気候変動について学びたい子どもたちと「教える準備が整っていない」いま。遊んで学ぶ、7歳からの教育ゲームのアイデア

スタートアップの活動や新しいプロジェクトから読みとく、バラエティにとんだいま。HEAPSの(だいたい)週1レポート
Share
Tweet

新しいプロジェクトからは、バラエティにとんだいまが見えてくる。ふつふつと醸成されはじめたニーズへの迅速な一手、世界各地の独自のやり方が光る課題へのアプローチ、表立って見えていない社会の隙間にある暮らしへの応え、時代の感性をありのままに表現しようとする振る舞いから生まれるものたち。
投資額や売り上げの数字ではなく、時代と社会とその文化への接続を尺度に。新しいプロジェクトとその背景と考察を通していまをのぞこう、HEAPSの(だいたい)週1のスタートアップ記事をどうぞ。

※※※

「普段から、気候変動について心配している」「少なくとも、月に1度は、気候変動のことを考えている」。
子どもを含めた若者の10人に8人がそう答える昨今(昨年おこなわれた、8歳〜16歳を対象にした調査)。若い世代において気候変動への関心は高まるだけでなく、子どもたちが早い段階でその意識を持ちはじめていることがわかる。

ゆえ、また別の調べでは、約7割の生徒が「環境問題について、もっと勉強したい」と回答。だが、多くの教員はこう返答しているという。「気候変動を教えるための適切な指導は受けていない」「気候変動に関する十分な教材がない」。子どもたちの「地球のいまと未来」への関心が飛躍的に高まり、また早まるいま、その学習意欲に応えるための教材や環境についても考えられはじめている。

ジェンガ感覚で遊びながら、環境問題を学ぶ

 スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリの登場、10代のリードによって実現した世界100ヶ国以上での気候変動デモ。 「未来のために、金曜日は学校に行かない」学生たちのストライキなど、この2年ほどで気候変動への意識は若い世代の間で飛躍的に高まり、また「10年後に大人になる自分たち」「30年後も生きている自分たち」の問題として、早い段階で気候変動についてを真剣に考えはじめている。

 グレタ・トゥーンベリが気候変動問題に関心を抱きはじめたのは8歳のときだというが、彼女のように早くから気候変動についてを学ぼうとする子どもたちはいまや少なくない。が、そこで一つの壁となっているのが「環境問題について教えられる環境が整っていない」こと。英国での調査では、68パーセントの学生が「環境問題についてもっと勉強したい」と要求しているのに対し、75パーセントの教師が「気候変動を教えるための適切な指導を受けていない」と回答している。

 その教育環境の不十分に対してもまた、若い世代の取り組みがある。たとえば、7歳から11歳の小学生向けに作られた環境問題の教育ゲーム「Bees, Trees, & Factories(ビーズ、ツリーズ、&ファクトリーズ)」。開発者はデザイン大学の卒業生エマ・ジョーンズ。「キッズが環境問題を学ぶための手助けになれば」と在学中に取り組んだプロジェクトだ。

 地球が描かれたバランスボードと、さまざまな形の積み木、そして、カラフルなイラストが描かれたカードで構成されるジェンガのようなバランスゲーム。積み木を高く積み上げたり、バランスボードの端に積み上げたり、また積み木同士をすべて接着するように積む、など、3通りの遊び方でたのしむもの。

 自分のターンでまずはカードを引き、そこに記されている「環境問題に関するクイズ」に回答し、正解した場合のみ、積み木を積み上げることができる。より多くの積み木をバランスボードの上に置いた者の勝ち。途中で積み木を落下させても負け。

 カードは全12種類。「化石燃料」「森林破壊」「過剰消費」「プラスチック」「リサイクル」「ファストファッション」などの環境問題に関するトピックと、それぞれが地球へどのような影響を及ぼすのかが説明されている。



カードゲームとしても遊べる。
カードに記されている数字は「天然資源」「廃棄物」「効率」「費用」「エコポイント」をスコアで表したもの。
スコアが高い者が勝ち。

 ゲームは製品化には至っていないものの、包装はダンボール箱ではなく洗える巾着袋、積み木はプラスチック製ではなく木製と、随所に工夫を凝らした仕上がりだ。

小学生向けだが。大人が知らないことも

 先述の通り、このゲームの対象は7歳から11歳の小学生。しかしキッズ向けだからと侮るべからず。その内容は大人にも学びをあたえてくれるほど充実している。たとえば「ハチ」のカードを引いたとする。さて、ハチは環境に良いのか悪いのか。正解は「環境に良い」。ハチは花粉を運んで植物の受粉を行い、野菜・果物・穀物の実りを助けるから。「食肉生産」はどうだろう。正解は「環境に悪い」。家畜を飼うには広大な土地や飼料が必要で、畜産業は温室効果ガス排出の大きな要因にもなっている。食肉の輸出入には大量の二酸化炭素排出の負荷もかかる。

 気候変動について学びたい、というよりは、学ばなくてはならない、と感じている子どもたちも少なくないだろう。冒頭の同調査によれば、「空気のきれいな都市が50年後も存在していると信じている」と回答したのは、たったの27パーセントだった。

 子どもたちが10年後、30年後の、自分の未来についてを考るとき、常にさまざまなメディアで語られ目にする、気候変動のことがある。気候変動は子どもたちにとって関心を持たざるを得ない話なのだ。
 彼らが、もっとも近い大人である親や先生と、環境問題について話し合えることは重要なこと。自分たちが生きていく地球について、一緒に学び、考え、話し合うことは、私たち大人ができる身近なことであり、また責務であると思う。

—————
All images via Bees, Trees, & Factories
Text by Ayano Mori
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

↓↓↓毎日お知らせ含めて配信中。HEAPS(ヒープス)の公式ツイッター↓↓↓

Share
Tweet
default
 
 
 
 
 

Latest

All articles loaded
No more articles to load