飲食店で働く移民たちのリアルに立ち向かう。コロナ渦、マイノリティ地区・移民街の小さな食ビジネスを守ろうと動くプロジェクトたち

スタートアップの活動や新しいプロジェクトから読みとく、バラエティにとんだいま。HEAPSの(だいたい)週1レポート。
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新しいプロジェクトからは、バラエティにとんだいまが見えてくる。ふつふつと醸成されはじめたニーズへの迅速な一手、世界各地の独自のやり方が光る課題へのアプローチ、表立って見えていない社会の隙間にある暮らしへの応え、時代の感性をありのままに表現しようとする振る舞いから生まれるもの。
投資額や売り上げの数字ではなく、時代と社会とその文化への接続を尺度に。新しいプロジェクトとその背景と考察を通していまをのぞこう、HEAPSの(だいたい)週1のスタートアップ記事をどうぞ。

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一人ひとりの生命線であり、その街、コミュニティの生命線でもある「食と食ビジネス」。今回のパンデミックでは影響で、大打撃を受けた産業の一つだ。今回は、米国という移民たちの食ビジネス、人種的マイノリティの食ビジネスが多く集まる場所でおきた動きを紹介しよう。

移民地区の小さな食ビジネスを救え

 コロナの感染で疲弊した街ニューヨークでは、先月くらいから、デリバリーやテイクアウトにくわえ、飲食ビジネスが本格的に再開した。といっても店内の飲食は未だにNGで、みなレストラン前の歩道や駐車場などにテーブルと椅子を出し、屋外で飲食できる「オープンレストランズ」をおこなっている(市が支援している公式のプログラム)。夏の天気の良い季節柄、それはまるでお祭りやブロックパーティーのようで、街に活気を少しずつ取り戻している。

 その一方で、営業が厳しいビジネスや、仕事に戻れず失業中のレストラン従業員は未だ多い。依然として暖簾を下ろす飲食店があとをたたない*。

*州によっては飲食店の家賃支払いや小規模経営の飲食店の消費税支払いの遅延を認める措置を設けたり、レストランビジネスへの給付金を連邦議会に嘆願する動きもある。

 そんななかで、強く発揮されているのがローカルの力だ。たとえば、ニューヨーク発の食ビジネス支援イニシアチブ「Project Bento(プロジェクト・ベントー)」。黒人や移民が多く居住するニューヨークのハーレム地区を中心に、ロサンゼルスやオークランド、ニューオリンズなど全米各地のローカルのレストラン、特にBIPOC(黒人、先住民、有色人種など人種的マイノリティ)のビジネスと従業員のための支援プロジェクトへの資金集めを手助けする。
 発起人は、ハーレム地区にあるレストランの料理長でセレブシェフのマーカス・ サミュエルソン。自身のレストラングループのCEOやテックスタートアップと手を組み、同プロジェクトを立ち上げた。
 プロジェクト・ベントーでは、地元密着型のチャリティ団体・活動が多く紹介される。市内の高齢者へ健康的な食を届ける団体、自然災害や貧困が原因で食に困っている人々を支援する非営利団体、ハーレム地区の小規模ビジネスオーナーたちを応援するプロジェクトなど。
 そのほかにも地元のショップガイドの提供や、最前線で働きつづけるレストランやデリバリー従業員の写真や動画のSNSシェアを通して、ローカルの食シーンを盛り上げている。

移民従業員たちが直面する“アメリカのリアル”に立ち向かう

 所変わってカリフォルニア州にて、独自の視点でローカルの飲食業界を支援する団体が「Oakland Food Service Workers Fund(オークランド・フード・サービス・ワーカーズ・ファンド)」。都市閉鎖や隔離によって職を失った地元のBIPOCやQTPOC(クィア、トランスジェンダー、有色人種)の女性、ノンバイナリーの飲食従事者によって作られたグループだ。ミッションは、地元の飲食従事者やその家族、仲間たちをパンデミックから救い、支援、資金援助すること。

 彼らの活動の最大の特徴は「現金での資金援助」だ。というのも、米国では飲食従事者の多くが労働許可のない移民従業員で、彼らは国からの支援(失業保険や現金給付など)を受けられない。そんな移民たちの現実的な問題を解消する、“アメリカのリアル”に立ち向かう団体だ。


(出典:Oakland Food Service Workers Fund Official Website

 さらに、サンフランシスコとオークランドを中心に全米の「チャイナタウン」の飲食店ビジネスを救うキャンペーンSave Our Chinatowns(セーブ・アワー・チャイナタウンズ)」も頼もしい。世界のどこにでもあるといっても過言ではないチャイナタウンだが、米国のチャイナタウンの飲食店はパンデミックの煽りから人種差別的な攻撃や非難の的となり、客数が減った。“最初にコロナの影響を感じたビジネス”であったという。
「あなたが小腹が空いたときに頼りにしていたお店や、一口のエッグタルトで幸せを運んでくれたあのお店を救うため、寄付をお願いします」。同キャンペーンによって集められた基金は、チャイナタウンのコミュニティ支援団体を通して、チャイナタウンの飲食店へと寄与される。

エッセンシャルワーカー、低所得者etc みんなの健康的な食生活もサポート

 食を通してコミュニティに手を差し伸べているのは、地元密着型の小さなプロジェクトだけではない。行政や大型飲食チェーンなど、金銭面で余裕のある組織も支援する。ニューヨーク市では早々に、市内各所で毎日3食を無料で配布をおこない、低所得者や経済的に貧窮する市民にも健康的な食を配布。さらに大手サラダチェーンの「Sweetgreen(スウィートグリーン)」は、パンデミックの対応に追われる医療従事者たちに無料でサラダを提供した。

 どこの都市でもどんな地域でも、食というのはそこに住む人たちに欠かせない物質であり、シーンであり、ビジネスだ。危機的状況のなか、さまざまな企業や団体が、自らの地元の食と人の生命線を繋ぎとめようとローカルの底力と愛をみせる。

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Eyecatch Image Graphic by Midori Hongo
Text by Aya Sakai
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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