「COME BACK HOME」「I’m Your Girl」元祖K-POP、感情℃×若気のむき出しに熱(ほて)る。煌めいて★アジアのポップス

シティの真ん中からこんにちは。ニュース、エンタメ、SNS、行き交う人から漏れるイキな英ボキャを知らせるHEAPS(ヒープス)のAZボキャブラリーズ。
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シリーズ「煌めいて★アジアのポップス」。全4回、毎回アジアの国から1ヶ国をピックアップ、その国の大衆ポップスの歌詞にある「独特の英語表現」を解釈してみようというもの。

アジアには和製英語(日本)やシングリッシュ(シンガポール)など、現地の言葉やニュアンス、文化背景を通して生まれた新しい英語表現がある。「英語は外来のことば」なアジアだからこその、不思議で唯一な言い回し。おじさんの店先のラジオから、おねえさんのiPodから、家族の居間のテレビから、ほら、漏れ聴こえてくる。

***

悪化する日韓関係にそ知らぬ顔、といったら「K-POPブーム」だ。アジア人初のビルボード1位を獲得したBTS(防弾少年団)や「未知の世界から来た新たなスター」というコンセプトのもと“超能力”をもった12人のメンバーで結成されるEXO(エクソ)、韓国・日本・台湾の多国籍メンバーから成るTWICE(トゥワイス)…。ひと世代前のBIGBAG(ビッグバン)や東方神起から、一段とパワーアップしたボーイズ&ガールズグループが誕生している。

K-POPの勢いが止まらない現在から、さかのぼること、20年ほど前。そこには、のちのK-POPアイドルたちの憧れの的となり、社会に悶々とした若者たちの心を代弁する「元祖K-POPスター」がいた。韓国語に混ざりながら、ときどき聞こえてくるコリアンポップスの“感情をストレートにむき出しにした”3つの英語を取りあげる。

※曲タイトル、歌詞の( )内の日本語は意訳です。

1、“文化大統領”率いる元祖K-POP集団の社会派ソング『COME BACK HOME(帰ってこい)』

数年前、BTSがリメイクをし再び話題となった曲『Come Back Home』。1995年にリリースされたこの原曲の歌い主が、元祖K-POPグループと呼ばれている「ソテジ・ワ・アイドゥル(Seo Taiji&Boys、ソ・テジと仲間たち)」だ。

1992年、ミュージシャンのソ・テジを中心にイ・ジュノとヤン・ヒョンソクで結成された3人組のグループ。ダンスと歌ができる彼らは、演歌かバラードが主流だった当時の韓国音楽界に新しい風を吹き込んだ。デビューアルバム『Yo!Taiji!』が大ヒット、ソテジ・ワ・アイドゥルは韓国語ラップではじめて成功したと名高い。

それだけではない。歌詞の内容も、尖っている。大衆カルチャーにおいても政治的な規制が厳しかった韓国で、「社会問題を歌うこと」に挑戦。南北統一問題や教育制度の矛盾などを題材に、曲を通して韓国の若者たちの目を社会に向けた。

今回紹介する曲は、韓国では馴染みのなかったギャングスタラップを取りいれた『COME BACK HOME(カム・バック・ホーム)』。「俺はなにをいま探し躍起になっているのだろう」で曲ははじまり、「胸が苦しい」「毎日同じ繰り返し」。と続く。しかし、歌の後半では希望も見えてきた。「家族の腹をいっぱいにさせてあげようと、働き、働き、働く」「友よ、心配するな」「俺らの未来は明るい」。

韓国語で、若者の苦悩、葛藤がラップされるなか、曲の随所に散りばめられた

YOU MUST COME BACK HOME

(出典:Seo Taiji&Boys『Come Back Home』より引用)

意味は、ストレートに「家に帰ってくるんだ」。

言わずもがなこれ、家出少年を歌った曲なのだ。

ソテジ・ワ・アイドゥルたちがラップした「YOU MUST COME BACK HOME」が家出少年たちの心に響いたのか、実際、家族のもとへ戻ってきた少年たちがいたという話だ。社会問題を訴え、社会現象をひきおこし、若者たちへ絶大的な影響力をもったが、96年に突然解散した。ちなみにリーダーのソ・テジは、文化大統領とも呼ばれ、当時の金大中大統領も彼を「社会的な意味を持った音楽家」と褒め称えたという。

2、“10代の勝利”をものにしたアイドルH.O.T.の『We are the future(俺たちが未来だ)』

1996年に解散したソテジ・ワ・アイドゥルと入れ替わるように韓国エンタメ界に現れたのが、男性5人組アイドルグループの「H.O.T. (エイチオーティー)」。昨年、17年ぶりに再結成を宣言したことでも話題になった初期Kポップ集団だ。東方神起、少女時代などのアイドルグループを輩出してきたことで有名な韓国の最大手芸能事務所SMエンターテイメントからのでデビュー。当時は“韓国のスマップ”と喩えられ、国民的グループの座に君臨していた。

名前の由来は、“Hot(イケている)”…からではなく、“High-five Of Teenagers(ハイファイブ・オブ・ティーンエイジャー)”。「10代の勝利」という意味。来日しファンミーティングをしたこともあるらしいが、まだ日本には韓国ブームが来ていなかったため、あまり注目されることはなかったらしい。が、中国では人気獲得に成功。2000年に韓国人アーティストとして初の北京単独公演を成功させ、中国国内の若年層にK-POPを浸透させた。

“韓国アイドル第一世代”と呼ばれるH.O.T.の代表曲が『We are the future』。そのままに「俺たちが未来だ」。出だしの「Hey Everybody look at me!(ヘイ、みんな俺のことを見て)」の直球さに、なんともいえない照れを感じてしまうが、H.O.T.は止まらない。「世界の仕組みをすべて変えてしまうんだ。いまや俺が。大人たちの時代はもう終わった。古臭いこと、話にならないたわごとは消し去ってしまおう」。ソテジ・ワ・アイドゥル同様、若い世代を刺激するような歌詞だ。

「The future is mine!(未来は俺のものだ!)」「1, 2 and 3 and 4 and Go!!(ワン、ツー、スリー、フォー、ゴー!)」と、英語表現もストレート。トドメを刺すキラーフレーズは、

We are the future.俺たちが未来だ)」

(出典:H.O.T.『We are the future』より引用)

ミュージックビデオで描かれるのは高校生たち。教室で教科書を開く生徒や廊下で叱られる生徒の様子などが、ダンスをするH.O.T.と代わるがわるで登場する。厳しそうな先生が生徒めがけて投げた“チョークのスローモーション映像”が一番印象的だった。

3、韓国女性アイドルの先駆けS.E.S.が誓う『I’m Your Girl(私はあなたのもの)』

H.O.T.と双璧をなすとされていたのが、女性3人組アイドル「S.E.S.(エスイーエス)」。1997年にデビュー。H.O.T.と同様、“韓国アイドル第一世代”だ。

S.E.S.は、メンバーのパダ(Sea/Bada)、ユジン(Eugene)、シュー(Shoo)の頭文字。それまで目立ってガールズグループがいなかった韓国で、はじめて本格的に成功をおさめた女性アイドルグループといわれる。キュートなルックスと抜群のダンススキルと歌唱力で、旋風を巻き起こした。

日本では結果あまり振るわずだったが、韓国では、少女時代などののちのガールズアイドルグループや女性シンガーBoA(ボア)がS.E.S.の音楽を聴いて育ちアイドルを目指した。また台湾では「宇宙最強美少女」の触れ込みで200万枚以上のセールスを達成し、S.E.S.に触発されたS.H.Eというグループが結成されるなど、アジアポップスの一時代をつくったグループなのだ。

そんな彼女たちのデビューアルバム『I’m Your Girl』からリード曲「I’m Your Girl」を。ラブソングのお手本のようなラブソングだ。「私はあなただけのもの」「怖がらないで 私のそばにいることを」「あなたと私の人生、果てまで」「私を信じて。一緒にいよう」。だって、

「Cause I’m your girl. Hold me Baby. (私はあなたのものだから。ベイビー、私を抱きしめて)」

(出典:S.E.S.『I’m Your Girl』より引用)

書いてて気恥ずかしい気持ちになってしまったので、これにて退散。

次回は、
「煌めいて★アジアのポップス」三ヶ国目は「インド」。

インドといったら、ボリウッド映画を連想するが、
インドポップスも忘れずに。

“インドのマドンナ”といわれたシンガー、
アリーシャ・チナイの『Lover Girl』など。

Stay tuned!

▶︎これまでのA-Zボキャブ

▽煌めいて★アジアのポップス

プラスティック・ラブ、スパークル。世界で大旋風〈シティポップ〉から漏れる、ろまんちっくな“エー単語”。煌めいて★アジアのポップス

▽アイコンたちのパンチライン

科学を愛したあの夫人。マリ・キュリーの逆境に負けなかった言葉たち 「人のことより、アイデアに好奇心をもて」。

「ぼくは、ただの“音楽を演る娼婦”」フレディ・マーキュリー、愛と孤独とスター性が導く3つの言葉。

▽懐かしの映画・ドラマ英語

「うげぇ、超サイテー」!—90年代癖あり名映画の名台詞を解剖。“90s米ギャル捨て台詞”まで。

俺の仲間たちよ—『時計仕掛けのオレンジ』『タクシードライバー』主人公らの名台詞(英語)を解剖。

Eye Catch Illustration by Kana Motojima
Text by Risa Akita, Editorial Assistant: Kana Motojima
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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