デザイン界や建築界に大きな影響を与えたドイツの「バウハウス」。ナチスの台頭により14年続いたのち閉鎖したものの、美しいデザインや優れた機能性を生み出し、世界にその名を馳せた造形学校だ。そんな伝説の学校が生まれたドイツにはもうひとつ、同じく「バウ」のつく建物が。1881年にベルリンで美術館として設立され、現在は展示会場として利用される「マルティン・グロピウス・バウ」。ルネッサンス様式を用いた、端正で威厳ある外観が特徴の同館で開催中なのが、ナイジェリア出身のビジュアルアーティスト、オトボング・ンカンガの個展『There’s No Such Thing as Solid Ground』。「人類」と「地」の関係を探求し、ドローイングやインスタレーション、パフォーマンスやビデオなどのあらゆる手法を使い、作品に落としこむ。
ベルギーの都市アントウェルペンを拠点に活動するオトボングが掘り下げるのは、土地や天然資源。人類の営みはときの流れとともに移り変わってきたが、人類を支える地は変わらずずっとそこにある。数日、数年、数世紀、数千年にわたり土地に刻まれた痕跡を辿り、人類との関係を紐解いていく。その方法とは、まずその土地にしかない植物や石、塵を集めるところからはじまる。そして科学の専門家たちに協力を仰ぎ、そこに社会学や自然科学といった幅広い知識を織り交ぜ、まるで地層のように複雑な重なりをアート表現する。2015年にはこの活動が評価され、芸術や多様な文化的活動に従事する優れたアーティストに贈られる、韓国のヤンヒョン賞を受賞した。
地層を連想させる彫刻作品『Solid Maneuvers』では、石油、銅、板金、鉄鋼、アクリル、アルミニウムなど地下で採掘される資源を用いて、資源採掘の過多による問題を提起。地層には随所に穴があいており、それは天然資源の開発過程で減少する山の運命と人間の欲望を物語っている。また石の文化的価値を伝えるインスタレーション作品『Taste of a Stone』では、岩や小石を用いて屋内庭園を再現。訪れた人々が岩に触れ、小石の上を歩く自分の足音に耳を傾けられるような、瞑想の場になっている。
展示は今年の12月13日まで。
Installation view Otobong Nkanga: There’s No Such Thing as Solid Ground, Gropius Bau, Berlin, 2020
Installation view Otobong Nkanga: There’s No Such Thing as Solid Ground, Gropius Bau, Berlin, 2020
Installation view Otobong Nkanga: There’s No Such Thing as Solid Ground, Gropius Bau, Berlin, 2020
Installation view Otobong Nkanga: There’s No Such Thing as Solid Ground, Gropius Bau, Berlin, 2020
Otobong Nkanga: There’s No Such Thing as Solid Ground, Gropius Bau, Berlin, 2020
Installation view Otobong Nkanga: There’s No Such Thing as Solid Ground, Gropius Bau, Berlin, 2020
Otobong Nkanga: There’s No Such Thing as Solid Ground, Gropius Bau, Berlin, 2020
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Text by Rin Takagi
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine