その「感情労働」代行します。もう連絡を取りたくない人との“荷物やり取りサービス”に組み込まれた近年の流れ

スタートアップの活動や新しいプロジェクトから読みとく、バラエティにとんだいま。HEAPSの(だいたい)週1レポート
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新しいプロジェクトからは、バラエティにとんだいまが見えてくる。ふつふつと醸成されはじめたニーズへの迅速な一手、世界各地の独自のやり方が光る課題へのアプローチ、表立って見えていない社会の隙間にある暮らしへの応え、時代の感性をありのままに表現しようとする振る舞いから生まれるものたち。
投資額や売り上げの数字ではなく、時代と社会とその文化への接続を尺度に。新しいプロジェクトとその背景と考察を通していまをのぞこう、HEAPSの(だいたい)週1のスタートアップ記事をどうぞ。

あの服、あのCD、どこにあるんだっけ。ああ、あの人の家だ。
この写真集、あの人のだ。返したい。

連絡しづらい、あるいは二度と取りたくない人との荷物のやり取りを代行するスタートアップが昨年登場した。サービスの便利さもそうなのだが、注目したいのは彼らが代行してくれる、“ある労働”の項目だ。

再び連絡をとるための“心の酷使”、必要ありません。

 特にここ2年くらいだろうか。欧米で「感情労働(エモーショナルレイバー)」という言葉をよく目に耳にするようになった。肉体労働、頭脳労働のもう一つ、「感情や精神をはたらかせる労働」のことで、定義自体は80年代からあるものの、人種やジェンダーの話が活発になるとともに「誰がもっとも感情を酷使しているか(女性や、マイノリティである)」という指摘とともによく出てくるようになった(これについてはまた別途、記事にするので今回は端的に)。そしてもちろん、ここにあててくるビジネスもまた登場している。

 一つは、米国で昨年登場した新たなデリバリー(?)サービス、というかお荷物お届けサービスPostdates(ポストデート)。同棲していた元恋人、一夜限りの関係、元パートナー、はたまた絶交した友人が部屋に置いていった物もの、あるいは自分が置いてきてしまった物ものを届ける・届けてもらうサービスだ。どこかで聞いたことあるなと思ったあなた、デリバリーサービスのPostmates(ポストメイツ)のパロディだそう。

 連絡を取りづらい相手から、荷物を取り戻したり送り届けるとは、どうやって?

1、相手との関係性(例:元恋人、一夜限りの関係、離婚している、など)を選ぶ。

2、取り戻したい/送り返したいアイテム(可能であれば説明付き)を入力する。

3、自分のメールアドレスと、相手の名前と連絡の取れる携帯電話の番号を入力。すると元恋人(または記入した関係性の人)にPostdatesからメッセージが送られる。
リクエストを受け入れるかどうかなど、いくつかの質問に答えてもらう。相手が承諾した場合、支払い情報を処理して注文を確定。

4、注文確定後、サービスのサポートにチップを支払う。

5、荷物の実際の返送・受け取りへ。玄関の外に置かれた荷物が配達員によって集荷され、相手もしくは自分に荷物が届く。

 その安全性が気になるが、現在展開しているLA、NYにおいて、それぞれGourmet RunnerとAirpalsという地元の宅配便会社と提携
しビジネスとして成立しているのでここはクリアだろう。「猫や子ども、お酒やドラッグ、バッグに入らないものを送らない限り、どちらの都市でも合法です」と創設者の1人、Suzy Shinnはコメント。

 もう一つ。相手に住所はバレないのか。「住所が共有されないこと、全員が参加に同意していることを確認し、接触しないことを心がけています。相手が注文を受け入れるまで、請求はされません」とここも同氏がコメント。

 配達料は、LAで25ドル(約2,870円)、NYで30ドル(約3,440円)から。それにくわえて発生するのが、4のチップ。3.99ドル(約460円)で、「Emotional Labor」という項目でのチップだ。ただのチップでもなければサービスフィーでもない。宅配員の”感情労働”にチップインするのだ。この4ドルを払っていただき「(宅配員が)あなたの感情労働を代行します」ということだろう。このサービスのもっとも大きなポイントは、利用者が必要のない感情や心の酷使をしなくてしますよ、という点だ。


 以前にもHEAPSで同棲を解消するカップルのあれこれを代行するサービスを紹介したが、ストレスをかけずに荷物のやり取りをまるでネットショッピングのように済ませることができる画期的さもそうだが、このチップの項目名がなんとも近年の流れをくんでいて、さすが米国と思う。ところで、このような「外注」のサービスを利用したら、溝は大きくなる一方であることは想像に難くない。関係性は二度と寄りは戻せなくなるかもしれないので、ご利用は計画的に、注意しながら…だろう。

—————
All Images via Postdates
Text by HEAPS and Ayumi Sugiura
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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