小さな電動三輪車でシティを駆け巡る〈ハイパーローカル・デリバリー〉大都市の“最後の1マイル”の配達

「あと10分で到着します!」配達員とのチャットもリアルタイムで。
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オンラインショッピングにおいての“注文完了”までは、いまや驚くほど早い。買い物の手順が簡略化され、すでに購入履歴のある品は「再注文」ボタンひと押しで完了し、携帯のショートメッセージでも商品オーダーが完結できるサービスも。だが、一苦労なのは「実際に商品を受け取る」まで。Eコマース消費大国である米国の配送システムはひどいもの。配達時間がルーズ、不在届けが渡されない、再配達を頼むも指定した日時に来ない、置き配(商品を指定した場所に置いておくこと)では、明らかに通行人の目に触れるところに雑に置いてある…(これが米国の配達あるある)。

「肝心なのは、商品を購入した“あと”です」。エコな電動式三輪車でニューヨークのローカルを駆け回る新たな配送スタートアップは、「Bond(ボンド)」。大手配送会社が実現できなかった“ラストワンマイル(最後の1マイル)”での効率化と細やかなコミュニケーションで、迅速な配達を実施する。

近所の駐車場や空きオフィスが倉庫?

 コンクリートジャングルと呼ばれる大都市ニューヨークで、Bond(ボンド)が目をつけたのは「オフィスビルの未使用スペース」や「駐車場」。ここを彼らの流通センター「ナノ・ディストリビューションセンター(以下、NDC)」にし、そこに配送された荷物を個人宅へ配達していくのがボンドの仕事だ。配達員は「Bondr(ボンダー)」と呼ばれ、にぎやかなニューヨークの街中でもひと際目立つ電動式三輪車で、宅配物を個人に届ける。
 ボンドが「新しいアーバン・シッピング・サービス」と呼ばれる所以は、“ハイパーローカル(超地域密着型)”なシステム。一定の配送地域内にNDCという中継地を配置し、ローカルに密着した配達を実現。大手配送会社よりもスピーディーで効率的な“都会の流通”を提供しているのだ。 


(出典:Bond Official Website

 “ローカルに密着した配達”とは、効率化のための受取人との細やかなコミュニケーションもその一つ。ボンドのアプリを通して配達日時を指定受取人は、当日にボンダーがどこにいるのかをリアルタイムで追跡可能。チャット機能もあり、「少し遅れそう!」というボンダーの報告や「配送先を変更したい!」という受取人の駆け込み要求もOK。商品の返品も可能で、返品したい場合はボンダーとチャットし、引き取り日時を決める。

 ボンドが提携している企業は、ショッピファイ(shopfy)やウーコマース(WooCommerce)などのEコマース大手や、アラスカ産のサーモンブランドや生花ショップなど、鮮度のためにスピードを競う小さな会社。当日の午後1時までに入った注文であれば、同日に3時間以内で、午後1時以降の注文であれば、翌日までに配送するというスピード感だ。現在、マットレスから食料品まで、月に1万5,000件もの配送を管理。現在はマンハッタンとブルックリンに6ヶ所のNDCを、数ヶ月内に30以上に増やす予定だ。


アプリで、宅配日時をスケジュール。


ボンダーの現在所在地をトラッキング。


ボンダーとリアルタイムでチャットできる。
@with_bond

「最後の“1マイル”は僕たちに任せて」

 ハイパーローカルなボンドが誕生した背景であり、同時に解決を試みるのが、配送業界が手こずり続けた「ラストワンマイルデリバリー」問題。直訳すると、「最後の1マイルの配達」。

 商品が受取人の手に届くまでの最終ステップを指しており、ここに、一番コストと時間がかかるという。ユーザーのデリバリーに対する満足度も担保しなければいけない。「物流コストの30パーセントは配送地域に来るまでにかかったもの、その他の70パーセントは配送地域内に届いてからかかっているということがわかりました」とは、ボンドの創立者であるアサフ・ハックモン氏。配送におけるデータ分析を徹底してみたところ、配送にかかるほとんどのコストが、ローカルでの作業効率の悪さが原因であることを発見。配送地域における交通渋滞や、配送スポットの多さにともなう駐車状況など、都市部ならではの非効率性によるものだと推定する。

 配送大手が抱えてきたラストワンマイルデリバリー問題に対し、ボンドは配送地域内に複数のNDCを点在させ、ローカルに根づいた小規模範囲の流通へ。さらに、配送には小さな三輪車を使用し、トラックや大型バンで道が混む日中に、すいすいデリバリー。三輪車は電動式のため、CO2削減にも貢献できる。そしてなにより、ラストワンマイルデリバリーを極めることは、地元民の買い物体験を高めること。「ボンドを通して、個々のユーザーの玄関先に、個々のユーザーエクスペリエンスを届けます」

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Eyecatch Image by Midori Hongo
Text by Aya Sakai
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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