「ただ机と空間をシェアするコワーキングではなく」27歳発、WeWorkと一味違う“社交クラブ的”コワーキング

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従来のものは「ただテーブルや小部屋をシェアし、フリーランスやスタートアップが一つのスペースに共存しているだけで、本当の繋がりが構築できているようには思えない」。なので、「うちはコーワーキングスペースというよりは、ネットワークを広げるための社交クラブ」。手がけるのは27歳。WeWorkとは一味違う、ヤング・プロフェッショナルたちが求めるシェアオフィスとは?

テーブルや小部屋をシェアするだけでは、コラボは自然発生しません。

「コワーキング・スペース」という言葉が注目され始めたのは2010年頃だったと記憶する。各々が独立して働きながらも、オフィス環境を共有することで、互いに情報やアイデアを交換しながら、業種を越えたつながりを構築できる新時代のオフィスとして紹介されていた。

 だが、「実際のところは、フリーランスやスタートアップ企業が一つのスペースに共存しているだけで、それぞれの間に本当の繋がり生まれているようには思えませんでした」。そう話すのは、27歳の起業家ライアン・ウィルソン(Ryan Willson、米国南部のジョージア州アトランタ出身)だ。新コンセプトのコワーキングスペース「ザ・ギャザリング・スポット(The Gathering Spot) 」を手がける。

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 思わず、ライアンの言葉に深く頷いてしまったのには訳がある。HEAPS編集部もマンハッタンにある某シェアオフィスを利用しているのだが、場所柄、人の入れ替わりが激しいこともあってか、積極的な交流やビジネスコラボレーションが育まれることは少ない。ビジネス上のコラボが実現するかどうかは、結局はそこにいる人次第であり(そもそも全員が望んでいるわけではない)、コワーキングスペースはそのきっかけを提供してくれる場所にすぎない、ということだ。

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“地元発”ならではの「社交クラブ」的オフィス

 従来のコーワーキングスペースにおいてライアンが気づいたこと。それは、より安価で快適なオフィススペースを求めている人たち、と、コネクションやビジネスコラボレーションの機会を探している人たちが混在していること。「そこで僕は、後者にフォーカスした、社交クラブ的なコーワーキングスペースがあればいいのに、と思っていました」。

「ザ・ギャザリング・スポット」は、コンセプトが「社交クラブ」だけに会員制。先ほど述べた「コネクションやビジネスコラボレーションの機会を探していて」「本気でビジネスを成功させたい人たち限定」で、メンバーからの紹介が入会の条件の一つになっている。

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 と、それだけ聞くと英国発の「ソーホーハウス」のような、エクスクルーシブなものを想像してしまうが、そうなりそうで、なっていないところがポイントだと私は思っている。感度高めのクリエイティブ業界の人ばかりを集めているソーホーハウスに対し、ギャザリングスポットは良い感じに地元臭が残っている。いや、もちろんオフィスは洒落ている。いまっぽいモダンなデザインの会議室やイベントスペースはもちろん、ヘルシーなスローフードを提供するレストランや、仕事でもプライベートでも使えるバーもちゃん“一つ屋根の”にある。しかし、それでいてパーカーにジーンズもあり。ファッショナブルなんて言葉にはぺッと唾を吐きかけて生きていそうなナードや、ハードコアなスポーツファンたちにも居場所がある、というか。ラウンジバーの他に、スポーツバーが併設されていたりするのも、ギャザリングスポットならではだ。「ここ(アトランタ)に限ったことではないですが、スポーツは年齢や職種、人種の壁を超えた共通の関心事。つまりビジネスシーンに欠かせない人間関係の潤滑油ですから」

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“ただのコワーキング”にはなかった機能するネットワーク構築

 ギャザリング・スポットの会員になるメリットは、「ここに属することで、いかに有益なビジネスコネクションが作れるか」だ。セレブ御用達のルーフトップバーへのアクセス権ではない。そのコネクションも、ここまでで述べてきた会員同士だけに留まらず、地元企業を巻き込んでのネットワーク構築も視野に入れている。
 ギャザリング・スポットがあるアトランタは、もともと、名門ジョージア工科大学や、世界屈指の乗降者数を誇る”ハブ空港” アトランタ国際空港を有する街。コカ・コーラやメルセデスベンツUSA、デルタ航空など、大手企業の本社がある。また、レコードレーベルも多く、近年はハリウッドを凌ぐ勢いで映画製作が盛り上がっている。そういった地元の多種多様な企業が「うちのイベントスペースやオフィスを利用してくれている」といい、それが会員にとっての付加価値につながっていることはいうまでもない。

Mayor of Atlanta
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 創設から約一年半で、大小1,000回以上ものイベントを開催(つまり月に55本以上)し、「Spotifyのイベントでは、地元出身のヒップホップアーティストT.I.やアトランタの市長まできてくれた」そうだ。それも「地元ならではのコネクション」であり、ギャザリング・スポットができたことで、同じ地元の起業家が集まる地元発のコワーキングスペースを応援しよう、という機運は確実に高まっていると話す。

 現在、会員数は約1,000人。「最年少は25歳、上は82歳。コア層は25〜40歳で、年収でみるとアッパーミドルクラスの人たちが多い」とのこと。承認待ちの人たちも増えているが、むやむやたらに会員数を増やさないのは、客層をコントロールするためというよりは「どんなビジネスプランを持った人たちがいるのか、バランスを把握しておきたいから。会員に有益なコネクションを提供するには必要なこと」。気になる会員費は、年間2000ドル(約22万)。30歳以下は月会費100ドル(約1万1,000円)という割引価格で利用できる。

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 ちなみに、アトランタ市内にはシェアオフィス運営大手のWeWork(ウィーワーク)がすでに3店舗ほどある。が、「コンセプトが異なるので競合ではない」と話している。彼らの売りは、上述の地元の大手企業のエグゼクティブから、政治団体のリーダー、音楽や映画界のセレブリティなど、地元発のコワーキングスペースならではの「他にはない密なネットワークの構築ができること」だからだ。

*1ドル111円で換算

All images via The Gathering Spot
Text by Chiyo Yamauchi
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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