自分の古着から新しい一着をつくる“フィキシング・ファッション”。リメイクスキルで、買わない服作り

スタートアップの活動や新しいプロジェクトから読みとく、バラエティにとんだいま。HEAPSの(だいたい)週1レポート
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新しいプロジェクトからは、バラエティにとんだいまが見えてくる。ふつふつと醸成されはじめたニーズへの迅速な一手、世界各地の独自のやり方が光る課題へのアプローチ、表立って見えていない社会の隙間にある暮らしへの応え、時代の感性をありのままに表現しようとする振る舞いから生まれるものたち。
投資額や売り上げの数字ではなく、時代と社会とその文化への接続を尺度に。新しいプロジェクトとその背景と考察を通していまをのぞこう、HEAPSの(だいたい)週1のスタートアップ記事をどうぞ。

新しい服をいちから作るのは大変だから、“直す”の延長線で服をつくる。クローゼットをのぞいて着古したシャツ二枚を見つけたら、ワンピースがつくれるかもしれない。もう履かなくなったジーンズを2本使って、新しいパンツ1本に。
今週紹介するのは、自分の古着から新しい服を生み出すハウツーと、少しずつ広がる「買わない服作りのコミュニティ」。

古着から新しい1着を“フィックス(作り出す)”

 サイクルの早い過剰な大量生産やその体制ゆえの労働搾取に環境汚染など、ファッション業界が抱える課題について注視されるようになった近年、見直しの声や指摘、改善が進んできている。だが、氷山全体をみてみれば、たとえばファストファッションが拍車をかけている廃棄問題はまだまだ悪化する見通しだ。2030年までに繊維廃棄量は1億3,400万トン以上に増加する、と予想されている。

「買って捨てる」に終止符を打つべくさまざまなブランドの取り組みがあるが、今年4月にローンチしたプラットフォーム「Fixing Fashion(フィキシング・ファッション)」は「新しい服を買わずに一着をつくろう」をすすめている。

 イチから服をつくるって、大変。デザインをしてパターンをひいて…と、経験がなければちょっと尻込みしてしまいそうなプロセス。そもそも、どんな生地をどこで買ったらいいかもわからない。
 が、フィクシング・ファッションがすすめるのは「手持ちの服で、新しい服をつくろう」というもの。「One Army(ワン・アーミー)」が主宰するプロジェクトの一つで、古着から新しい服を自ら“フィックスする(作りだす)”文化を広めようという取り組みだ。

 プロジェクトをリードするのはオランダを拠点にする23歳のデザイナーのアリシアと、インダストリアル・デザイナーのデイブ。ファッションの廃棄問題は「『リサイクル』が答えではありません。欠けているのは、リペア、アップグレード、そして服への労わり、です」。



 同プラットフォームでは、破れたり穴が空いたなどの衣服の修理、不要となった衣服の色の変更、サイズ変更などのリメイク方法や、二枚のTシャツを切って繋げたTシャツ、片方ずつのパンツを縫い合わせたパンツ、ワイシャツ二枚で作るワンピースなど新しい一着をつくる方法を無料で紹介している。衣服の繊維についての知識や、必要な裁縫道具、道具の使い方、また衣類用の染め粉や野菜を使った布の染め方なども教えてくれる。難易度も記載されているので、個々の裁縫レベルにあわせて学ぶことができるのが良い。

 個人的には、色あせたり黄ばんでしまった服をアボカドで染めるアイデアが気になった。

🥑アボカド染めのやり方
1. 大きな鍋にお湯を沸かし、沸騰したらアボカドの皮と種を入れ1時間煮込む。
2. バケツとザルを用意し、鍋のお湯をバケツに移す。この時ザルで不要なアボカドの皮とタネを取り除く。
3. 染めたい衣類を水で濡らした状態でバケツの染料に浸し、好みの色に染まるまで放置する。アボカド染めは一晩置くときれいなベビーピンクに染まる。衣類を段々に折った状態で染めると日本の「絞り」の柄に染めることができたり、くしゃっと丸めて紐で縛った状態で染めれば、「タイダイ染め」になるなど、ひと工夫すればデザイン性のある染め方もできる。

 新しい服が仕上がったら、#fixingfashionでSNSに投稿。そこには、わきの部分に穴が空いた子ども用の白いセーターをブルーの糸で縫いあわせたものや、黒いトレーナーを漂白剤でタイダイにしたりと、それぞれのリメイクや一着作りのポストが十人十色に並ぶ。ニッティング(編み物)・コミュニティのように、買わない服作りのコミュニティが少しずつ広がっている。

クローゼットに飽きたら、買わない服作り

 エコロジーやモノを大切にする意識の向上から、服の“お直し”は盛んだ。SNSでも、着古した服のリメイクや、簡単なリペアのチュートリアル投稿もよく見かける。以前ヒープスでも紹介した古着ジーンズから新しい服を生み出すブランド「NOORISM(ノーリズム)」など、ブランドが衣服をリペア・リメイクし販売する動きも多い。

 フィキシング・ファッションは、自分で着古した服があるからこそできる新しい服作りを教えてくれる。プラットフォームで紹介している「お直し」は、裁縫初心者にはややハードルが高そうだが、「服作り」という観点から見るとハードルは低い。“買わない服作り”の最初のステップには良さそうだ。

 クローゼットをのぞいたら、着古した洋服たちから次に着たい服作りのアイデアがわいてくるかもしれない。大事に着た一着は、譲ったり売ったり、今度はフィキシング(作りだす)もしてみよう。





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All Images via Fixing Fashion
Text by Ayumi Sugiura
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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