すべての髪を祝福するために。宣言より実用的に、法制定よりも早く。学校と職場にインストールする「ヘアコード」が誕生

スタートアップの活動や新しいプロジェクトから読みとく、バラエティにとんだいま。HEAPSの(だいたい)週1レポート
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新しいプロジェクトからは、バラエティにとんだいまが見えてくる。ふつふつと醸成されはじめたニーズへの迅速な一手、世界各地の独自のやり方が光る課題へのアプローチ、表立って見えていない社会の隙間にある暮らしへの応え、時代の感性をありのままに表現しようとする振る舞いから生まれるものたち。
投資額や売り上げの数字ではなく、時代と社会とその文化への接続を尺度に。新しいプロジェクトとその背景と考察を通していまをのぞこう、HEAPSの(だいたい)週1のスタートアップ記事をどうぞ。

ナチュラルなヘアを祝福しよう。でも、どうやって? 職場や学校などに導入を想定したガイドライン「ヘアコード」がつくられた。

英国の若き黒人アクティビストたちが起こす“ブラックヘア革命”は、いまより現実的な一歩を、教育機関や企業に広げている。

職場や学校に、ナチュラルを祝福する「ヘアコード」を

 黒人女性の5人に1人が、仕事のために髪をストレートにしなければという社会的なプレッシャーを感じているという。学校で髪をネタにされ不愉快な呼び名や質問を経験しているのは、黒人学生の半数以上にものぼる。
 これらの差別に対して制定された法律も世界各地にある*。近年ではその意識向上も進んでいる印象だ。だが、制度としての文言が記されたからといって、きれいさっぱりなくなることがないのが差別というもの。頭では理解したつもりでいても、日常で無意識のうちに差別をしてしまうマイクロアグレッションなども存在する。さらに、改善の一歩手前にあるのが「意識もあって改善の必要性もわかるが、どのようにはじめてみればいいのか」という壁。ルールやガイドラインなども定めたいが、どのような条項をつくってみたらいいのかわからない、など。

*2010年に英国では平等法が制定され、人種や宗教、ジェンダーをはじめとする差別が違法とされた。19年にはカリフォルニアが米国内で初めて、生まれもった髪に対する差別を禁止した州となり、ニューヨークもそのあとに続いた。

 2020年英国で、髪への差別と偏見をなくすために結成されたコレクティブ「Halo Collective(ヘイロウ・コレクティブ)」が、また一つ現実的なアクションを起こしている。職場や学校への導入を前提としたヘアコード「Halo Code(ヘイロウ・コード)」を作成し、定めた。「黒人の髪の毛を差別ではなく、祝福の対象にする」ための具体的なガイドラインだ。英国初となる。

 コード(学校用)の一部を紹介しよう。
  
「職員や学生のアフロヘアを受けいれる権利を擁護し、支持し、推しすすめていきます。アフロヘアが、黒人の職員や学生の人種的、民族的、文化的、宗教的アイデンティティの大切な一部であるということ、髪の健康やメンテナンスのために特定のスタイリングが必要であることを認めます。アフロやロックス、ツイスト、ブレイド、コーンロー、フェード、熱や化学製品で施したストレート、ウェーブ、ウィッグ、ヘッドスカーフ、ラップなど、これらすべて、そしてこれらに限定されないヘアスタイルも歓迎します(後略)」




活動の原動力となっているのは、若者一人一人の「リアルな実体験」。「私たち黒人たちは、自分たちの髪型はきちんとした場にそぐわず、魅力に欠け、プロフェッショナルに見えないと言われてきました。この偏見によって学校に行けなくなったりキャリアを諦めたりせざるを得ないこともあったのです」。

ユニリーバUKI、そのほかすでに150以上の職場が導入へ

 髪に対する差別がもっとも生まれやすいとされているのが学校や職場だ。これらの機関では同コードを採用する判断をしたら、特定のルールを守ると宣誓したうえで、同サイトにあるフォームに記入し提出する。特定のルールとは、

・コードをプリントアウトし施設内に貼る。ウェブサイトにも掲載する。
・生徒や保護者、スタッフに、直接またはメールでコード導入を発表する。
・既存の校則に追加する。
・ヘアスタイルに関する揉めごとが生じた場合、コードを参照して解決策を導きだす。

といったもの。導入においてはDoveで知られるユニリーバUKIが先陣を切り、現在では英国内で60以上の教育機関と150以上の職場のガイドラインに組みこまれている。実際に導入された現場からは「コードが導入され、最近になってようやく自分のありのままの髪を受け入れることができるようになりました。以前の職場では、自分の髪は“プロフェッショナルではない”と言われていたので」という声もあがっている。

すぐに“インストール”できる

 Halo Codeの良さは「ルール、ガイドラインをすぐに現場にインストールできる」ところだ。職場や学校などの機関がゼロからルールを生みだし、協議し、調整しながら固め、最終的に承認されるにいたるまではかなりの労力と時間を要する。
 Halo Codeは、法的拘束力はないものの、組織が正式に導入したルールとして組織内に一定の規律と連帯が生まれ、そこに属する人々が一定の責任感を持つことができる。実践的な規律が明瞭になるからこそ、正面から問題に向きあえることもある。

「いきいきとあるために、本来のヘアスタイルを変える必要はありません。ともに、すべての黒人が髪にまつわる差別から解放されて学び、働き、そして生きることができるようにしていきましょう」

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All Images via Halo Collective
Text by Iori Inohara
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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