洗濯はランドリーにお任せ、「忙しい」だけじゃない理由。元NASAエンジニアによる“第3の洗濯代行サービス”

スタートアップの活動や新しいプロジェクトから読みとく、バラエティにとんだいま。HEAPSの(だいたい)週1レポート
Share
Tweet

新しいプロジェクトからは、バラエティにとんだいまが見えてくる。ふつふつと醸成されはじめたニーズへの迅速な一手、世界各地の独自のやり方が光る課題へのアプローチ、表立って見えていない社会の隙間にある暮らしへの応え、時代の感性をありのままに表現しようとする振る舞いから生まれるものたち。
投資額や売り上げの数字ではなく、時代と社会とその文化への接続を尺度に。新しいプロジェクトとその背景と考察を通していまをのぞこう、HEAPSの(だいたい)週1のスタートアップ記事をどうぞ。

※※※

「みなさんのために、洗濯を“再発明”しました」

自宅まで洗濯物をピックアップしに来てくれて、あとは洗濯をおまかせし、指定の場所まで洗いたてを届けてくれる。ここまでは、すでにある「洗濯代行サービス」。だけどこの再発明にはもう一つの観点がある。忙しいだけじゃない、現代の人々の選択肢になりうる代行サービスって?

CO2排出量ゼロの“宇宙時代”の洗濯

 世界中で何百万、何千万、いや何億台もの洗濯機が毎日回り続けている。人々の衛生的な生活に欠かせない20世紀最大の発明品の一つだが、これが環境に多大な負荷をかけていることは近年、より指摘されるようになった。おもには大量の水の使用、エネルギー使用による二酸化炭素の排出、繊維のプラスチック廃棄物の排出があり、「だったら、洗う頻度を少なくしよう」と『100日間洗わなくてもいい服』などのウォシュレスブランドも出現してきた。そこに、あえて洗濯機を使って、最先端の技術を武器に洗濯の環境汚染問題に挑むのが「オックスウォッシュ(OXWASH)」。英国名門オックスフォード大学の卒業生が生んだスタートアップだ。

「洗濯は、異常なほどの二酸化炭素の排出やそれによる大気汚染、そして洗濯の集配サービスが大きな環境問題の要因となっています」と、同社CEOのカイル。洗濯機を回すだけで、平均的な家庭(英国)で年間最大およそ5万リットルの水が必要になり、年間440キログラムの二酸化炭素(車のトランク440個分)を排出する。衣服の繊維問題も深刻で、5キロの洗濯を一回まわすごとに60万から1700万本のマイクロファイバー(ナイロンとポリエステルからできている合成繊維)が放出されるという。この繊維は排水され、海や川に流れ込むとほとんど分解されず、半永久的に残り続けてしまう。


 オックスウォッシュ誕生のきっかけは、カイルがオックスフォード大学の博士時代に、大学の洗濯機が壊れたのを機に、友だちの洗濯物を回収し、小さな洗濯代行サービスをはじめたことだった。そこで、洗濯サービスに関わるすべての工程を一から見直し。集荷から洗濯、乾燥、配送までのそれぞれが最大限エコになるように組み立て、忙しい現代人に人気の「洗濯の代行&ドロップオフ」をエコロジーの観点でもう一度考えた。

 オックスウォッシュの洗濯は、なにがどう改善されたのか。

 一つ目は「洗濯水の再利用化」を実現し、60パーセント節水ができる。その強力なろ過システムで95パーセントのマイクロファイバーを捕捉。海に流さずに留める。また一般的な40℃のお湯洗浄から、20℃の低温洗浄へ。40℃はもっともCO2排出が多いからだ。熱洗浄の代わりに、高い除菌効果のあるオゾン消毒で衛生を保持している。

 洗濯の前後も、もちろんエコだ。ピックアップとドロップオフにはトラックを使わず、スタッフが太陽光パネルで動く電動カーゴバイクで周回。ここまでやり切り、彼らのサービスは「二酸化炭素排出量ゼロ」。このこだわりを捨てない姿勢が多くのファンを作り、2018年の創業以来、個人顧客は4,000人以上にのぼるという。


オンライン上で洗いたい服と受け取り時間を設定して注文ボタンを押すだけで予約完了。
エコ志向の個人宅向け以外にも、Airbnbやホテル、学校、レストラン、介護施設、医療施設などに向けたサービスも展開している。



衣類ごとに選ぶこともできるが、15ユーロ(約2000円弱)の混合バッグなども便利。
普段着以外にも、布団や枕、スーツに白衣、寝袋やスキーウェアのような特殊なものにも幅広く注文可能だ。
現在利用できる地域はオックスフォードとケンブリッジ、そしてロンドンと、着実に事業拡大を進めている。

 カイルは、大学入学前、NASAのエンジニアとして二年のあいだ、宇宙における微生物の使用効果について研究をしていた。その知識を活かして開発した最新の抗菌テクノロジーによるエコロジーな洗濯を、彼は〈宇宙時代の洗濯サービス〉と謳っている。「会社を立ち上げた当初からずっと持っている目標は、地球を助けること。出荷から配送まですべて自社で完結する、業界初の“真に持続可能なランドリー企業”を目指しています」

忙しいだけじゃなく「エコに洗いたい」環境志向に応えるサービス

 これまでの洗濯代行サービスには、1つにスーツやコートなど自分では洗濯が難しいものをお願いするもの、2つに忙しい人向けの日常の普段着を洗って畳んでもらうというのがあった。後者は、欧米では特に忙しい現代人に人気だ。

 オックスウォッシュは、ここに3つ目の「エコ観点」で選ばれるサービスを確立しつつある。吟味した洗剤に低温洗濯、繊維を流さないように…と、環境にいい洗い方を家庭や近所のランドリーで徹底的に実践することは難しい。

「忙しいから洗濯代行サービスを頼もう」にくわえて「地球にやさしい洗濯をしたいから、洗濯代行サービスを頼もう」。家で洗濯をしない理由には、いま、グリーンなものもあるのだ。

—————
Eyecatch Graphic by Midori Hongo
Text by Rin Takagi edited by HEAPS
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

↓↓↓毎日お知らせ含めて配信中。HEAPS(ヒープス)の公式ツイッター↓↓↓

Share
Tweet
default
 
 
 
 
 

Latest

安息日のブランチも、同性愛への考えも各々の価値観。ユダヤ教女性2人組がインスタから発信する、現代のユダヤ教の本質

※(取材・執筆は2020年夏となります。当時コロナ禍以降、社会の根本的な価値観が変わりゆく予感のなかで、HEAPS編集部では宗教の現在地についての探究を進めていました) ユダヤ教には「ラビ」と呼ばれる指導者がいる。律法(…

「自分を僧侶だと名乗ったことはない。ただ僧侶たちと一緒に暮らした」米ミュージシャン・ヒンドゥー教徒の神秘な道

※(取材・執筆は2020年夏となります。当時コロナ禍以降、社会の根本的な価値観が変わりゆく予感のなかで、HEAPS編集部では宗教の現在地についての探究を進めていました) 国内のみならず世界中でもツアーをおこない、スポティ…

「礼拝は“義務”ではなく“神と会話できる機会”」インドネシアから独に渡ったムスリム、異国の地で再確認した神への愛

世界のムスリム人口は約18億人。イスラム教といえば中東のイメージが強いが、実はムスリム(イスラム教信者)が人口の過半数を占める世界最大の国は、インドネシアだ。さまざまな宗教が入り混じるなか、イスラム教を信仰する国民は約8…
All articles loaded
No more articles to load