近くても遠くてもママ友だち。さまざまな悩みをわかち合う、ママのマッチングアプリ「会うのはローカル、頼るのはグローバル」

スタートアップの活動や新しいプロジェクトから読みとく、バラエティにとんだいま。HEAPSの(だいたい)週1レポート
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新しいプロジェクトからは、バラエティにとんだいまが見えてくる。ふつふつと醸成されはじめたニーズへの迅速な一手、世界各地の独自のやり方が光る課題へのアプローチ、表立って見えていない社会の隙間にある暮らしへの応え、時代の感性をありのままに表現しようとする振る舞いから生まれるものたち。
投資額や売り上げの数字ではなく、時代と社会とその文化への接続を尺度に。新しいプロジェクトとその背景と考察を通していまをのぞこう、HEAPSの(だいたい)週1のスタートアップ記事をどうぞ。

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「このアプリを使ってから数週間しか経っていないのですが、地元に住んでいるすばらしいママたちと出会うことができました」「自分と同じ気持ちや感情をもったママたちが世界中にいると思うと、一人だけじゃないんだなって思います」。物理的に出会えるママ友だちも、遠くにいるけれど情報交換できるママ友だち、時差があるからこそ繋がるママ友だちも。ママたちのティンダーと呼ばれ、「会うのはローカル、頼るのはグローバル」のママたちのためのマッチングアプリがある。

いろんなママたちが世界から参加する、繋がる

世界中どこでも、子どもができたら近所のママ同士は自然と繋がりを持ち、コミュニティを作っていく。ママになったからこそ出会える・わかり合って友情を育める友だちもある。だけど、「必ずしも近所にいなきゃいけないこともない。いろんな場所につくれる」を教えてくれるのが、 ママたちを繋ぐマッチングアプリ「ピーナッツ(Peanut)」だ。 米国・カナダ・英国に160万人のママユーザーがいる。「お向かいに住むママと出会うことができた!」と、ご近所のママ友だちと出会えることも魅力だが、もう一つ、「遠くの、気の合う・同じ悩みを持つママたちと出会える・繋がれる」こと。

「何百万人ものママたちが悩み最も助けを必要としているときに、彼女たちの孤独感を減らし世界中のママたちが繋がりを持てるようにすることが目的です」とは、ピーナッツを創始したミシェル・ケネディ。英国在住で、自身も母親として孤独と闘った経験を持つ。母親には、同じく母親同士だから分かち合えることがたくさんある。ママ友の幅を、“近所だからたまたま友だちになったママ友だち”から、“何千キロも離れたところにいる、とても合う・同じ悩みを持つママ友だち”まで広げる「ママたちのティンダー(出会い系アプリ)」とも呼ばれているピーナッツ。


(出典:Peanut Official Website

 出会い方は通常のマッチングアプリ同様にとても簡単だ。 名前、住んでいる地域、子どもの年齢などの情報を登録すると、マッチするママが表示される。自分に合う人かも、と思ったら上へスワイプして「ウェーブ(手を振る)」。下へスワイプすると次のママを見ることができる。「ウェーブ」が双方で成立すれば晴れて「マッチ」だ。マッチしたあとは、直接メッセージをやり取りできる。

 これまでにもママたちのオンライングループは多く存在していた。フェイスブックでも新米ママたちのグループは一定数ある。でも「自分の叔父が年末年始の写真を共有していたり、16歳のいとこがシュプリームのスウェットを売っていたりするのと同じプラットフォーム上(この場合はフェイスブック)で、流産や不妊、産後の体について話にくいですよね」。

また、既存のママたちのオンライングループに比べても、ピーナッツは「いろんなママ」がそれぞれ自分たちの使い方を見つけられるアプリだという。ピーナッツのユーザーであるママたちは、当たり前だがさまざまだ。「専業主婦としてずっと家にいるママ、子どもが自立して巣立ったママ、まだママじゃないけど子どもが欲しい女性もいます」。また、「たとえば、不妊症の女性は、妊娠についての悩みがあるけれどSNSを開きたくなかった。幸せそうな赤ちゃんの写真や、陽性反応が出た妊娠検査薬の投稿写真を見て、辛い思いをしたくないからです」

ピーナッツでは、ママたちは自分の特性や興味に合わせた小さなグループを作る。「〈母乳で育てるママのグループ〉や〈LGBTママのグループ〉、〈イスラム教徒のママのグループ〉までもがあります」。さらに、「センシティブなコンテンツのフィルター」や「ミュートキーワード設定」も備えて、見たいコンテンツを積極的に集め、見たくないコンテンツを避けて、自分用にカスタマイズした居心地のよい居場所を作れるようになっている。近いからこそ言えない悩みは、いつもの友人同士でも家族でもある。明日には顔を合わせるご近所のママには話しづらいことも、遠く離れたグローバルのママになら話せることだってあるかもしれない。


「90分の映画を観るのに3日間もかかるとき、母であることを実感する」。


「ママ友だちのいいところ。それは、夜の11時半でも夜中の3時でも、明け方の5時でもメッセしたら、必ず起きている人がいるってところ」。

会うのはローカル、頼るのはグローバル

 ピーナッツで得られる体験は、近所のママ友や病院で会えるママたちとの交流だけでは得られないものがある。それは、何百万人ものグローバルなママに相談ができること。「夜中2時の授乳中、赤ちゃんが1時間も起きていたとき、それがどれほど不安で孤独なことかを心の底から理解している人は多くはない。でもピーナッツを開けば、まったく同じ時間に開いているママがきっといる」。時差があるからこそ、早朝や深夜のどんな時間にも繋がるママがいる、というのもあるだろう。

 こんな例もあった。米国に住むピーナッツユーザーのママが「ママになってから、シャワー中にも赤ちゃんの泣き声が聞こえる気がして、シャワー時間が短くなりました」と投稿した。これには、英国に住むママから「あぁ〜、幻の泣き声がするよね。私もいつもそうだった」と共感の声が寄せられたり、「だからベビーモニターを買ったよ! これ最高」とアドバイスがもらえたり。ママ友だち=ご近所さん、から、=ローカル&グローバルへと伸びやかに広がっていく。

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Eyecatch Image by Midori Hongo
Text by Rin Takagi edited by HEAPS
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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