K-Popアイドルに韓流ドラマ、韓国コスメ、韓国料理…。第三次韓流ブームの波は数年前からSNSとともにやってきたが、今回は韓国の現代美術が開催しているホットなことをお伝えしたい。およそ50年前に建てられた国立現代美術館(The National Museum of Modern and Contemporary Art, Korea、MMCA)は、本館である果川館と、分館の徳寿宮館、ソウル館、清州館の4つの建物からなる。なかでもソウル館は特に先鋭的。地下にマルチプロジェクトホールや映画館を備えているため、絵画や彫刻以外に、パフォーマンスアートやアートフィルムも観賞することができる。そんなソウル館で本日まで開催中なのは、愛犬を連れて観賞できる展示『A Museum for All, a Museum for Dogs』だ。
「家族の一員でありながらも、公共の場に連れていくことが困難なみなさまの愛犬を美術館に招待します」。『A Museum for All, a Museum for Dogs(みんなの美術館、犬のための美術館)』は、あくまで人間のために建てられた美術館が、はたして非人間(non-human)を受け入れることができるかどうかを試みるチャレンジングな展示である。愛犬と人間、双方が安全に展示をたのしめるように、企画の初期段階から獣医師、造園家、建築家、法律家など各分野の専門家が参加しているそう。
韓国のアーティスト、ヂョン・ヨンドゥによる犬の彫刻『Togo and Balto – A Group Sculpture of a Canine Hero Who Saved Humanity』は、極寒のアラスカで疫病ジフテリアが流行った時に、全長1085キロという超長距離を走り抜き、血清を届け、子どもたちを救った勇敢な犬ぞり隊のヒーロー「バルトとトーゴ」を再現した作品。疫病の原因は動物でありながら、人間が動物に救われるという皮肉が込められた新しい視点の作品。キム・ヨンクワンによる屋外のインスタレーション『Beware, I Am Big and Non-dangerous!』は、実際に犬が遊べる、けれど一見すると遊び方が分からない、ちょっと変わった形のプレイツール作品。また、フランスの巨匠ジャン=リュック・ゴダールによる3D映画『さらば、愛の言葉よ』の犬のストーリーや、イギリスのアーティスト、デイビット・シュリグリによるユーモラスなアニメーションもフィーチャー。その他の作品も、「人新世(人類の時代)」「“痛み”をわかちあう友好関係」「大切なパートナー」「一緒にいること」「自然と文化」「環境世界」といったセクションで展開されている。
犬好きと犬のための、犬とそのまわりのことについて考える本展示。それでは最後に美術館からメッセージをば。「みなさまを心から歓迎しますワン!」
A Museum for All, a Museum for Dogs, exhibition view at MMCA Seoul. Photo: Park Swan. Image provided by MMCA.
Installation view at MMCA Seoul. Photo: Park Swan. Image provided by MMCA.
Installation view at MMCA Seoul. Photo: Kim Yongkwan. Image provided by MMCA.
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Text by Rin Takagi
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine