今回紹介するのは、カナダのオンタリオ美術館にて開催中の写真展『DAWOUD BEY, JOHN EDMONDS, WARDELL MILAN』。ベビーブーマー世代のダウード・ベイ(1953年生まれの68歳)、X世代のウォーデル・ミラン(1977年生まれの43歳)、ミレニアル世代のジョン・エドモンズ(1989年生まれの32歳)の異なる三世代のアフリカ系アメリカ人の現代アーティストが、2017年から19年の間に撮影した写真作品やコラージュ作品が展示される。
テーマは「写真はどのように、アフリカ系アメリカ人の経験を形作り続けているのか」。写真は何を記録できる? 写真を通して過去の経験を呼び起こすことはできる? 三人はこれらの質問を作品に投げかけながら、各々の表現方法を用い、アメリカにいまも蔓延るアフリカ系アメリカ人に対する暴力の歴史やその複雑さを作品に落とし込む。
写真家で教育者のベイがオハイオ州で撮影した『Untitled #20 (Farmhouse and Picket Fence II), 2017』は、自身のプロジェクト「Night Coming Tenderly、Black」のなかの1枚。19世紀の黒人奴隷が自由を求めて脱走する、というテーマを抽象的に再現した。写真家のエドモンズがシャッターを切った『Untitled (DuーRag3)』は、黒人の美を探求するため、デリやバーバーショップで購入したドゥーラグ(アフリカ系アメリカ人のファッション文化に根付くヘアアイテム)をモデルに着用させ自宅アパートで撮影したもの。
人種問題に関する話題や議論は昨年に引き続き、日常的に触れる昨今。SNSで流れてくる心苦しい動画だけでなく、アーティストが制作したうつくしい作品もまた、アフリカ系アメリカ人の歴史を知り、学びへのきっかけとなる。展覧会は4月18日まで。
Milan 2019/2250
Black (2016–2017). Gelatin silver print, 121.9 x 149.9 cm. Art Gallery of Ontario, Purchase, with funds from the
Photography Curatorial Committee, 2019. © Dawoud Bey 2019/2251.
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Text by Ayano Mori
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine