「農薬まみれのガンジス川を清めよ」大量に流し捨てられる“献花”を石鹸に。宗教国家・インドのアップサイクル術

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世界中どこに行っても、冠婚葬祭など生活シーンで必ず登場する「花」。ところで、一回きりで使い終わった花、それから売れ残った花はどこに行くのか? 近年では花屋の売れ残った花を回収して染料にし手染めするブルックリンのブランドなど、廃棄花のアップサイクルも生まれている。

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 しかし、彼らほど早急に花廃棄問題を解決せねばならない国はない。国民の8割がヒンドゥー教徒の「インド」だ。インドでは、花は宗教的な献身を象徴するため、寺院にも毎日のようにあふれんばかりの大量の花が捧げられる。しかもその花たちは、需要に間に合わせるために農薬をたっぷり使い無理に育てられているのだが、使い終わったその花の行方が“インドの母”・ガンジス川だというのだ。神に捧げられた花はゴミ箱や焼却炉行きにはできないため、年間約800万トンもの農薬まみれの花がガンジス川を流れている

 母なるガンジスが汚染されていくのを見かね、「ガンジス川で体を清める前に、ぼくたちがガンジス川を清めなければ!」と勇むのが「HelpUsGreen(ヘルプアスグリーン)」。寺院からガンジス川直行だった花を、バスソープやお香にアップサイクルするスタートアップだ。

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 アガワールとカランの幼馴染二人組がスタートしたヘルプアスグリーン、現在は29のヒンドゥー教寺院と3のイスラム教モスクと提携、毎日1.5トンのゴミ箱行きの花を回収。お寺やモスクには「お花はきちんと神聖な目的で使われますから」と説得し、バスソープや堆肥、お香などをハンドメイド。さらに、パッケージにも目から鱗のアイデアが。インドでは、お香などの包み紙には神様のイラストが描かれているため、みんな捨てるのを躊躇し川や寺院に捨ててしまう。そこで、ヘルプアスグリーンの包み紙には“インドの聖なる植物トゥルシーの種”を練りこんだ。それにより、捨てられてもその場で自然にかえって芽が出てくるというのだ。

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 また、このアップサイクルは社会問題にも立ち向かえるポテンシャルがある。インドでは、女性の就業率が27パーセントと男尊女卑が根強く残り、しかもカースト制度が敷かれ下層階級の女性は職につくのが困難なうえ、平均日収は10ルピー(約17円)と雀の涙。同社では、その下層階級女性を雇い、廃棄花の回収や分別作業を任せ、日当150ルピー(約263円)を支給している。

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 ゴミ箱行きの花が新しく生まれ変わるように、社会の底辺で生きる彼女たちも働く環境を得て生まれ変わる。習慣として当たり前のように捨てていた花や包み紙が環境にもたらす懸念も啓発する。ガンジス川を守るためのアイデアは、人々の生活や社会の意識までもアップサイクルしているようだ。

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All images via HelpUsGreen
Text by HEAPS, editorial assistant: Tomomi Inoue
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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