インスタント麺、袋ごと食べよう。かやくを練りこんだパッケージは熱々スープに溶けてゆく。プラスチックフリーの“新”ラーメン

スタートアップの活動や新しいプロジェクトから読みとく、バラエティにとんだいま。HEAPSの(だいたい)週1レポート
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新しいプロジェクトからは、バラエティにとんだいまが見えてくる。ふつふつと醸成されはじめたニーズへの迅速な一手、世界各地の独自のやり方が光る課題へのアプローチ、表立って見えていない社会の隙間にある暮らしへの応え、時代の感性をありのままに表現しようとする振る舞いから生まれるものたち。
投資額や売り上げの数字ではなく、時代と社会とその文化への接続を尺度に。新しいプロジェクトとその背景と考察を通していまをのぞこう、HEAPSの(だいたい)週1のスタートアップ記事をどうぞ。

※※※

セサミ入りベーグル? ドーナツ? いいえ、インスタントラーメンです。

ドーナツ型の乾燥麺を包む、茶色がかった半透明の皮。これ、かやくと粉末スープが練り込まれたパッケージ。このままどんぶりに入れて熱湯を注げば、パッケージがホロホロ溶けてスープと化す。ええ、このまま食べちゃいましょう。

プラ袋なしのインスタントラーメン(スパイシーチキン味、他)

「ラーメンは作って完食まで10分。でも、プラ袋は分解するのに80年以上かかってしまう場合があります」。
 インスタントラーメンの個包装に、麺が入ったプラ袋、さらにかやくや粉末スープが入った小袋が。それらプラスチックゴミ、分解までにものすごい時間がかかる。10歳の頃に食べたインスタントラーメンのゴミ、90歳になるまで分解されていないのかと思い至って、ぞっとする。
 近年のプラスチックゴミ問題に対してさまざまな代替品などが生み出されているなかで、ひときわユニーク。プラスチック一切不使用の、袋まで食べられるパッケージのラーメンDissolvable Noodle Packaging(ディザールヴァブル・ヌードル・パッケージング)だ。包装の代替品という発想に留まらず、「袋まで食べられる」ように考えられた大胆さがすごい。考案したのは、ロンドン在住のホリー・グラウンズ(22)、芸術大学卒業生。在学中に取り組んだプロジェクトにて考案し、「実験はすべて自宅のキッチンで行いました」という(なんともインスタントラーメン開発にぴったり)。茶色がかった半透明の皮は、溶解性のある無味のバイオフィルムでできている。製作工程も以下のようにシンプルだ。

1、原料〈じゃがいものデンプン、グリセリン(体に害のない食品添加物)、水〉を加熱し、適切な厚さになるまで混ぜる。

2、そこに海苔やゴマに香辛料などと粉末スープを加え、型に注ぎ24時間かけて固める。

3、固まったら型から出し、麺に巻きつけて完成。

 ラーメンの作り方も超簡単。小さないくつもの袋を開け開けする手間もないので早い。麺を覆うパッケージは50度以上の熱湯で溶けるので、そのままどんぶりに入れてお湯を注げば1分以内にできあがり(パッケージが本来のラーメンの味を害することはないとのこと)。ウェブサイトには「市販のインスタントラーメンとどちらが速く作れるか」を競う試みも載せてある。もちろんこの新ラーメンの方が速い。小さな袋を開けては中身を器に入れ、の手間がないので、市販ラーメンにお湯を注ぐ頃には作り終えていた。

 ちなみに乾燥麺がドーナツ型なのは、どんぶりにフィットしやすく味が均等にいきわたるから、とのこと。ウェブサイトではスパイシーチキン味をはじめ3種類の味を展開。気になる味だが、現在は試作品段階のため実食はまだおあずけだ。

“お湯に溶ける”という弱点を逆手に

 似たような話、前にどこかで聞いたような? 以前ヒープスで紹介したスタートアップ、エボウエアの「海苔でできたケミカルフリーの食べられるパッケージ」だ。エボウエアのパッケージが包んでいたのは菓子類だったため、「海苔が熱湯で分解してしまうこと」を弱点としていた。偶然だが同記事を書いたライターが、当時に似たような発想を書いていた。熱湯を注ぐ前提の食べ物「カップヌードルの薬味を入れる小袋に最適ではないか!」と。

 ディザールヴァブル・ヌードル・パッケージングは、袋ごと食べられるインスタントラーメン。さらに斜め上を行ったわけである。でもこれ、そのかやく袋もそうだし、スープ系のインスタント食品にも使えそうだ。環境志向に強い関心をもつ世代に適応したインスタント食品への、生まれ変わりの可能性を秘めている。

 だが、惜しい点がひとつ。販売時は衛生面を考慮して、全体を紙のパッケージで包装する予定とのこと。それならパン屋のようにショーケースに入れて、ベーグルさながらトングで掴むのはどうかしら、なんて思ったり。

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Eyecatch Image Graphic by Midori Hongo
Text by Ayano Mori
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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