「下着がなくてもつけられる生理用品が欲しい」自分たちの国の生理と貧困問題に、ゆるやかだが堅実に“現地の手”で継続的に取り組むこと

スタートアップの活動や新しいプロジェクトから読みとく、バラエティにとんだいま。HEAPSの(だいたい)週1レポート
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新しいプロジェクトからは、バラエティにとんだいまが見えてくる。ふつふつと醸成されはじめたニーズへの迅速な一手、世界各地の独自のやり方が光る課題へのアプローチ、表立って見えていない社会の隙間にある暮らしへの応え、時代の感性をありのままに表現しようとする振る舞いから生まれるものたち。
投資額や売り上げの数字ではなく、時代と社会とその文化への接続を尺度に。新しいプロジェクトとその背景と考察を通していまをのぞこう、HEAPSの(だいたい)週1のスタートアップ記事をどうぞ。

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世界ではいま、いつになく「生理」にまつわる取り組みが活発だ。フェミニズムやアイデンティティについて考える人がもっと多くなる昨今、これまでタブーとされてきた生理への意識や製品そのもののアップデートが続く。また、生理用品へのアクセスが困難な発展途上国の女性が抱える生理問題への改善アプローチも活発で、先進国の団体や企業がプロジェクトを起こし支援している。

自分たちの国には、生理用品が足りない、そもそも下着がない。
その状況下で、規模や成長スピードは小さいものの「現地の自分たちの手で、作るところから配布するところまで」をおこない、長期的な改善に取り組む。そういったケースを、そういえばほとんど読んだことがなかった。今回は紹介するのは、現地の力で着実に生理問題を改善する女性たちの取り組みだ。

「ナプキンがないから」貧困サイクルに巻き込まれる女性たち

 80パーセントの女性たちが生理用品を購入する余裕がない国、ブルンジ共和国。聞き慣れないその国は、アフリカ大陸のタンザニアやコンゴに囲まれた小国だ。国民の9割以上が農業に従事し、コーヒーや紅茶を多く生産する一方で、環境問題による災害の被害をうけ食料供給がままならず、飢餓の多い世界最貧国の一つとしても知られている。

 ブルンジで出回っているもっとも安い生理用ナプキンは、約1ドル(約110円)。月収が数百円から2,000、3,000円ほどのブルンジの家族にとって、大きすぎる出費だ。そもそも、ブルンジの女性の89パーセントが下着を購入する余裕すらない。
 となると、なにが起こるのか。生理中の女子生徒は平均毎月5日間、学校を休むことになる。すると、授業に追いつけなくなる。学校をさらに休み、しまいには中退してしまう。教育を終えられないことが、早期結婚や早期妊娠、それに伴うキャリアの道への断念。そうして貧困問題にまで繋がっていく。事実、2009年から2015年までに1万1,800人の女子学生が就学中に妊娠を経験したという。発展途上国の女性たちには、生理問題からはじまる貧困問題のサイクルがある。

 この現状を受けて、ブルンジの非営利健康促進協会「サコデ(SaCoDé)」が考案したのが、洗ってなんども使える衛生的な生理パッド「Agateka(アガテカ)」。ブルンジの公用語ルンディ語で「尊厳」の意味だ。
 アガテカパッドの最大の特徴は、下着なしのまま着用できること。本体に紐がついているため、紐を腰に巻きつけて固定させることができる。下着すら買えなかった女性たちには大きな利点だ。肝心のパッドとしての機能だが、都度洗って使えば、約5年保てるほどの耐久性を備えている。サコデは、国内の女子生徒にアガテカパッドを無料で配り、さらには女性たちが誰でも買えるよう、5枚1セットで販売している(1枚およそ1ドル)。一度購入するだけで5年のあいだ生理出費がないのは、子どもをたくさんもつ貧困家庭にとってありがたいだろう。

〈生理×貧困問題〉への取り組みを、現地の力で継続する

 発展途上国の生理貧困問題への取り組みには、ざっくりと二通りある。現地以外、つまり海外からの支援・協力を受ける、また、サコデのように現地の団体が現地で取り組む。
 海外からの支援には、ブランドや企業のプロダクト購買と紐付けたワンフォーワン(一つ買って一つ寄付)「ひとつプロダクトを買えば、もうひとつ(下着、布ナプキン)が発展途上国の女性に送られる」といった物資支援が多くある。
 そして、海外の企業が現地と協力しての物資支援・配布だ。日本の企業でも、トイレやお風呂で有名まリクシルは2014年から毎年、ケニアの少女たちのために寄付金を集めて布ナプキンを配布するプロジェクトを継続。また、花王グループは、国連人口基金と提携し低価格な生理用ナプキンを広める現地の活動を支援している。
 現地の企業や工場と協力して抜本的改善に取り組んでいるケースもある。サステナブルな砂糖やコーヒー豆、アルミなどの原料を販売する英企業ウィンドワードは、タンザニアにて、有名生理用品ブランドや現地の生理用品メーカーとタッグを組み、市場調査から開始。生理用品へのアクセスが乏しいエリアに届けるための戦略を練っている。

 近年に急増したワンフォーワンの流れの中では、こんな指摘があった。「物資を支援するのは、“応急処置”にはなる。が、ソリューションとは現地の人にただモノをあたえるのではなく協働し、そのモノを作る施設と技術を提供すること記事:社会現象ワン・フォー・ワン(1つ買って1つ寄付)は本当にソーシャルグッドだったのか?だと。応急処置では、支援するブランドや企業のなにかしらの事情(経営陣が変わる、方針が変わる、企業自体の存続の有無)で、突如その支援がストップしたらどうなるのか。

 今回取り上げたサコデは、規模も成長スピードも小さいが「作って配布する」までを現地のリソースで継続的に取り組んでいる、つまり「応急処置でありソリューション」を現地の自分たちで、地道に取り組もうとしている。その点が、振り返って考えると、海外企業の取り組みの紹介事例の数と比較して、読んだことの少ないケースだった。

 ゆるやかながらもサコデの活動は、現地の女性の雇用創出にも繋がっている。就職が困難だった女性たちを積極的に雇い、その結果およそ40人の女性がパッドの作り手として働き収入を得ている。実際の作り手たちは「夜間学校に行く前の空き時間で働いて、収入は子どもたちの学費や食費に充てられています」「家事ばかりの毎日で、女性同士話す機会があまりなかったんです。友人もできました」と同団体に声を寄せている。

 現地の団体が主導となって現地の女性たちが生理問題を自分たちの手で改善する。つまり、続ける意思と賛同する人さえいれば、長期にわたって自国内で継続できるサイクルをつくる。2016年に9,050人の女性たちにアガテカパッドを配って以来、パッド作りを続行中。いまではおよそ国内の2万人の毎月を支えている。

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Eyecatch Image by Midori Hongo
Text by HEAPS and Rin Takagi
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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