音楽の都オーストリア・ウィーンの市街地に、宮殿のごとく優美にそびえる、「アルベルティーナ美術館」。ウィーンといえば世界屈指のコレクションを誇る「美術史美術館」が有名だが、アルベルティーナの方も、モネ、ピカソ、マグリットと名だたるアーティストの名作が豊富に収蔵される。宮殿のごとくと先述したが、実は本当に元宮殿。ヨーロッパ随一の名門王家といわれるハプスブルク家の邸宅を改装したものなのだ。格式高い歴史的建造物のなかで現在展示中なのは、『My Generation. The Jablonka Collection』。1980年代のアメリカとドイツの作品を中心に、美術商ラファエル・ジャブロンカが長年にわたり収集してきた約110点の現代アートをフィーチャーしている。
1952年生まれのラファエルは、同世代のアーティストの作品を幅広く集めた。その幅広さのポイントは二つ。一つは作品の多種多様さだ。それは絵画、彫刻、巨大インスタレーション作品などさまざま。もう一つは、各アーティストの人生のフェーズごとに作品を集めているということ。作家の初期、中期、晩年と移り変わりゆく(もしくは変わらない)様子を追うように。
ひと部屋に一人のアーティストの作品が展示。米国人の生活の薄暗い部分を描写し注目を集めた米国人画家エリック・フィッシュルの『The Krefeld Project: The Bedroom. Scene 1』や、アメリカ人コンセプチュアルアーティストのシェリー・レヴィーンによる、あの有名なマルセル・デュシャンの便器『泉』を模した『Fountain (Buddha)』など。ドイツの現代アーティスト、アンドレアス・スロミンスキーによる『Untitled』は、一見「間違えて置かれたんじゃ?」と思ってしまうような、袋がたくさんかけられた自転車の作品だ(彼は他にもいくつもの自転車シリーズを作っている)。
作品表現の幅広さと、一人のアーティストの人生の流れ、どちらも感じることができる同展は4月11日まで。一人の美術商が集めた作品群をのぞいてみて。
Fountain (Buddha), 1996 Highly polished bronze The ALBERTINA Museum, Vienna – The JABLONKA Collection © Sherrie Levine
Untitled, 1993/1994 Various materials The ALBERTINA Museum, Vienna – The JABLONKA Collection © Andreas Slominski
Dead Leg, 2007 Oak and stainless steel The ALBERTINA Museum, Vienna – The JABLONKA Collection © Richard Deacon
The Krefeld Project: The Bedroom. Scene 1, 2002 Oil on linen The ALBERTINA Museum, Vienna – The JABLONKA Collection
© Eric Fischl / Bildrecht, Vienna, 2020
Southern Cross, 2006 Oil on canvas The ALBERTINA Museum, Vienna – The JABLONKA Collection © Francesco Clemente
Frankenstein, 1989 Detail; Sewn, found stuffed cloth animals, basket with thread, pin cushion, felt ALBERTINA, Wien – The JABLONKA Collection
© Mike Kelley / Bildrecht, Vienna, 2020
Artificial Paradise (Tumulus), 2008 Mixed media on canvas The ALBERTINA Museum, Vienna – The JABLONKA Collection © Philip Taaffe
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Text by Rin Takagi
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine