あの子じゃなくて「あの子たちと出会いたい」。Z世代がつくる“グループ同士”で繋がるアプリ、今日の友だち事情と求める出会い

スタートアップの活動や新しいプロジェクトから読みとく、バラエティにとんだいま。HEAPSの(だいたい)週1レポート
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新しいプロジェクトからは、バラエティにとんだいまが見えてくる。ふつふつと醸成されはじめたニーズへの迅速な一手、世界各地の独自のやり方が光る課題へのアプローチ、表立って見えていない社会の隙間にある暮らしへの応え、時代の感性をありのままに表現しようとする振る舞いから生まれるものたち。
投資額や売り上げの数字ではなく、時代と社会とその文化への接続を尺度に。新しいプロジェクトとその背景と考察を通していまをのぞこう、HEAPSの(だいたい)週1のスタートアップ記事をどうぞ。

出会いたいのは、あの子というより「あの子たち」。その子と友だちになりたいというより「その子が属しているようなグループと仲良くなりたい」。求めているのは、1対1での出会いではない。

「どうやったらウソ偽りなく心が通じあえる人たちと繋がることができるのかなって。本物の自分をさらけ出せる友だちと一緒に、見つけたらいいんじゃない?」。Z世代がつくったマッチングアプリには、いまの出会いと友だちづくりの感覚が、ぎゅっと詰まっている。

「一人じゃトイレも行けないのに、マッチングアプリは一人でやるの?」

 デジタルネイティブの悩み。それは、オンライン、特にソーシャルメディア上では1クリックで人と簡単に繋がることができるのに、それ以上の繋がりを生みだすのが難しいということ。

「私と同じ年代(20代前半)の多くはデジタルネイティブで、(小学校)6年生のときには、すでにソーシャルメディアのアカウントを持っていた。それからというものの、オンラインでの交流は inauthentic(本物でない)で、 impersonal(人間味のない)になっていったんです。大学に入ってこんなことがありました。クラスで隣に座った子、インスタはフォローしているのに、はじめましてが言えなかった」。ニューヨークのコロンビア大学に通っていた学生ジェイミーも、オフラインで実際に繋がりをつくる難しさを感じていた一人。

 そんな自身のもどかしい経験と「一人でマッチングアプリのプロフィールをつくるより、ベストフレンドと一緒にやったほうがたのしそう」という思いからつくったのが、友だちをつくるマッチングアプリ「Flox(フロックス)」だ。一人で出会うのではなくみんなで出会う、グループ同士のマッチングだ。「一人じゃトイレも行けないのに、マッチングアプリは一人でやるの?」と、確かに…な若い世代ならではの本音を鋭くつく。


(出典:Flox Official Website

 
 そして、「私たちは、個人へのフォーカスから離れたいと思っている」とも。これまでのマッチングアプリでは、「この人」と出会うことを目的に「いいね」をする。実際に会うと、なかなか本来の自分を出せず、相手のことも掴めず、なんかうまくいかない時もある。友だち同士で出会うフロックスは、いつもの友人といる自分のまま、新しい人たちと接することができる。

「どうすれば、人と人とが真の意味で繋がることができるんだろう」と考えた先にあったのが、「一番ありのままでいられる友人と一緒にいること。それで出会うことだって思った」とジェイミーは述べている。

「グループの口癖」「みんなでよく聴いている音楽」は?

 使い方は、既存のマッチングアプリと似ているようでいろいろ違う。まずは、自分たちのグループメンバーそれぞれの名前や年齢、居住地などの基本的なプロフィールを作成。あとは「グループの口癖」「グループでよく聴いている音楽」「夜中にハングアウトする場所」「自分たちをテレビ番組にたとえるなら」「子どもの頃の思い出の場所」など、グループの性格や色、個性が自然と出てくる質問に答える。ポストするのも自撮りではなく、「パーティーや旅行にみんなで行ったときの思い出の写真」をポスト。

 自分たちのグループと共通点がある、相性がよさそう、仲良くしたいというグループがあったら「いいね」。大勢の遊び友だちを増やすだけではなく、たとえば映像や音楽などのクリエイティブ制作プロジェクトの参加メンバーやボランティア活動の協力者など、さまざまなコラボレーションの仲間探しも期待できそう。

@jamietylerlee WELCOME TO FLOX. Waitlist early access in bio🧊 #startup #entrepreneur #app #friends #dating #fyp #selfimprovement #watchmegrow #tech #foryou ♬ original sound – Jamie Lee


 2020年の夏にベータ版としてニューヨークの大学生と新卒者限定に開放されたが、学生たちの間で人気が広がり、すぐに2万人の利用希望者が
ウェイティング状態になった。今後は、ニューヨーク以外の都市でも順次使用できるようになる予定。

Z世代のマッチングアプリは「友だちグループ」と出会う

 グループ向けマッチングアプリは、2016年にデートアプリでおなじみのTinderがグループ同士で出会う機能を搭載した「Tinder Social(ティンダー・ソーシャル)」のサービスを提供していた。が、Tinder自体が恋愛マッチングアプリとしてのイメージが強かったためか、わずか1年ほどで終わってしまった。その点、Floxは、Z世代によるリアルな感覚から生まれ、最初からグループ同士の出会いにフォーカスしているため、新世代のグループ向けマッチングアプリとして定着するかもしれない。

 新しい人と仲良くしてみたいと思うとき、特定の子というよりかは、あのグループの雰囲気がいいな、好きだな、というのがある。Floxは、自分とその友だちみんなが抱えている“ぼんやり理想のハングアウト”を実現させる。

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Text by Ayumi Sugiura and HEAPS
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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