーティスト、サヘイ・レイハー(Sahej Rahal)は、シャーマンがAIプログラムと会話をする世界をスクリーン上に表現。人工知能とシャーマンの存在、そしてヒンドゥー教神話の融合を試みている。
資本主義や労働搾取がその存在感を見せている現代。本展に参加しているアーティストたちは、人間同士に限らない繋がりを探求する「テクノシャーマニズム」の実践を通じて、社会の分断ではなく、新しい結束の方法や可能性を模索している。人々が「神」や「霊」「テクノロジー」と向かいあう姿勢は、この一分一秒で、そして私たちの向かう未来でどのように変容していくのだろうか。
In the exhibition “Technoshamanism”, HMKV at the Dortmunder U, 09 October 2021 – 06 March 2022
In the exhibition “Technoshamanism”, HMKV at the Dortmunder U, 09 October 2021 – 06 March 2022.
In the exhibition “Technoshamanism”, HMKV at the Dortmunder U, 09 October 2021 – 06 March 2022.
In the exhibition “Technoshamanism”, HMKV at the Dortmunder U, 09 October 2021 – 06 March 2022.
In the exhibition “Technoshamanism”, HMKV at the Dortmunder U, 09 October 2021 – 06 March 2022.
In the exhibition “Technoshamanism”, HMKV at the Dortmunder U, 09 October 2021 – 06 March 2022.
Lucile Olympe Haute, “Cyberwitches Ritual”, 2017. Video still (detail). Model: Lucile Olympe Haute. Courtesy the artist.
In the exhibition “Technoshamanism”, HMKV at the Dortmunder U, 09 October 2021 – 06 March 2022.
Lex Rütten/ Jana Kerima Stolzer, “Pawāaraibu – filling the vacuum, Episode 01 – pumps n‘ lungs”, video still, 2020. Courtesy the artists.
In the exhibition “Technoshamanism”, HMKV at the Dortmunder U, 09 October 2021 – 06 March 2022.
Photo: Dominik Bindl. Courtesy the artists.
In the exhibition “Technoshamanism”, HMKV at the Dortmunder U, 09 October 2021 – 06 March 2022.
In the exhibition “Technoshamanism”, HMKV at the Dortmunder U, 09 October 2021 – 06 March 2022.
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Text by Iori Inohara
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine