喉が渇いたら〈水のグーグルマップ〉で飲み水を探そう。各都市で動く、水を買わないムーブメント #drinkdifferent

スマイルください、ならぬ「水ください」。喉が乾いたら、水を買う場所ではなく「水をリフィルできる場所」。
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日本の某ファストフード店は「スマイル」をゼロ円で売っていた(いまも?)が、ニューヨークやロサンゼルスなどの都市では、「水道水」をゼロ円で売る草の根運動がはじまった。狙いは1分で100万本以上もが消費されている「ペットボトルゴミを減らすこと」。

登場したのは〈水のグーグル・マップ〉こと「タップ(Tap)」。このアプリを使えば位置情報をもとに、近隣の給水スポット(カフェやレストラン)がわかる。手持ちのボトルを差し出して「スマイルください」ならぬ「水ください」。消費者と小売店が一丸となってペットボトル水の不買運動を行う。

シェイクシャックも参加。アプリで拡大するペットボトル水の不買コミュニティ

 水道水がそれなりにおいしくいただける街で、なぜ、人はペットボトルの水を買うのか。「それは、喉が渇いたときに、水を飲める場所がすぐに見つからないからでしょう」。言い換えれば、給水スポットが簡単に見つかれば「人はペットボトルの水を買わなくなるのではないか」。だから、「水飲み場をクイック検索できるアプリ〈水のグーグル・マップ〉をつくりました」。

 そう話すのは、ミレニアルズ起業家のサミュエル・ローゼン。以前、ヒープスで取り上げたワンクリックで部屋がキレイになる「新時代ストレージビジネス」と同じ創業者だ。
 昨年10月に始動した無料アプリ「タップ(Tap)」は、位置情報をもとに、街の中で気軽に利用できる水の「リフィル・ステーション(給水スポット)」を教えてくれる。もちろん公共の水飲み場も含まれるが、その多くはカフェやレストランだ。自前のボトルを持って行けば「水を無料でリフィルしてくれる」という。


Tapのオフィシャルウェブサイトより。

   
 このアイデアやシステム自体は、英国の「リフィル」など以前から存在しており、ヒープスでもアプリとボトルを抱き合せ販売をしているスタートアップ「クロスカボトル」を取り上げたことがある。「同じ価値観を持つ人たちのコミュニティを広げて、ペットボトルのゴミを減らしたい」というゴールは同じだが、こちらが提供するのは無料アプリのみ。ユーザーが使用するボトルはなんでもよい。誰もが気軽に参加できるので、より訴求力が大きいのが魅力だ。

 早速、編集部のあるマンハッタンで検索してみたがこの通り。「こんなにあるの?!」と、まずは数の多さにびっくり。シェイクシャックやスイートグリーン(サラダショップ)といったファストカジュアルのチェーン店からカフェやアイスクリームショップなど中心に多数の店が登録されている。ニューヨークの他にも、ロサンゼルスやアムステルダム、ニューデリーなど、世界約30ヶ国で同じサービスが利用できるそうだ。


ニューヨークのマンハッタンでは、どのエリアにピン(位置)を落としても徒歩1-9分内に給水ポイントが確認できた。多くは徒歩2分圏内。

 ユーザーは、普通の水道水のほか、水のタイプも「冷えたもの(Chilled)」「ろ過水・浄水(Filtered)」「炭酸水(sparkling)」「味つきの水(Flavored)」の4種類を絞り込み検索することもできる。
 
 また、「水道水は飲まない」という人には、ミネラルウォーターを有料でリフィルできるスポットも用意。有料とはいえペットボトルを買うよりは安価だという。

 この水の検索アプリの唯一にして最大の目的は「ペットボトルの消費量を減らすこと」。ペットボトルの消費量は年々増加しており、その量は世界中で1分間に100万本以上にもなる。多くは、ジュースやソーダなどのソフトドリンクよりも「水」。飲み終わろうが終わらなかろうが、ストローやコーヒーのカップと同じように、たった1回で使い捨てされ、その過剰消費は深刻な環境問題を引き起こすと危惧されている。

 特に問題視されているのがプラスチックゴミの海洋汚染だ。このままペースで消費を続ければ、2021年にはペットボトルの需要がさらに20パーセント増大すると予測され、海水中に含まれるプラスチックゴミの重量は2050年には海に生息する魚の重量よりも重くなると推計されている。

喉が渇いたら、アプリで「水を探す」という新しい習慣

 もちろん、上述のようなカウンターサービスの店では、このアプリができる前から「(水道)水ください!」とリクエストすることはできたし、個人的なアメリカでの経験に基づく話ではあるが、そう聞いて断られた経験はない。
       
 このアプリの登場により変わったのは、水を無料でリフィルしてくれる店が可視化されたことだろう。それより、消費者と小売店が一丸となって、地球の為に「水のペットボトルの使い捨てを減らす」という目標に立ち向かえる環境が整ったことは大きい。ローゼン氏によれば、これは「ムーブメント」なのだそうだ。

 消費者側は、近隣の給水スポットで手持ちのボトルに水をリフィルすれば、新しいペットボトルを買わずにすむ。たかが数百円とは言えされど数百円。お金をセーブしながら、ペットボトルゴミの削減運動にも参加できる。お得で、なんだか気持ちもよく、何より堂々と「水ください!」と言えるのはうれしい。


Tapのインスタグラムより。


   
 このムーブメントに参加するメリットは、もちろん小売店側にもある。たとえば、入店率の向上だ。アプリで検索してやってきたユーザーは、水のリフィルだけでなくなにか商品を購入するかもしれない。仮にその時はそうならなかったとしても「ここに、こんなお店があるんだ」と知ってもらえること、また「親切で良心的な店」という好印象を残すことで、未来の新規顧客の獲得が期待できる。

 なにより、このムーブメントに参加することは「私たちは地球のことを考えています」と公言することと同義なので、既存の顧客には「この店を愛すべき理由」をあらためて提示できるし、新規顧客にもプラスのイメージをあたえられる。 

「水道水」という手持ちのものを無料で差し出す、つまり、小さなコストで、こういったメリットを得られるのだから、このムーブメントに参加することは「とてもコスパの良い宣伝」だともいえる。実際、パートナー登録をしているカフェやバー、レストラン、ジムなどの数は、リリースされてから数週間ですでに3万5,000軒以上。「数は急速に伸びている」そうだ。

 喉が渇いたら、水を買える場所を探すのではなく、アプリで「水をリフィルできる場所を探す」という新しい習慣。今後、より多くの人がこの運動に参加することで、ペットボトル水に対する需要が減れば、水をペットボトルに詰めて販売している飲料メーカーも、その販売方法をより環境に優しいものに変えざるを得なくなる。
 
 SNS上で影響力のある人や、自分をアピールしたい人たちは「これこそ、写真撮って発信しようよ」の瞬間ではないか。「コレ、買ったよ」もいいが、たまには「コレ、買わなかったよ(この場合、ペットボトルの水)」というのも粋(だと思う)。「#drinkdifferent」のハッシュタグをつけて、ぜひ拡散を。

Text by Chiyo Yamauchi
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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