足並み揃えて〈シリコンポップ〉な現代のセックストイたち。2万8000年前の“石器ディルド”はいま、ぽてんころんつるり

ベッドの傍にぽてん。棚の上にころん。なんだかみんな似ている。あかぬけている。〈2010年代女性向けセックストイ〉のこと。
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その昔、親が寝静まった23時55分。茶の間でこっそり見ていた伝説の深夜番組『トゥナイト2』に映る“ソレ”を見てはドキドキしていた。それから、茶の間で堂々と見ていた連ドラ『セックス・アンド・ザ・シティ』ではシャーロットが“ソレ”にハマり過ぎ、没収されるシーンがありハラハラした。「昔は申し訳なさそうに登場していたのに(見てるこちらまで申し訳なさそうにこそこそ見ていたのに)、いつの間にかこんなに堂々と…」。バイブの話だ。

取り扱われ方が寛容になりすっかり市民権を得たセックストイはというと、あかぬけている。“実物っぽくない”ディルドなどのセックストイは70年代から登場していたものの、近年は“っぽくない”どころかぽてん、ころん、つるんとかわいくなっている。そしてみんな似ている。人気のものはシリコンでポップな見た目が多いので、その類似性をあらためて〈シリコンポップ〉と呼びたい。

セックストイ。「石器」から「いびつな形」を経て「シンプルデザイン」へ

 以前HEAPSでも取材したブルックリン生まれのセックストイブランド「デイム・プロダクツ(Dame Products)」が新作を発表した。現在絶賛発売中の「ポム(Pom)」と名づけられた女性用バイブレーター、これまた流線型のフォルムに洗練されたきれいな見た目…。ちょっと鳥っぽい?(デイム・プロダクツの第一弾、Eva(エヴァ)はかわいい近未来キャラに見えてくる)。こういったシリコンでかわいい感じのデザインのセックストイは近年目にすることが増えた。



 ひと昔前のそれといえば、形は露骨、色はピンクや紫のビビッドな蛍光色で、玄人用にいたってはイボイボつきだった。男性の欲“棒”に相反して女性の欲求を萎縮しかねない、いかにもな見た目が当たり前だったが、ここ数年でセックストイ市場に登場するものといえば、パステルカラーにヌーディーカラー、そしてフォルムをガラリと変えた。形も、“男性器をシンプルにしました”どころではない。「本当にバイブなの?」と勘ぐってしまうデザイン性に優れた顔ぶれがいつの間にか並ぶ。

 ところで、セックストイの歴史は実はうんと古い。約2万8,000年前から存在していたといわれる。ドイツでは世界最古の石器の張形(はりかた、いまでいうディルド)が発見され、丁寧に磨きあげられていたことやサイズが男性器のものと同じことから、膣に入れるために使われていた可能性が高いとされている。ちなみに、日本で確認されている最古のものは飛鳥時代(6世紀後半)という説が広くいわれている。唐から大和朝廷へ贈られた、青銅製ディルドだ(奈良時代には中国から水牛の角でできたディルドが輸入されたとも。痛くないのか?)。

 とまぁ、2万8000年間の時代と人類の歩みとともに進化を遂げてきたセックストイ。さて、聖徳太子が見たらたまげるであろう、シリコンポップな〈現代主流のセックストイデザイン〉をざっと見ていこう。


デイム・プロダクツの第一弾、Eva(エヴァ)。

デイム・プロダクツの第二弾、Fin(フィン)。指に装着して使う。

和菓子のような老舗バイブから、オカリナのような北欧発バイブまで

いまどきデザインの先駆け?日本が誇る「iroha」
性教育後進国と叫ばれる我が国日本。だが世界に誇るアダルトグッズの匠「TENGA(テンガ)」をお忘れなく。同社が立ち上げた女性用ブランド「イロハ(iroha)」は2011年ごろから研究・開発をスタート、これまでに卵やお餅のような形や、口紅型、貝殻のような形など7種類の女性用アイテムを世に発信してきた。一時期品薄になるほどの人気ぶりを見せたそのデザインは、見ての通りヌーディーカラーメインのシンプルキュート(和菓子のような佇まいさえある)。シリコン製で、気品と遊び心を兼ね備えたかわいらしい現代バイブのパイオニア的存在ともいえよう。

環境に配慮?自然派「leafシリーズ」
その名の通り、葉っぱを模した4種類の電動“植物”「leaf(リーフ)」は、2015年にロサンゼルスにて「ベスト・エコフレンドリー・セックストイ」に輝いた実力派バイブだ。繰り返し使える充電式電池を使用、発送の際に使われる包装紙はリサイクル製品、とエコフレンドリーをおしている。



Image via leaf

オカリナ…!? スウェーデン発「SONA」
性の先進国スウェーデンが15年前から発信し続けている、老舗ブランド「LELO(レロ)」。クリトリス用音波マッサージ器「SONA(ソナ)」の見た目は、まるでオカリナのよう…。

 発信される国や性事情は違えど、“人気”や“売れ筋”とされるデザインはどれも“シリコン仕様で肌触り抜群”で、“余計なあしらいを取っ払ったシンプルな仕上がり”が多い。かわいい、といってもキャラクター化しすぎていないので、年代問わず受け入れやすそうなポップさだ。ビジュアルを含め、女性のためのセックストイのあり方の改善を目指す中で「これ迷走してるんじゃ…」と思うセックストイも少なくはないが。

▶︎混迷しながら前進する女性のセクシュアル・ウェルネス(性玩具)の世界。熱い想い・暴走するプロダクト

オナニーは、瞑想?

 最後に、新商品を出したデイム・プロダクツのもう一つ気になるハナシ。同社の商品説明にはこのような気になる記述がある「It has sensible controls that won’t harsh your Zen(あなたの禅の邪魔をしない、気の利いた操作ができます)」。はて、オナニーが禅? どういうこと? 実は、こうしたスピリチュアル要素を入れこんだセックストイの売り出し方も少なくなく、理由は「オナニーにはリラックス効果がある」とされるからだ。

 2016年のイロハ研究チームの実験でも、バイブでオナニーした後の女性の脳波にリラックス状態で多く観察されるといわれるα波が確認されている(あくまでも一例と記述)。コーヒーを飲んだりアロマキャンドルを焚いたりと、他のリラックス要素をもつ行動では見られなかった部位(頭頂葉から前頭葉にかけて)でのα波の増大も観察。監修した専門家によると、これは瞑想に近い状態だという。

 迷走も含めて、足並みを揃えるように似通う現代のセックストイは売り出し方もひと工夫。セックストイとの突き合い…もとい、付き合い方と、いまだ払拭されきらない「オナニーは恥ずかしいこと、いけないこと」の概念を、シリコンのようなやわらかさで柔軟に変えてくれると期待しよう。

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