「シャワー中の名案を保存」お風呂で柔らかくなった頭のヒラメキとアイデアを後でメールしてくれる浴室

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人は風呂場で己を解放する。シャワーに紛れて嗚咽をもらした夜もあれば、エコーを楽しみながら歌にこぶしを効かせたり、ゆず湯で温泉気分を味わいながら柔らかくあったまった頭で「あ!」。脳内には机上で思いつきもしなかったアイデアが浮かんでくる。誰もがシャワー中に経験する「アハ体験(a-ha moment, 『あああ、そうか!』と思いつく瞬間)」を、風呂場の外へ“保存”する機転の利いたアイデアが誕生した。

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 世界中60ヶ国に500の店舗を展開する大手ホテルチェーン Marriott Hotels(マリオットホテルズ、以下マリオット)が開発したのが、「メモ書きや落書きをデジタル保存できるシャワー室の壁」。シャワー中に思いついたアイデアを、シャワー室の曇ったガラスドアに指でメモ。そのメモや落書きをそっくりそのまま自分のEメールに送信できる仕組みだ。

 “シャワー中に突飛な名案が思いついた”、“行き詰まっていた企画案に新しい見方をみつけた”、“シャワーにうたれているときは瞑想状態のようだ”という話はよく聞く。科学的にもシャワー中には脳内物質のドーパミンが大量に分泌されるため頭が冴えるといわれており、マリオットが出張の多い5,000人を対象に行った調査によるとビジネストラベラーの半数以上(51パーセント)が、シャワー中にベストアイデアを思いつくらしい。しかし、シャワーの水とともに頭にふりかかってきた発想を覚えておこうと思っても、悲しきかな、風呂場を出てひとしきりリラックスしたころには「あれ、なんだったっけ?」。そこで「あ!思いついた」をその瞬間に曇りガラスにメモすれば、せっかくの良案がシャンプーの泡と一緒に排水溝へ…なんてことが防げるのだ。

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「このテクノロジーで人の思考の可能性を、想像的にそしてたのしく広げていくことができます」とマリオット。現在はカリフォルニアにある一店舗で導入されているメモ書きシャワードアだが、好評な場合には、他店舗でも展開する予定だ。

 戦略会議のブレストをするビジネスマンだけでなく、思いついたメロディーを音符にするミュージシャンに、新しいキャラクターを考案する漫画家、建物や空間デザインを手掛ける建築家などクリエイターたちも大いに活用できる。まあ、そう肩肘張らずに、買い物リストや、やることリストのメモにも十分に使い勝手が良さそうだ。もしもこの浴室が数十年前にあったら、ホテルオークラを常宿にしていた川端康成も、もうひとつやふたつ新たに執筆していたかもしれないとナンセンスなことを考えながら、今晩のシャワーでおもしろい企画が生まれないかなあと思っている。

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Eye catch photo by Skyle King
Photos via Marriott Hotels
Text by Risa Akita
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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