食べるのが好き!“モデルが食べる姿”で伝えたい、食事制限ではない「食とのハッピーなつき合い」。思春期、葛藤、心と体と食生活

若いうちに形成された食生活って、一生ものになる可能性があるから。
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私たちも、みんなと一緒で、食べるの大好き!
とりあえず、なんでも揚げたほうがおいしくない?

現役で活動するモデル、Phoebe Pojo(フィービィ・ポジョ)。22歳。モデルをはじめたのは11歳、『Teen Vogue(ティーン・ヴォーグ)』の編集者にスカウトされたのがきっかけだった。

肉体的にも精神的にも、不安定な10代。そこに仕事がくわわって…。彼女にも、食とうまく向き合うことができなかった時間がある。

「私たちモデルだって、食べるの大好きだよ!」と自分や自分のまわりのモデルが楽しく食べる姿を伝えることで、モデルのイメージを変えようとしている。そしてそれは、これまでのモデル業界が定着させてきた「(美しくいるなら)あんまり食べない」を、変えようとしている。

食事制限とは違う「食とのハッピーなつき合い方」って、なんだろう。

「モデルは食べない」??

 幼い頃はサッカーにのめり込み、とにかく人一倍活発で、よく食べる少女だったポジョ。11歳でモデルとしてファッション業界に足を踏み入れてから、「自分の食事」をIGに載せてみたのは16歳だった。

 自分が食べた食事を写真に撮って載せていく。ただそれだけのアカウント。遊びではじめたそのアカウント「Molde…Eat」は、ただリアルに食べていることをポストしただけだが、「モデルがリアルに食べている!」姿は、すぐにモデルたちを中心に注目と人気を集めた。『Teen Vouge』や『NYLON』『Office Magazine』などのメディアにも次々と取り上げられた。現在は「Model That Eat」に改名し、YouTube、Podcasts上へと精力的に活動を広げ、「食べる」ことに関して、摂食障害などの体験談などもふくめてさまざまなコンテンツを配信中。ポジョのまわりのモデル仲間もジョインして届けている。

「Models That Eat」のコンテンツ内容を少し紹介。

・摂食障害になって、リカバリーにたどり着くまでのストーリー。——Djouliet Amar(ジュリエット・アマー)/俳優・モデル

・モデルとしてのアイデンティティーと食との関わりかた。ポテトチップスを食べながらの対談。——Camille Opp(カミール・オップ)/モデル

・男性のファッション業界の実態について。日本のお菓子を食べながらの対談。——Abdulaye Niang(アブドゥラエ・ニヤン)/モデル

・自信を持ち続けるためのセルフケアについて。パイナップルピザを食べながらの対談。——Tiff Baira(ティフ・バイラ)/プラスサイズモデル・歌手・ティックトッカー

「ブリトーがあれば私は幸せ」と話すポジョだが、食とうまく向き合うことができなかった時期もある。10代を通して、思春期、心の葛藤、仕事、その生活で「食べる」ことに向き合ってきた。「自分にとっての食事」を見つめること、「改めて食事を好きだと思う」こと、それらをモデルとして経験してきたことで、いま、モデルだけじゃなく多くの人に伝えられることがある。

「食べない」のではなく、「自分に十分な量を食べる」「ハッピーに食べる」をより多くの人に伝えている彼女と、心と体と食生活について、話していく。

Phoebe Pojo。

HEAPS(以下、H):ハイ、ポジョ。話せるのを楽しみにしていたよ! 今日の調子は、どんな感じ?

Phoebe(以下、P):元気!最近、新しいスケジュール帳を手に入れたの。 いろいろ書き込んだりしてたところ。

H:それはなにより。11歳の時『Teen Vogue』にスカウトされたことからモデルに。最初、自分がモデルになることについて、どのような心境だった?

P:ワクワクした。でも同時に、変な感じもした。自分がモデルになるなんて想像したこともなかったから。

H:そうなの?

P:私、身長が188センチあるから、それで昔から「モデルになりなよ」とは言われてきたんだけど…モデルはフェミニンでグラマラス、みたいなイメージを抱いていて、私はそのどちらでもまったくないから、自分はモデルになるタイプではないなって思ってた。

H:モデルとしての最初の仕事は、どうだった?

P:緊張して、もうなにしたらいいのって感じだったけど、最初の仕事が自分も読んでた『Teen Vogue』だったからドキドキだったけどうれしかった! まだIGがない頃だから、まわりの友だちもみんな読んでて…私が載ったページをみんなが見てくれて。

H:人に注目されるようになって、11歳のポジョの内面はどういうふうに変わっていったんだろう? 自信をもったり、自意識がそれこそ急にでてきたり。 

P:そのどちらも感じていて、50:50だったと思う。私がモデルになってから私に対する接しかたがガラリと変わったのをまず感じた。みんな急に私と遊びたがったり「モデルなんだ! かっこいいね」って声をかけてくれるようになって…なんていうのかな、いきなり社会的地位が上がったのを身を持って感じた。そういう経験によって、自尊心というものがでてきた。

 でも同時に「みんなが私を見ている」ということを「品定めされている」と感じるようにもなって、自意識が過剰になってもいた。中学生でおでこにたくさんニキビができちゃったときは、前髪でおでこを隠してた。で、メイクやヘアの時に前髪を上げないといけないシチュエーションでは「ニキビがいっぱいあってごめんなさい」って。学校での自分とモデルのオンセット自分、バランスを取っていたって感じかも。自分の状態に左右される仕事があって、でも10代としていつも小さな不安がいくつかあって…。モデルを機にものすごく変わったと思う。

H:食べることについて意識しはじめたのはいつ? モデルでなくとも、10代という自分のあり方を初めて意識しはじめるとき、初めてのダイエットをする子も多いよね。さらにそのうえで、モデルとしてプロ意識を持ちながら自分を管理しなくちゃならない。

P:モデルをはじめた最初の頃は、食生活は特に変化しなかったんだ。17歳までは。

H:まず、変化せずにいられたのはどうして?

P:私の両親は私の好きなようにご飯を食べさせてくれたの。本当にラッキーだったと思う。「もしモデル事務所がいつもなに食べているのか聞いてきたら、サラダって言っておきなさい。彼らはそう聞きたいはずだから」って、私のママはこんなこと言ったりするくらい。実際には5皿分くらいのパスタを食べているのに(笑)。で、16歳のときには、もともと興味のあったヴィーガンの食事をはじめて。もともと食事が大好きだから、食生活とはうまくつき合えてた。

H:10代って、友だちと帰りに遊んだり買い食いするのも楽しみの一つじゃない? そういうときも特に気にせず?

P:うん。高校時代、一番よく食べてたの、フレンチフライとブリトーだと思う。いまでもブリトーは24時間いつでもOK。

H:あはは(笑)。17歳での食との関係の変化、これはモデルの仕事によって?

P:17歳になって、パリのファッションウィークへの参加が決まったんだ。もうプレッシャーで、食とうまく向き合えなくなっちゃった。なにか食べるってなっても、いろんなことを気にして食べ物を選り好みするようになって…食べるのを制限しすぎてもいた。当時の私は、私のモデルとしての未来がすべてがこのパリのファッションウィークにかかっているような気がしたんだ。

H:ファッションウィークは、モデルの仕事のなかでも精神的にタフな仕事だと聞きます。

P:モデルという仕事には不安要素が付きものだけど、特にファッションウィークはそういう不安要素が極端に現れる期間。「ファッションウィークにあなたが涙を流していないのなら、それはファッションウィークをやったとは言えない」って、よくモデル業界の人は言うくらい。やり過ぎたファスティングをしたり…。非現実的なモデルのスタンダードに合わせた結果、人が人であることを忘れてしまい、精神的に参ってしまうなんてことはよくある。いままで感じたことない世界だった。とてもプレッシャーがかかるうえに、入れ替わりもものすごく激しい。

H:どのくらいのスピード感なんだろう。

P:前シーズンでいいショウでのランをゲットして一躍トップクラスのモデルになったかと思いきや、次のシーズンにはもうあなたのことを忘れている。それくらい。新しいモデルが5人入ってきたら、前シーズンのモデルはそうやって世間から忘れられていく。
私は、実はこのパリのファッションショーのあとモデル業を休ませてもらったんだ。いまは自分のことを大事にしたいと思うようになったからファッションウィークは参加せずに、私は観る専門。

H:食事とうまくつきあえない期間は、どれくらい続いたの? 食事を食べてしまう自分がいやだと思うような感じだったんだろうか。

P:だいたい1年くらいかな。揚げ物なんて当時は口にしたくなかった。いまでは「とりあえず、なんでも揚げたほうがおいしくない?」みたいな感じなのに。私の場合は、食べてしまう自分を嫌だと思ったことはないと思うけど、何を食べているかをしっかり意識している、というか。ちょっと不安というか。自分が生きていくために必要不可欠であるものに、プレッシャーをかけすぎてしまうと喜びがなくなっちゃう。

H:ちなみに、エモーショナル・イーティングなどは、あった?

P:ああ、遅くまで起きてて夜中に食べ物探して食べたりとかあったなあ。ちょうど、その17歳の経験のあとくらい。でも、エモーショナル・イーティングというよりは、食習慣が戻ろうとしているときって感じだった。モデルをはじめた頃は気にせず好きなだけ食べていて、で、制限して、そこの埋め合わせ、というか。

H:どうしてまた、食べようとシフトできたんだろう。

P:16歳でヴィーガンになったことは、大きいと思う。それまでのハンバーガーをぽんと1個頼むのとは違って「何をどれくらい頼んだら、私はお腹いっぱいになるのか」を考えて頼むことで、食事との関係ができた気がする。食を楽しむ別のやり方を築いたというか。その経験があったから、17歳のあの時、「最悪」まではいかなかったんだと思う。

H:いま、ポジョが日々の食生活を楽しんでる様子が「Models That Eat」アカウントからも伝わってくる。

P:『Models That Eat』に取り組んでいるからこそ、食べ物を楽しめる日々に本当に感謝している。モデル業を休んでいる数年は、自分のことを見つめて知る期間になったし、「Models That Eat」のインタビューを通して、まわりのモデル友だちの食生活を知って、自分の視野を広げることができた。おかげでいまは食べ物に不安を感じることはなくなったよ。モデル、友だち、彼氏、家族、食べることが大好きな人たちに囲まれて、いまは毎日が幸せ。私の毎日のハイライトは、料理かレストランに行くこと。

H:「Models That Eat」は、ポジョが16歳のときに「Model…Eat」という名前ではじめたもの。どういう心境でこのアカウントをはじめたの?

P:もうね「食べてるもの」を載せただけの、食べるということを見せるだけのアカウントだった。特に目的はなくて、楽しむために作った。モデルの友だちと食べた料理の写真を撮って、それを投稿して。それが見た人の笑顔に繋がればいいなっていうぐらいの気持ちで、特に深いメッセージ性はもってなかった。けどまさか、それが予想以上の数のポジティブなコメントをもらえて。

H:ある時は、モデルからのコメントで「ありがとう。あなたの投稿をみて勇気をもらい、摂食障害の治療を決意することができました」というものまで。シリアスなメッセージ性を持たせずとも、モデルが日々の食べ物をポストするというだけで、人々にはただのフーディーアカウントとは違う届き方をした。

P:やっぱり一般的に「モデルは食べない」って、思ってる人が多いでしょう? そしてみんなモデルがどんな食生活を送っているのかにすごく興味を持っているんだと思う。「いつも魅力的で、写真ばっかり撮って、いい生活を送って」みたいなイメージをみんなモデルに持っているみたいだけれど、実際はそんなことはない。ポストをみて、モデルが一人ひとり違う食事をしているってことを知ったり、なにより「モデルも同じように食べる」ってことが、気づきだったんじゃないかな。

H:確かに。モデルが食事を「楽しんでいる」というリアルな姿が、新鮮だったんだと思います。

P:そうそう、私たちは確かに食事との複雑な関係性を持っているけれど、最大限に楽しもうとしている。そして実際に、食事を楽しんでる。私たちモデルが、まるでほかの人間とは違う存在として見られたり、思われているのってどうなんだろうって。必要以上に重要視されたり、または人じゃないように思われたり。

H:こんなに食べるなんて、ポストをみても信じられない人もいるよねきっと。

P:「これはリアルじゃない」とか「モデルがこんなにたくさんの食べ物を食べるわけがない」みたいなことをコメントしてくる人もいる。

H:モデルへのイメージが固まっているのだとわかりますね。

P:フォトショップでさらに絞られたモデルの姿が、多くの人にコンプレックスをあたえているのだということも、悲しいことだけどわかっている。だから、私たちがほかの人と同じように体にコンプレックスを持っているということを、信じられない人いるんだろうなあとも思う。でも、私にだってコンプレックスを感じるときはある。

いや、本当に食べるんだよ!って。188センチの身体に栄養素が行き渡るように食事をするためには、すごい量を食べないといけないんだから。

H:このアカウントが「モデル業界への問題提起」になりえるとは、どの時点で気づいた?

P:問題提起であり、脅威であるとも気づいたのは、モデル業を再開するってなって事務所探しをしていたとき。面接で「Models That Eat」の活動について話したら8つの事務所が私を採用してくれなかった。モデルとしての私を気に入らなかったのかもしれないし、それはもちろん問題なし。でも、なかにはある事務所は「『Models That Eat』の活動が気にくわない」って直接的に私に言ってきたりもした。

きっと、モデルが食について抱えている問題を、見せたくないし問題提起させたくなかったんだと思う。事務所側は、モデルたちに体型を指摘したり、食事制限を要求することがあって、彼らは業界の問題の一部でもある。そして、ボディ・イメージの問題を内側から引き起こしている存在だから。でもこの一連で、自分が正しいことをしているとも確信できたんだ。

H:やっぱりモデルにとって、食というのはセンシティブなトピック?

P:事務所の目を気にして、食についてはあまり話さないようにしている節はある。すべての事務所が良心的であるとは限らないからね。事務所によっては「食について話しすぎたら、クライアントに悪い印象を与え、オファーがもらえないようになるぞ」とかって言ってくるところもある。そんなこと私の経験上ではありえないけど。あとは、業界の服のサンプルサイズが非現実的に小さいことも、その状況をあおっているって感じる。
モデルと食のコンテンツに有害なものが多いというのもある、こういうのしか食べません、みたいな動画だったり。それは見る人を焦らせたり不安にするものだし、モデルにも「それがモデルの食事」だと思って欲しくない。モデルにも見る人どちらにも良い影響をあたえないよね。もしもいまあなたがモデルに食生活を聞いてみたら「食べない方」の話をすると思う。

H:「Models That Eat」では、ポジョやほかのモデルのかたちがとても楽しそうに食事をしているのがわかるから、事務所の人たち含め、業界のモデル以外の人たちにもちゃんと見て欲しいですね。

P:「We’re people」だってみせられたらと思うよ。ちょうど最近までポッドキャストの準備をしていて、ウェブサイトもリニューアルしてもっと配信していこうと思ってる。インタビューで食について深く対話しているのもみせていきたいし…。ゴールは「食とのいいつき合い方」をみせられること。

H:食とのつき合いかたが、食事制限ではない、というのが素敵なところ。

P:私たちは、どういうふうに、どれくらいの量を食べましょうとは伝えない。食を楽しんでいる瞬間、食べ物について話しているモデルの姿をみせること。それが、食事への前向きな見方をもたらすと思う。

H:モデルと食事といえば女性を考えがちだけど、男性モデルも登場する。

P:性別問わず多くの人が食事との関係に苦しんでいる。でもやっぱり、男性のほうが摂食障害については話しにくいことがあるかも。食に限らず、弱音を吐いたりすることへのスティグマがあるでしょう。それらを話せるようなコミュニティを築くのは簡単じゃないよね。男性のモデルたちにももっとインタビューしていこうと思ってる。少しずつでもこういったことを話したい、話そうと思える場所をつくらないと。

H:モデルたちが食とのポジティブでヘルシーな関係を築いているということが、モデルのかたたちだけでなく、私たちに伝えてくれるものはあると感じます。

P:「Models That Eat」を続けていくことで、多くのひとがもっと食事が好きになれるようになったらいいなって思う。モデルは「話を聞いてもらえる」という特権があるからこそ、しっかり話していくべきだと思う。これまでモデルという存在がメディアを通して、一般的に固定させてきた美の観念だったり、ヘルシーでない有害な考え方を、私たちがポジティブに伝えていくことで少しずつ変えていきたい。ナラティブを更新して、前進させていきたい。

H:IGなどを通して若い人たちにも伝えられる、ポジティブなツールになる。

P:若い世代の人たちには特に、食といい関係を持つことの大事さを伝えたい。若いうちに形成された食生活って、一生ものになる可能性があるから。モデルと自分を比べて自己嫌悪に陥ったりする子もいるよね、そこにモデルが加担していることが私にとっては一番悲しい。

私たち(モデル業界)が「あんまり食べないこと」をノーマライズさせてきたのだから、今度は「自分に十分な量を食べること」「ハッピーにヘルシーに食べる」を普通にしていきたいな。若い世代から積極的にハッピーで健康的な食のスタンダードを一緒に生み出していきたい。食って、とってもハッピーなものだから。

Interview with Models That Eat, Phoebe Pojo
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Images via Phoebe Pojo
Text by HEAPS & Ayano Mori
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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