パリ、7区。セーヌ川の辺、エッフェル塔を拝めるちょっと特別な場所にあるのは、Musée du quai Branly(ケ・ブランリ美術館)。今週紹介するのは、そんな同館で開催された、アジアにおける「闘い」の文化にフォーカスした展示『Ultime Combat Arts of Fighting in Asia』。
「アジアの闘い」と聞いて思いうかぶのは、空手、カンフー、少林寺拳法、剣術…。これらの発展の鍵となるのは、その精神だ。たとえば、日本の武道は仏教の「禅」の教えを受けた侍の戦術に起源を持つように。アジアのマーシャルアーツ(格闘技)は軍事的な知識を利用しながらも、人間の身体、自然、世界を表現するとても古い表現方法として伝わってきた。古典芸能からはじまり、現代ではポップカルチャーでもアニメ、漫画のヒーローたちがさまざまなマーシャルアーツを実践してきた。本展では、アジアの地で発展したマーシャルアーツの歴史やその精神に迫るべく、日本、中国、インドの文化における闘いの文化を、それにまつわる映画や300点以上もの古今の作品を通して伝えている。
中国武術を色濃く表現しているのは、俳優、ブルース・リーの映画作品。代表作『燃えよドラゴン』は世界中にカンフーブームをもたらした。ブルース・リー作品は、ジャッキー・チェンやサモ・ハン・キンポーらの俳優を輩出したほか、マーベル作品やアニメにも影響をあたえた。日本武術のセクションでは、侍の時代に使用されていた甲冑(かっちゅう)が多く展示されている。インドのセクションで印象的なのは、インドの神話に登場する神で、叙事詩『ラーマーヤナ』にも登場するハヌマーンを描く『Hanuman portant Râma』。アジアのマーシャルアーツというと、ひとくくりにされることもあるが、実はそれぞれを発展させた歴史的経緯や精神は多種多様なのだ。
アジアのマーシャルアーツは、その歴史的、精神的なおもしろさから、これまで世界のいたるところで注目されてきた。たとえば空手をテーマにした80年代の映画『ベスト・キッド』は、近年、続編のドラマシリーズ『コブラ会』がネットフリックスで人気を爆発させるなど、いまでもみんなの心をつかんでいる。『ベスト・キッド』の達人ミスター・ミヤギも、この展覧会が捧げるアジアのマーシャルアーツへの敬意にはニンマリだろう。

Affiche de l’exposition “Ultime combat”. Jusqu’au 16 janvier 2022.

Affiche de l’exposition “Ultime combat”. Jusqu’au 16 janvier 2022.









—————
Text by Ayumi Sugiura
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine